見出し画像

オリンピック開会をきっかけに、組織カルチャーに取り掛かるタイミングを考える

いよいよ、東京オリンピックが始まりますね!(開会式直前に書いてます)
開会式を前に、開会式の楽曲担当者の辞任や演出家の解任などが相次いでおりメディアを騒がせています。

こうした問題は、SNSでの批判がきっかけとなっており、この動きに対し、他者の過去の過ちを糾弾する「キャンセルカルチャー」の是非という論点にも発展しています。

この場で個々の問題についての是非の言及はしませんが(するような立場にはないので)、こうした議論を拝見するに、人権や差別、多様性といった日本の抱える社会的な問題がまとまって噴出しているように感じます。

問題が可視化されたことを契機に、日本社会としてのコンセンサスを形成し、日本全体としてのカルチャーをアップデートしていきたいものです。

今回、コロナというクライシスが発生し、オリンピックという世界中が注目するイベントという外圧により、カルチャーの変革の必要性が急速に高まったと言えます。
しかし、企業運営を考えたら、クライシスなどの外圧が発生してからカルチャーを見直してい手は当然遅いわけで、できることならそうなる前にカルチャーをしっかりと確立しておきたいものです。

カルチャーづくりについては、拙著「カルチャーモデル 最高の組織文化のつくり方」で、その理論と実践について紹介しましたが、カルチャーづくりに取り掛かるべきタイミングについて実はあまり触れてきていませんでした。

そこで今回は、企業組織やチーム・コミュニティなどの集団においては、どういったタイミングでカルチャーづくりに取り組むべきなのか?ということを考えていきたいと思います。


(1)立ち上げ期(0→1)

まず一つの考え方として、カルチャーモデルは組織づくりのための組織プランと言えますから、事業をスタートする前にビジネスモデルを構想するのと同様、組織づくりを始める前にカルチャーモデルの構想を練っておくことが理想的だと言えるでしょう。

「組織づくりを始める」とはいつを指すかというと、「一人目の採用をする」タイミングです。

こちらのコラムで詳しく書いたのですが、採用ミスのほとんどは「期待値ギャップ」から生まれます

仮に残業の多い組織だったとしても、「残業が多くたくさん働いて早く成長できる」という期待値で入社していれば、期待値とのギャップはありません。
一方、「残業のないホワイトな会社」だと本人が期待して入社したのに残業があるから「話が違う」という期待値ギャップが発生し、モチベーションの低下や退職につながってしまうのです。

そうした「期待値ギャップ」を起こさないためには、「うちの会社はこういうカルチャーです」ということを明言して採用する必要があります。
もちろん、一人目の採用の段階では言い切れないことも多いと思いますが、少なくとも「こういう会社を目指しているので、一緒に作っていって欲しい」ということは伝えた上で採用をしたいところです。

これは、新規事業の立ち上げの場合にも当てはまりますね。
「既存事業を進める本体は安定性・確実性を重視したカルチャーだが、新規事業はアジャイルでスピーディーに進めたい」というケースはよくあります。こうしたときに、既存事業から異動で引っ張ってくるとしても、新規事業単体で採用にするにしても、「こういうカルチャーにする」ということを定義した上で、採用(異動)をする必要があるということです。


(2)グロース期(10→100)

上記のように、理想的には組織づくりのスタート時ですが、多くの方々は、既に何かしらの組織に所属されていることと思います。
もちろん、既存組織でもカルチャーづくりに取り組むべきタイミングがあり、その一つは組織の「拡大フェーズ」です。

拡大フェーズにおいては、採用を急速に進めることになるため、採用数を確保するために徐々に採用基準が下がったり、専門性を重視してカルチャーフィットを見落としたり、といったことをしてしまいがちです。

こうなると、採用できても人が増える一方で、コミュニケーションコストばかりが上がり、生産性は低下します。端的にいうと、人員は倍になっているのに、アウトプットは倍にならないんですね。そうしたことを防ぐために、カルチャーの基盤をしっかりと確立しておくことが欠かせません。

