QR決済普及の鍵は「0.2秒」

最近なにかと話題になっている「QRコード決済」。長らく現金大好きな国民と言われてきたが、ここにきて経済産業省も「キャッシュレスビジョン」を掲げたり、業界共通仕様をつくる動きも出てきている。

実際にほんとに使えるの?という疑問に応えるべく、記者が体当たりで試してみた記事が大変興味深い。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34261240X10C18A8000000/?n_cid=NMAIL007

お隣の中国ではQRコード決済が普及しきっており、むしろ持っていないと生活が不便というレベルである。

https://comemo.io/entries/9222

さて、先の記事に戻ろう。どうやら、出だしから記者は躓いてしまったようである。そう、電車に乗れないからだ。

雲ひとつない晴天下、自宅を出て午前8時ごろに最寄り駅に着いた。さっそくここでQRコード生活が壁にぶち当たる。「QRコードでは切符が買えない」。QRコード生活への意欲は満々だったが、仕事をさぼるわけにもいかない。一日の最初の支払いが現金となってしまった。

JR東日本における「Suica」などの交通系IC決済では、ソニーが開発した日本独自仕様のFeliCaが採用されている。ガラケーに搭載されたことで、一気に普及した。それに伴いコンビニや店頭でも対応レジが増加したため、今では多くの場所で利用できるようになっている。今ではグローバル企業のAppleの「iPhone」でさえ、日本のためだけにFeliCaに対応した(それだけ日本が重要なマーケットであるのだろう)。

では、FeliCaのときのように、QRコード決済も一気に普及するのだろうか? 筆者はかなり難しいと考えている。その鍵となるのが、交通系での対応状況だ。

http://news.livedoor.com/article/detail/11497078/

自動改札の要求仕様は非常に厳しい。「ピッ」っとやる時間が0.2秒。この間に読み取りから認証、書き込みまでを完了しなくてはならない。周囲やスマートフォン画面の明るさにより読み取り精度が大きく変化するQRコードでは、平均してこの基準をクリアすることは難しい。ちなみに、従来のきっぷの読み取りでかかっていた時間が0.7秒(*1)。妥協しても1秒以内に済ませなくてはならず、ハードルは高い。

*1: 電気設備学会誌 2011年6月 「Suicaシステムの概要」, 大槻知史

この数字は、朝夕のラッシュ時に処理しなくてはならないピークから算出されている。これをクリアできない場合、駅構内や改札外に人が溢れかえることになり、物理的に落下事故等の危険が増す。安全第一の旅客サービスにとって、これは絶対に妥協できないポイントだ。ゆえに、交通系が対応したとしても自動改札ではなく、きっぶ販売機のほうになるだろう。

それ以外についてはQRコードで間に合うシーンも多い。しかし、すでにIC決済は普及している。便利以外の価値が提供できるのであれば、次第に利用者は増えていくのではないか。ヤフーや楽天は強力なポイントエコシステムを持っている。「便利でお得」で利用者が動くかどうか、各社の動きを注視したい。

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