探究・機会・目標・リソース ーピア・マネジメントの4つの指標
私は、「マネージャー1人じゃもう無理」という現状に対して、マネジメントにおけるケア役割をみんなで分業する「ピア・マネジメント」を提案しています。
今月の日経新聞「私見卓見」に「マネジメントは全員でやろう」と題した記事を寄稿しています。
ピア・マネジメントが必要な背景をさぐる
このピア・マネジメントが必要だと感じている背景には3つの観点があります。
ひとつは、目標達成とリソースの観点です。メンバーの半期の目標に対してその達成を支援しながら、リソースを超過せずかつ余らせず健全に、心地よいストレッチをして働けるようケアする必要があります。
ふたつめに、キャリアデザインの観点です。MIMIGURIでは、ひとりひとりが「探究テーマ」をもってキャリアを歩むことを提案しています。ゆらぎやすい「探究テーマ」を軸としたキャリア設計は難しいのです。周囲との対話を促しながら、こうしたテーマを実現する機会づくりをケアする必要があります。
みっつめに、メンタルケアの観点です。うつ病や適応障害など、風邪をひくようにメンタルを崩す時代になっています。リソースを超過したり、自身の探究テーマとズレた期待をかけられつづけたり、周囲と関係性がうまくいかないなどの状況がメンタルの崩れをもたらします。こうしたメンタルヘルスの予防や復帰へのケアもマネージャーの仕事になります。
他にも、マネージャーのケア役割は多く存在するはずですが、私が現時点で重視したいのは上記の3つの背景です。
4つの指標をもとに、ピア1on1を推進する
こうした状況のなかで、「目標とリソース(業務マネジメントの観点)」「探究テーマと機会(キャリアデザインの観点)」をもってマネージャーがメンバーをケアするだけでなく、チームのメンバーが仲間同士で観察し、ケアし合える状況を目指したいと考えました。
その一つの方法が「ピア1on1」です。
まず、お互いに以下の4つの問いをもとに、バロメーターを書き出します。
そのうえで、お互いの状態をシェアします。
バロメーターから状態と対応を見立てる
たとえば、以下のような状態の人がいたとします。
探究テーマは十分に省察できていて、それを実践する機会にも恵まれている。目標達成が見えていて、リソースはほんの少し余っている。とてもいい状態です。
良好な状態なメンバーは、他のメンバーの業務をサポートしたり、探究テーマの省察や実践機会づくりを助けるなど、仲間をサポートするムーブをしてもらえると良いでしょう。
マネージャーからは、目標設定を引き上げたり、もう1レイヤー難易度の高いミッションをもってもらうなどリクエストも可能です。
一方で、以下のようなバロメーターになった人がいるとします。
自身の探究も深めきれておらず、それを実現する機会も少ない。目標達成にはまだまだ業務をこなす必要があるが、リソースは足らず、スケジュールはぱんぱんにつまっている…。
こうした状態であると、仕事にやりがいを見出せず、気が滅入ってしまい、メンタルをはじめ体調を崩すリスクが高い状態です。こうした状態であれば、まずは業務を引き剥がしてリソースを適正に戻し、目標を修正するよう働きかける必要があります。
ピア1on1を通してこの状態を発見したメンバーは、マネージャーと連携して仲間を助けます。もちろん責任はマネージャーにあるので、具体的な支援方法を検討します。
メンバーがピープルマネジメントの技術と考えを学ぶ
実際に、私がマネージャーを担当しているチームのメンバーが、このバロメーターを用いてピア1on1を実践してくれました。
互いの状態を把握し、問いかけ合うことはできたものの、必要な支援をお互いに提供し合うまでには至らなかったそうです。他者をケアする具体的な方法がわからなかった、という現状があります。
仲間同士で互いに助け合うためには、マネージャーであるとないとに関わらずピープルマネジメント(業務支援、キャリア支援、チームの関係性構築)の基礎技術を学び合える状況を職場で構築することが重要になりそうです。