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2023年はバーゲンセールが増える理由

JNEWS編集長(井指 賢)

 米国では毎年年末の恒例行事として、感謝祭(11月第4木曜日)の翌日から12月にかけてブラックフライデーとサイバーマンデーの年末セールが開催される。この売上状況からは、その年の消費者の購買意欲や買い物スタイルを把握することができる。

全米小売業協会(NRF)の調査によると、2022年の感謝祭からサイバーマンデーまで5日間のセール期間中には、米国消費者の4分の3以上にあたる1億9,670万人が買い物をしており、コロナ前の売上高を上回っている。1人あたりの平均購入額は325.4ドルで、その中の229.2ドルはギフト用の買い物である。ギフトとして購入されているのは、衣料品とアクセサリー(購入者の50%)、玩具(31%)、DVDやビデオゲームなどのメディア(24%)、食品とキャンディー(23%)、家電製品(23%)などである。

Record 196.7 Million Consumers Shop Over Thanksgiving Holiday Weekend
米国感謝祭セールのショッピングトレンド

買い物客の数からは、コロナやインフレの影響を乗り越えて、景気は順調に回復しているようにみえるが、2022年のセールは値引率が大きいことが特徴だった。 米国で上位100位までのeコマースサイトの売上動向を分析したAdobe Analyticsによると、今シーズンの値引率は過去最高で、表示価格の平均25%オフ(前年は8%オフ)となっており、玩具などは平均34%の値引率で販売されている。

インフレ下でも年末セールの割引率が上昇しているのは、サプライチェーンの混乱をリスクヘッジする形で、小売業者はコロナ前よりも多くの在庫を持つようになり、長期在庫となった商品をセールで処分するためと考えられている。従来の在庫管理は、できるだけ1回の仕入れ量は減らしながら、在庫の回転数を高めることが正しいと言われてきたが、物流の遅延と運賃の値上げ、仕入れ単価も上昇している状況では、仕入れられる時に在庫を多めに保有する方針が見直されている。

一方で、消費者の経済状況に余裕が無いことは、ショッピングのスタイルに表れている。Adobe Analyticsによると、ブラックフライデーのセール期間に、今すぐ購入して後で支払う(BNPL)方式の分割払いを利用した顧客は、セール前の前週との比較で85%の増加、前年比で10%増加した。BNPL分割払いの利用者は、他の顧客との比較で、セール期間中の平均購入額が9%低い。

BNPLの仕組みは、オンラインショッピングの決済を、米国の給与日サイクルに合わせた2週間毎に分割できるもので、4回払いまでなら利息は発生しない。そのため給料日前にクリスマスギフトを購入したい、Z世代の消費者から好まれている。

セールの割引率が上昇すると、消費者の購買意欲は一時的に高まり、小売業者の売上も伸びるが、利益率は下がるため「増収減益」の状態になる。今後もインフレが続くと予測すれば、小売業者は、できるだけ在庫を確保したいと考えるようになっている。しかし、消費者の購買力が予測よりも低ければ、倉庫在庫は次第に積み重なっていくため、どこかで価格崩壊が起きる。それが2023年以降に、小売業のインフレ相場が崩れるシナリオとして注目されている。これは消費者と、金利上昇の抑制を期待する投資家にとっては、朗報という捉え方だ。

大手の小売業者が在庫を増やす動きが顕著に出ている。米アマゾンとウォルマートの平均在庫日数を4半期毎にみても、仕入れた在庫を短期で高回転させることから、在庫量を増やしていく方針へと転換していることがわかる。他のECサイトや店舗のバックヤードでも、着実に在庫量が増えつつある状況があるため、小売業の値上げはラッシュは2022年ほどは過熱せず、どこかで価格崩壊する可能性も、米国では予測されている。

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