医師の2024年問題と医師についても例外ではない労働時間の通算問題
先日の日経新聞記事にもありましたが、運送業だけでなく医師の領域にも2024年問題があります。
医師の副業
上記記事にもあるように、医師は平日に勤務している医療機関とは別に、土日に他の医療機関で勤務していることが多いようです。
こうした副業のような形態の場合、厚労省の通達によれば、労働時間が通算されることになります。
そうすると、元々労働時間が長いとされる医師について、上記のような土日の労働時間も通算されるとすると、上限規制に容易に抵触してしまうかもしれません。
出向の場合はどうなるか
ところで冒頭の記事では、医師は土日に「出向」していると書かれています。
土日の他の医療機関での勤務が、元々働いている医療機関からの指示による「出向」なのか、自らの意思による「副業」なのかは、ケースバイケースですが、実は、こうした平日は出向元、土日は出向先という、いわゆる兼務出向の場合でも、労働時間の通算が必要になります。
なぜなら、労働時間の通算は、労基法38条1項の「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と文言の「事業場を異にする場合」には、「事業主を異にする場合も含む」と厚労省が解釈しているからです(昭和 23 年5月 14 日付け基発第 769 号)。
したがって、厳密には「副業の場合」とは書いておらず、兼務出向も「事業主を異にする場合」に該当するため、労働時間の通算が必要になるのです。
実は、これを意識してか、厚労省は、副業・兼業ガイドラインQ&AのP53で「使用者の指示により副業・兼業を開始する場合とは、例えば、出向先事業者と出向元事業者 の両方との間に雇用契約関係のある在籍型出向が想定されます…」と書いており、「出向」を「副業・兼業」の一類型とみている可能性があります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000964082.pdf
医師の労働時間通算の問題は検討はされたものの特別扱いはなし
医師の副業問題については、厚労省の検討会でも検討事項として挙がっていましたし、自民党内でも議論がされていたようです。
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000496522.pdf
しかし、最終的には、特別扱いされることはなく、その他の業種と同じ様に労働時間の通算が必要になります(厚労省の解釈によればですが)。
医師の労働時間については、医療提供の必要性が高い一方で、医師の労働環境の改善がなければ医師になろうとする人も減少してしまうかもしれず、難しい問題です。
ただ、確かに上限規制については過労死ラインをベースにしていることから、通算するという考え方はあり得ますが、やはり割増賃金についてまで労働時間の通算が必要とするのは、難しいのではと思います。
いずれにしても、現状「医師だから通算は必要ない」とはなっておらず、医師の場合は副業ないし兼務出向が頻繁に行われているので、その労務管理は要注意です。
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