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「多様性」を捉え直す、マインドセットの勧め

あけましておめでとうございます。

直近の年末年始はカレンダーの並びが良く、9連休できた方も多かっただろう。クリスマスを過ぎれば仕事のやり取りも減り、ゆっくりオフタイムを持つことで気持ちの切り替えが可能になる。この結果、たとえ客観的な状況は休み前と変わらずとも、主観的には、新しい心構えで物事に取り組めることができる。それだけで良い結果が生まれることを個人的に経験された読者は多いのではないか。

このように、心構えを意図的に替えることは、何のコストがかからない有効な打開策になりえる。米国を中心に逆風が吹く企業の多様性活動についても、2つの視点からマインドセットを切り替えることをお勧めしたい。
まず、企業の多様性と言うと、日本ではジェンダー格差が最大の問題とされる。現状を始点として「とにかく女性の処遇を改善しよう」とするのが通常の心構えだが、そもそも「(男女の人口比は半々だから)、男女半々で、共に生き生きと働いていて当たり前だよね」と、在るべき姿を出発点にしてはいかがだろうか?

工場勤務や農作業といった肉体作業が求められた時代はとは違い、サービス業主体の現代では、仕事内容の要請にほとんど男女差はない。もちろん歴史的な格差の経緯を認識することは重要だが、過剰に「大変でかわいそうな女性(多くの場合、母親)」を想定することは、往々にして女性自身のキャリアのためにもならないし、子を持たない女性や男性を阻害してしまうリスクがある。「半々で当たり前」なのだから、その状態に持っていくために何をするべきかを考えるマインドセット・シフトをお勧めする。

次に、多様性の定義を捉え直すことも重要だ。とかく性別や人種、学歴といった目に見えて分かりやすい「多様性」に置き換えられがちだが、これらは表面の多様性にすぎない。多様性経営の真の目的は、いろいろな視点やスタイルを持った個人をそれぞれの強さを発揮できるように組み合わせ、総和としてより強い組織を築くことにある。女性だからといって、即、際立って異なる視点を持っているとは限らないし、逆に一見同種に見える日本人男性の内面には、大きな幅があるはずだ。

もちろん目に見える多様性が中身の多様性につながることが多いので、近似値としての置き換えは無益ではないが、その有効性には限度があることを認識するべきだろう。たとえ表面的な多様性を担保しても、マイノリティの視点を無意識に封じ込めたり、画一的な働き方を強要したりすれば、それは真の多様性経営と呼べるだろうか?

日本企業の同質主義、「出るくいを打つ」文化は根強いものがあり、いくら表面の多様性を確保しても、異能人材を引き立てるような文化を醸成できなければ多様性のメリットは得られない。ここでも、心の持ち方を「ジェンダーKPIを満たそう」から「(表面に限らず、内面的に)多様な人材にとって伸び伸びと活躍できる環境を作ろう」と切り替えることが有効だ。

新年は気持ちの切り替えにとって、最高のタイミング。個人レベルでも経営としても、マインドセットを替えてみる「だけ」で見えてくる世界がある。

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