さらに、採用が急速に進むと入社年次の浅い社員の割合が高まり、「カルチャーのゆらぎ」とも言える現象が起こるのです。

それまでのカルチャーは、既存メンバーを中心に暗黙的に積み上げられてきています。そこに新たに多様なメンバーが加わってくると、これまでとは異なる行動や言動が見られるようになります。
既存メンバーが引き戻す作用を働きかけますが、それでも新規メンバーの割合が大きいと異なる動きもそれだけ多くなり、それに伴ってカルチャーがゆらぎ、自分たちのカルチャーを見失いかねません

そうしたことを防ぐためにも、拡大フェーズに入る前にカルチャーを確立しておくことは欠かせないといえます。


(3)変革期(ー→+)

既存の組織においてカルチャーづくりが求められるもう一つのタイミングは、組織を大きく転換するタイミングです。
事業構造の抜本的な見直しや、経営者の交代による方針変更、業績悪化による赤字からのターンアラウンドといったケースですね。(業績悪化という外圧があってからでは本当は遅いのですが)

よく組織のフェーズを「0→1」「1→10」「10→100」と表現しますが、ベンチャー企業でない限り、あまりこうしたフェーズを経る経験はしません。

むしろ、多くの方が所属する既存の大企業や地元の中小企業にはあまりフィットしないんですよね。
ただ、そうした企業でも組織を揺り動かす変革期はやってきます。それは、マイナスをプラスにしないといけないフェーズです。
僕はそれを「0→1(ゼロイチ)」に対して、「ー→+(マイナスプラス)」と呼んでいます。

こうした変革フェーズでは、事業と組織を転換するために役員などの責任者クラスが中途入社するなどして、従来とは異なる仕事のスタイルをメンバーに求めるようになります。

そうして、変革フェーズでも「カルチャーのゆらぎ」が起こるのです。

これまでのカルチャーは、既存メンバーが積み上げて作ってきています。そこに、中途で入った役員が前職のメンバーなどを連れてきたりして、人員の入れ替えを徐々に進めようとします。そして、新規メンバーが従来とは異なる新たな価値観や行動・言動を好んで取り始めます。従来のカルチャーを否定することが、変革につながるからです。

一方、既存メンバーからすると、これまで自分たちが大事にしてきた価値観を否定されることになり、カルチャーがゆらぎ、核がどこにあるのか見えなくなるんですね。
当然、既存メンバーにとっては「これまでとは違う会社になってしまった」ということになるため、既存メンバーの期待値ギャップが発生し、生産性が低下し、キーパーソンの離職も発生します。
一方、新規メンバーにとっても、それぞれが抱く目指す組織像が擦りあってないため、成果が個人の努力にとどまり、組織的な大きな成果に繋がらず事業が停滞することも発生します。

こうしたことを防ぐためにも、組織変革を始める冒頭のタイミングで「これまでとは異なる会社になる」という宣言を経営陣が行い、「こういう組織にしていく」という目指す方向を示すことが欠かせません。

これは、いわゆる「誰をバスに乗せるか?」という問題です。
この新しいバスに乗りたいかどうかをメンバーに判断してもらい、次の組織へと変革することに本人がコミットした上で、カルチャー作りに取り組むのです。そうすれば、期待値ギャップを起こすことなく、既存メンバーも新規メンバーも一丸となって、新たなカルチャー作りへと歩み出すことができます。

おわりに

このように、カルチャーをつくるべきタイミングは必ずやってきます。大事なことは、内部的な崩壊や、外圧による影響など、必要に迫られてやむを得ず取り組むのでは遅いということです。

カルチャーは、短期的に業績を引き上げる特効薬ではありません。むしろ、地味で地道なことを繰り返し、長期的に効果を発揮します。外科手術ではなく、食事や運動などによる体づくりや予防医療と言ってもいいかもしれません。

そう考えると、今の課題が噴出している日本社会は、まさに「カルチャーのゆらぎ」が起きている状態。つまり、待ったなしのカルチャー変革のタイミングだといえます。

足を引っ張りあったり、他者を批判したりするのはこの辺までにして。
オリンピックを契機に、日本社会はこれからどういうカルチャーへと変革していくべきなのか、前向きな議論をしていきたいですね!!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!