
外から教育に携わる人になって欲しいのはHUB x ハブ(蛇)のダブルハブ。 ~ 日経のテーマ "会社員先生に期待することは?"に答えて。
会社員先生って言葉があるというのを初めて知った。
今月の日経のnoteである"comemo"の投げかけが、「会社員先生に期待することは何ですか?」ということで知ったのだけど、期待するも何も、これは投稿しなくてはいけない。
なぜならば、僕はそう言う言葉があるならば、16年間会社員先生をやっているからである。
これについて話すとほんと長くなるから、最後の方に、リンクをいろいろ貼って、続きはそちらで、ということで、今日は要点だけで行きたいと思う。
16年やってきて思うのは、簡単にいうと、外部人材は、「ダブルハブ」である。
1つは、hubの役割を果たすべきということである。
そう。教育界と社会をつなぐ役割ですね。
2つ目は、ヘビの方のハブになってガブリとやるべき、ということである。
常識を変えるべく、毒づいたことも言ってガブリと噛みつき変革を促す役。
1つ目のハブから話そう。
まず、「外の知見を学校に持ち込む」これはもちろんのことである。そのつなぎ役になるために入られるわけだから、どんどんそれは普通にやられるべきである。
それと同時に、やっていただくと良いのは、逆のベクトル、「教育業界の知見を → ビジネス界に」である。
大体教育現場に入ると先生たちは、かなり謙遜されて、「学校と社会が分断されてて今の社会のことをぜひ教えてください」などなどと、外の人を立てられる。のだが、上下なんかになってはいけない。プロと教育のプロの対等なコラボである。
そうやっていると、先生たちが持っている教育の知見が、自分のビジネスの現場に役に立つことがたくさんある。
僕が一番知見をいただいているのは、元学芸大学の教授で、今は小金井市の教育長の大熊雅士先生であるが、ここ16年間、たまたまのご縁からご一緒して、本当にたくさんのことを教えていただいた。
例えば。
初めて出会ったのは16年前、社会貢献活動の広告小学校のプログラムを、東京学芸大附属世田谷小学校にてテスト授業していただいた時だった。その担当が大熊先生だったのだ。
本当にいい授業だった。が、それはここでは割愛して、その授業の終わりでのこと。先生がツツツーっと僕のところに寄ってきて、
「広告作りの秘密を教えていただいたお礼に、なんで僕の授業であんなに生徒たちが手を挙げるか、教えましょうか。」
と、聞いてもないのに、耳打ちされた。
「なんでだと思います?」
えええ、、、と5秒考えされられて、答えを言われた。
「生徒の1つ1つの意見を、僕、途中で評価しなかったでしょう?」
と。確かに。先生は正解を出す前のクイズ番組の司会者のようだった。
「生徒が〇〇だと思います。って言ったら、なるほどなるほど、と言って、それを板書する。他に?と聞いて、なんとかちゃんと同じなんですけど、□□だと思います、と言っても、うんうん、と言って板書する。途中で評価しないんです。違う、とは言わない。そして、いいね、とも言わない。どちらでも言ったり、表情に出すと、生徒が引っ張られて行くから。」
なるほど。とにかくニュートラル。そうすると、どれが正解でもない、どれも正解の雰囲気、間違いがない雰囲気になる。
実はこれは、NASAの宇宙飛行士のリーダーたちがやるのと同じである。
皆さんの会社の打ち合わせで、リーダーが、みんなの意見が出た時に早速評価したら、どうなるだろうか?リーダーの意見しか反映されない仕事になっていく。多視点じゃなくなり間違うかもしれないし、うまくいったとしても手柄はリーダーの物っぽくなる。
そういう現場では、この大熊先生の方法が生きる。というか、僕はこれ以来、このことを16年いかさせてもらっている。たくさんのいろんな仕事を、たくさんの仲間たちとできていいですね、と言っていただくことがあるが、それはこの教育業界から盗んだことを使っているからである。
他にもいろいろあるけれど、このリンクだけ貼っておこう。大熊先生の「言いたいけど黙っておくためのコツ」。
【教育業界から盗んだことシリーズvol.1】 毎週水曜日は我々のこんなのどうだろう研究所の定例会です。 そこにいつも元学芸大学名物教授...
Posted by アクティブラーニングこんなのどうだろう研究所 on Thursday, January 19, 2017
この教育業界のスキルで、ビジネス界に使えることは、またどこかで書いていく。「5センチ手を離す理論」とか「理解境界線」とかある。その他、この連載でもたくさん書いているのでよかったら見て欲しい。
さて。2つ目のハブ。
教育業界だけでなくとも、1つの業界の常識で続けていると、慣習が凝り固まっていることがある。そうすると、理に適ってないことになっており、いいアウトプットに繋がっていかない。
そこを壊すのが外部の目である。
最近のアクティブラーニングも含めて、「汎用的な教育」ということが言われる。社会に出て、使える教育である。文科省も「生きる力」ともう10年以上標榜している。だから、社会から見て、おかしいことは、「おかしい!」と声を大にして言っていい。言わなくてはいけない。教育は社会の未来に直結している。気づいた人は、それを言う責任がある。
例えば、とあるM区の中学校の研究発表会に呼ばれた。先生たちが2年間研究してきた授業を、区内の先生方と教育委員会の方々に見てもらって、その最後には、体育館で研究発表と講演会がある。そこで、「コンピテンシー」について語って欲しい、と言うことで、僕らが2015年からやっている
のメンバーと、その学校の校長&先生1名と、来場者250名を巻き込んで、議論をすることにした。
その時、2つ石を投げた。
1つは「では、先生方、ご意見どうですか?」と壇上から聞くと、「シーン」として先生たちの手が挙がらない。そこでこう言った。
「あれあれ?先生方。学校で生徒になんて言ってますか?質問を先生方ができないんなら、明日から学校で生徒たちに『手をあげなさい、意見を言いなさい』って言っちゃダメですよ〜!」と。
2つ目は、その研究発表会の体育館での2時間程度の間に、250人の来られていた先生の中に寝ている人が結構いたし、もっと酷いことには、きていた教育委員会の来賓10名のうち、3名が寝ていた。
僕はもう怒り心頭で、壇上から言うことにして、最後に、言った。
「皆さん、国会中継で、寝ている政治家たち、好きですか?あの人たちと皆さんは一緒です。
先生たち、仲間の先生たちが2年間研究してきた発表会で、なんで寝るんですか!
もっと酷いのは来賓の方々です。最低ですね。国の未来を決める教育に携わる方々がこんなで本当に悲しい。あなた方は給料もらう資格ない。うちの会社は、この区に法人税納めてますから。」
と言った。壇上でもう本当に涙が溢れて、あんな講演はしたことない。
ハブになってくれとは、こう言うことです。
会社員先生たち、よろしくお願いします。ダブルハブになってください。
最後に補足しますが。素晴らしい先生たちがいらっしゃるから、僕らはその方々と組んで、面白い教育を「こんなのどうだろう」と世の中に提案することを続けているわけです。ぜひそう言う方と出会えるといいですね。
そんな方とは、こんな授業ができる。
夢を見て、理想を追いかけて、本気でやってる人としか、改革していけないのは、どこの業界も一緒ですね。