見出し画像

新NISAが促すかもしれない起業文化の醸成

1月からいよいよ新NISA 制度が始まる。

資産運用立国という掛け声のものと、個人の資産形成を促すことによって年金に依存する傾向を軽減したいという国の意向もあると思うが、実は起業や スタートアップの育成環境整備という観点でも、この新しいNISA制度の拡充は大きな効用を持つのではないかと期待している。



新NISAに期待する効用1:起業に踏切りやすくなるお金の裏付けを作る

1つは新NISAなどを活用して資産形成をすることによって、一定の資産の裏付けができることにより、起業に踏み出しやすくなるのではないかということだ。

 現状に不満を働きながら働いてる人も少なくないように思うが、この場合に 転職だけでなく独立も含めてアクションを起こすうえでネックになっているのが、今の仕事をやめてしまうと給料が入らなくなる、ということだと思う。これは実際に独立した自分のことを振り返って考えてみてもその通りだ。

この時に、例えば年収の1~2年分でも自分の資産があれば、例えば1年という期限を設けてその間に起業のトライをしてみて、駄目であれば再びどこかの会社に就職をする、という選択肢も取りやすくなるだろう。これが、蓄えが年収の1年分にも満たないとなると、なかなか踏み出せないことになるだろう。

 こうして安心して起業に取り組むことの経済的な裏付けとして、新NISAによる資産形成が寄与する可能性がある。


新NISAに期待する効用2:起業の前提となる社会経済の仕組みの理解を促進する

2つ目として、起業前に資産形成に取り組むことが、社会・経済のより深い理解につながり、これが起業にとって必要な基礎知識を厚くし、起業を容易にすることも期待される。 特に個別株投資をすると、投資を成功させるためにはその企業の経営状況を理解することを求められ、たとえば資金調達や、株主と経営者の役割、あるいは商法や会社法、さらには税制といった法律・規則などを、株主という立場からではあるが、実地に学ぶ機会を得ることができる。こうした知識と経験は、いざ自分が独立起業した場合に非常に有効な知識として働くだろう。


新NISAに期待する効用3:起業を応援するためのリテラシーが形成される

3つ目は、自分で起業しない場合でも、起業家を応援する立場として未公開株の保有という形で起業家を支援する株主になるために、その基礎的な素養として公開株の株式に投資する経験が少なからず役に立つものと思う。一般の公開株の投資経験を持つことが、ひいてはスタートアップのような ハイリスクではあるが未来を作る可能性がある企業に対する投資というものへの理解の基礎となり、 スタートアップのサポート手法に対する成熟が起こることも期待されるところだ 。公開株以上にリスクは高い分、金額的に限定するとか分散を一層考慮することでリスクを限定し、そして何より起業家が目指そうとしている未来の価値創造に資金面以外の協力をどう行いうるかを考えることは、投資行為への理解を深めるうえで、非常に有益な機会になるものと思う。

投資が育てるのは個人のお金・資産だけではない。社会を支え、社会の未来を創っていく企業守り育てていくのも投資の役割だ。時間はかかるが、それがうまくいけば、お互いにプラスが生まれるプラスサムの仕組みであり、生まれる可能性のある価値は上限がない。この点が、宝くじや賭けごとのように上限が掛け金の総和(から胴元の手数料を差し引いたもの)に限定され、短期間で結果が判明するが、当たった人がいる裏には損をする人がいるマイナスサムのギャンブルとは大きな違いである。


個人の投資を一層円滑にする制度の整備を

 このようにスタートアップ元年にまつわる施策や起業を促進するといった観点でも新NISAは、間接的かもしれないが有効な役割を果たすものと期待している。

最後に。スタートする新NISA制度は、これまでのNISA制度と比べて大幅に拡充され、よく検討された素晴らしい制度だと思う。とはいえ、個人に投資を促すにはまだまだ制度的な課題もある。

例えば米国株など海外の金融商品を買った場合に、現地の税金と日本の税金が二重に課税され、取り戻せる場合でも手続きをしなければ取り戻せないといった問題がある。 新NISA制度は非課税、と思っていると、この非課税は国内税の分だけである点は、致し方がないが注意が必要だ。 この部分について、非課税であると誤認している人、あるいは国内外課税の区別がついていない人が案外いるのではないかという点は気になる。

従来の特定口座で取引した場合であっても、この二重課税は別途自分で手続きをしなければ取り戻すことができないのは、少々不便に感じるところだ。 金融庁はじめ関係機関には、現在の資産運用に関する制度をより一層一般の人に使いやすい仕組みにしていくことを期待したい。

 いずれにしても日本の起業を促進し、さらには「スタートアップ元年」と呼ばれたような動きを進め、日本から ユニコーンが出てくることを期待する政府の方針をバックアップするといった大きな視点で新NISAが位置付けられ、単に個人の資産形成にとどまらず、日本全体の活性化に寄与する制度としてより一層整備されていくことを期待している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?