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JR九州から考える!~機関投資家はアクティビストに賛同するのか?~

 最近、株主総会でのアクティビストの「株主提案」が注目されています。株主総会で採決されるのは、企業が提示する議案「会社提案」と、株主が提示する議案「株主提案」の2種類が存在します。直近7年間では「会社提案」は約20万件に対して、「株主提案」は2千件未満です。しかし、この数年間で「株主提案」が挙がるケースが増えています。つまり、モノ言う株主≒アクティビストが、日本の上場企業の経営状況に意見したり、不満を告げる機会が増えつつあるのです。

 今回は、アクティビストが「株主提案」を行ったJR九州を軸に、アクティビストが入ってきた企業には何が起こるのかを考えていきます。ビジネスパーソンや投資家に、何かのヒントになればと思います。

*JR九州に何が起きた?

 JR九州株の約6.1%を保有する、アメリカのアクティビストファンド『ファーツリー・パートナーズ』は、JR九州の2020年株主総会で「株主提案」を行いました。目的はJR九州の現状の経営方針に賛同しかねることがあり、その不満を是正するためです。アクティビストが行う「株主提案」が、賛成率50%を超えて可決されることは稀です。今回の『ファーツリー・パートナーズ』による「株主提案」は最大で32.6%の賛成率でした。たしかに過半数は獲得できていません。しかし、漠然とした疑問が出てきました。


*誰が「アクティビスト」に賛成したの?

 アメリカのアクティビストファンド『ファーツリー・パートナーズ』は、JR九州株の約6.1%しか保有していません。彼らが株主提案に賛同しても30%は超えません。他にも、彼らに賛同した投資家が存在したということです。JR九州の株主は、JR各社などの法人が約6%(JR九州は戦略的な持ち合い株であると発表)、個人投資家15%、金融機関が29%、外国人投資家と言われる外国の機関投資家が約45%などです(2019年時点)。

 まず、個人投資家は議決権の行使率が低いことが先行研究で指摘されています。理由は、個人投資家が、自分の票が賛成率に致命的な影響を与えられるピボタルな存在になることは稀なので、議決権行使のインセンティブが小さいことが影響していると考えられます。なので、個人投資家が積極的にアクティビストの株主提案に対して、議決権を行使したとは考えにくいです。更には、JR各社は、JR九州との関係性を考えてもアクティビストに賛同するとは考えられません。金融機関も同様のことが考えられます。となると、機関投資家である外国人投資家の一部がアクティビストに賛同したと考えられます。

 下記の実証研究では、米国データを用いて検証し、外国人投資家と言われる機関投資家がアクティビストの「株主提案」に賛成するケースが起きていることを報告しています。ここでは、米上場企業を対象に検証した結果、アクティビストにフレンドリーな傾向を持つ機関投資家は存在し、彼らのような存在がいるかいないかが、アクティビストのターゲットとなる確率にプラスに影響し、更には長期的な株式リターンの増加や業績の向上と関連していると報告しています。 

Simi Kedia, Laura T. Starks, Xianjue Wang, "Institutional Investors and Hedge Fund Activism" , SSRN, 2020,

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3560537&download=yes

もしも、あなたの勤め先や、投資先にアクティビストが入ってきたら、そのアクティビストが提案する議案に賛同する投資家が存在しているかどうかが、会社の改革にも、株価にも大きく影響しそうです。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!

崔真淑(さいますみ)

*冒頭の画像は崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)より引用。無断転載はお控えくださいね♪


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