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エンゲル係数上昇の主因は実質賃金低下

食費が圧迫、細る家計 エンゲル係数40年ぶり26%超 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

経済的なゆとりを示す「エンゲル係数」が足元で高水準にあります。エンゲル係数は家計の消費支出に占める食料費の割合であり、食料費は生活する上で最も必需な品目のため、一般に数値が下がると生活水準が上がり、逆に数値が上がると生活水準が下がる目安とされています。

そして、最近の我が国のエンゲル係数上昇は、実質実収入の減少と食料品の相対的な価格上昇が主因となっています。その背景には、明らかに賃金上昇が食料品を中心とした物価上昇に追い付いていない実質賃金の低下があります。一方で、高齢者世帯が多く含まれる無職世帯のエンゲル係数は低下傾向にあります。背景には、新型コロナ感染に対する恐怖心緩和に伴うサービス支出の拡大がありますが、依然としてコロナ前より高水準にあることから、必ずしも生活水準の上昇とは言えないでしょう。

政府の小麦売り渡し価格が10月から1割以上下がっていることや、原発処理水の問題で海産物の価格が下がっていること等から、食料品の値上げラッシュはピークアウトしつつありますが、中長期的には人口の増加や海外の所得水準向上等に伴う需要の拡大に加え、脱炭素化や都市化による農地減少等も要因となり、食料・エネルギー価格の上昇トレンドは持続する可能性が高いでしょう。

全体の物価が下がる中で食料・エネルギーの価格が上昇すると、特に低所得者層を中心に購入価格上昇を通じて負担感が高まり、購買力を抑えることになる。そして、低所得者層の実質購買力が一段と低下し、富裕層との間の実質所得格差は一段と拡大します。

更に深刻なのは、我が国の低所得者世帯の割合が高まっている一方で、高所得者世帯の割合が低下傾向にあることです。こうした所得構造の変化は、我が国経済がマクロ安定化政策を誤ったことにより企業や家計がお金をため込む一方で、政府が財政規律を意識して支出が抑制傾向となり、結果として過剰貯蓄を通じて日本国民の購買力が損なわれてきたことを表しています。その結果、我が国では高所得者層の減少と低所得者層の増加を招き、家計全体が貧しくなってきました。

本当の意味でのデフレ脱却には、消費段階での物価上昇だけでなく、国内で生み出された付加価値価格の上昇や国内需要不足の解消、単位あたりの労働コストの上昇が必要となります。そうなるには、賃金の上昇により国内需要が強まる『良い物価上昇』がもたらされることが不可欠といえるでしょう。そのためには、実質賃金の上昇が不可欠となります。

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