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NTTの新人事制度から考える、進む昇進の脱日本化

NTTで脱・年功序列の新人事制度

年功序列からの脱却を目指して、これまでアンタッチャブルとされてきた領域にも改革のメスを入れている企業が増えている。NTTによる人事制度の刷新もその流れの1つだ。
伝統的な日本企業の昇進制度は、入社後の年数やそのポジションについてから一定の年数が要件となることが多かった。NTTの人事制度でも、一定の年数が昇進の要件となっていた。しかし、年齢による制限を撤廃し、制度上は20代でも昇進ができるように変える。
年齢による制限は、成果主義への移行が推進されるようになった90年代から撤廃や改定の必要性が議論されてきた。比較的早くから成果主義への移行に取り組んできた企業では、年齢による制限をこのころから廃止しているケースもある。しかし、多勢をみると、なかなか昇進と従業員の年齢や年次を切り離して考えることができない企業も多い。
なかなか変えることが難しい背景には、従業員の長期的雇用のインセンティブとして昇進を活用してきたキャリア的な要因や、一定の年齢を超えると昇進することが当然と考えられてきた文化的な要因、管理職のポストが限られているために若手に回す余裕はないというポスト面の要因、ゼネラリストを重視すると育成に時間がかかる人材開発面の要因など、複雑に絡み合っていた。

昇進は海外から見て「ここが変だよ日本企業」の1つ

日本企業の昇進の遅さは、グローバルに事業展開をしている企業にとって長年、悩みの種となっている。日本的な働き方では、1つの会社に長く勤務して目の前の仕事に熱心に取り組むと、自然とキャリアができあがる。
しかし、日本以外では、基本的にキャリアとは個人の自由意志で決めるもので自律的なものだ。そのため、会社の中で目の前の仕事に取り組んでいたら、そのうちキャリアが出来上がるという概念を持ちにくい。個人が仕事を選び続けることで、キャリアを自分で作ろうという意思が強い。そうすると、キャリアの成長を援けるように挑戦的な仕事に取り組めるような機会を企業が次々と与え続ける必要がある。その結果、昇進のスピードを早めなくては、成果を出している人材ほど機会を社外に求めて退職してしまう。
この傾向は、成長著しいアジア諸国では顕著だ。そして、日本企業の昇進の遅さは悪い意味で有名だ。インドネシアをはじめとした東南アジアのビジネススクールの教員と交流し、「日本企業がなかなか現地法人の幹部候補生を見つけることができないのはなぜだとおもうか?」と尋ねると、かなりの高確率で日本企業の昇進の遅さを指摘される。
特に、中国とインドでは自分のキャリアの益にならないと判断すると、すぐに転職してしまう傾向が強い。両国は、米国のギャラップ社のエンゲージメント調査で世界最高レベルのスコアを出す常連だが、その理由の1つもここにある。ギャラップ社のエンゲージメント調査では、過去半年での挑戦や成長実感が重視される。キャリアに対する意思決定スピードの速い中国とインドでは、半年での成果と挑戦、成長が重視されるために同社の調査では高いスコアがでる。なお、同社の調査において日本は全世界で最低レベルだ。半年というスピード感で成果と挑戦、成長を実感できる環境に身をおいている日本のビジネスパーソンは一部の企業や業界を除いて稀だろう。

早期昇進後のキャリアを企業は提示できるか?

最近の20代管理職のような早期昇進の話は、日本企業ではエンジニアなどの専門性の求められる一部職種に限定して語られることが多い。もともと、早期昇進は専門性で人材を評価する組織と相性が良い。すべての職種で専門家としてのキャリアが求められるジョブ型の諸外国で、早期昇進がよく見られるのはそのためだ。
一方で、ゼネラリストは早期昇進と相性が悪い。これは日本以外でも同様だ。経営幹部候補はゼネラリストであることが多く、時間をかけて育成される。Studio X社の暫定CEOのポール ゲンバーグ氏によると、米国でのゼネラリストは、まず専門性を伸ばして評価され、その後でゼネラリストとして専門性の幅を広げて、経営幹部候補としてキャリアを継続させる。
さて、日本でも早期選抜が注目されているが、20代で管理職になった後のその人材のキャリアはどうなるのか。欧米の場合は、早期選抜後のパターンは2通りだ。
1つは、早期選抜された実績と専門領域での更なるマネジメント経験を積むために転職を繰り返す。転職を繰り返すうちに、個人のブランドを作り上げ、付加価値を高める。一般的には、このケースが多い。そのため、全世界で「元グーグルの〇〇マネジャー」という20代後半から30代前半の人々が溢れている。退職した人材と、その後も関係性を続けていくことで、一緒にプロジェクトを実施したり、出戻り社員として帰ってきて活躍してもらう手段もある。アラムナイ・ネットワークを構築することで、たとえ退職したとしても、会社としての不利益を軽減することができる。
もう1つが、前述した経営幹部候補としてゼネラリストにキャリアを転換させる。勤続年数が長い傾向にある欧州のエリート層だと、このパターンのキャリアを歩む人と会うことが多い。広報から企業ブランド構築のマネジャーを歴任し、その後、ブランド構築のノウハウをストレッチして、従業員の優秀さや働き方の魅力を訴えるピープル・ブランディングの責任者としてHR領域に移り、タレントマネジメントの責任者へシフトするような、専門性のストレッチをすることでゼネラリストとして成長する。また、古典的なケースは海外拠点への赴任を通して、ゼネラリスト化する。海外現地法人に赴任すると、限られた人員で組織を回す必要があるために自分の専門性を超えた領域までマネジメントする必要があるのは日本も海外も同じだ。
さて、早期昇進が当たり前となったとき、日本企業は早期昇進をした従業員に対して、どのようなキャリアを提示できるのか。昇進後の人材を如何にリテンションし、会社と有効な関係を継続していくのかが課題だろう。


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