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米大統領選についての目利き情報源メディア、Drudge Report(ドラッジレポート)とその変節

米大統領選挙も11月3日の投票日を控え大詰めに差し掛かり、10月22日(木)に開催される最後の討論会では発言中の相手の音声をオフにするという異例の措置まで取り入れられることになり、多くの人の注目を集めつつあります。

今回は長年に渡って保守系のニュースポータルサイトとして知られ、4年前のトランプ大統領当選では大きな影響力をもたらした「Drudge Report(ドラッジ・レポート)」の現在について触れてみたいと思います。

なぜなら、4年前のトランプ氏勝利の「立役者」が変節し、どのように今の状況を捉えているかはとても興味深いと思われるからです。今日の同サイトにはトランプ氏のうつろな表情と『EXIT(退出)』という文字が写り込んだ画像がトップページに掲載されてます。

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ドラッジ・レポートとは、マット・ドラッジ氏という人物が1995年に電子メールニュースレターとしてスタートし、1997年からは主要速報ニュースへのリンクに独自の見出しを盛り込み、運営をしているニュースウェブサイトです。サイトを一見するとそのあまりのシンプルさに驚くことと思いますが、このドラッジ氏ほぼ一人で運営してきたサイトの頻繁な更新頻度、目利き力が特に保守系の政治ニュースに関心のある層には絶大なる影響力を誇ってきたサイトです。

ドラッジ・レポートを一躍有名にしたのは、1998年、「ホワイトハウスのインターン」とビル・クリントン大統領の間の「不適切な関係」(モニカ・ルインスキー・スキャンダル)についてのスクープでした。ニューズウィーク誌が情報を持っていながら、そのことを公開しなかった、というニュースをドラッジ氏が報じたのです。ドラッジ氏自身は普段独自の記事を書くことは殆どなく、ニュース性があると思われる他の主要サイトの記事、コラムのリンクをいち早く張り、独自の見出しをつけるところがその特徴です。

2016年のトランプ大統領候補が当時の予備選に勝利した際には著名ジャーナリストのカール・バーンスタイン氏が「A large measure of why Trump is the nominee goes to Matt Drudge(トランプ氏が大統領候補指名獲得した理由の大部分はマット・ドラッジ氏だ)」、或いは「アメリカ政治における『比類ない影響力(influence unequaled)』」と語ったほど、その存在感は広く知られてます。

この7月に出版されたドラッジ氏の人物、サイトの影響力について取材を元に出版された書籍『The Drudge Revolution』によると、トランプ氏が当選確実の連絡を待つ開票日の夜、いち早く激戦州の勝利、最終的な当選予測の見立てを電話でトランプ氏本人に知らせ、トランプ陣営のインナーサークルでもアドバイザー的な役割を果たしていたことが記されているほどです。

そんなドラッジ氏ですが2019年頃からはトランプ大統領に対する批判的な記事や見出しへのリンクが増え、現在はますますその傾向が強まってます。影響力が低下しているとはいえ、Similarwebというウェブサイトのトラフィック分析サイトによると月間5,600万ものアクセスを誇ってます(コムスコアのデータによると2020年7月のユニーク訪問者数は約150万人)。ただ、反トランプ的なサイトへの方向転換後、サイトトラフィックは低下傾向にあります。ドラッジレポートはモバイル対応やFacebookやTwitterへのソーシャルメディアではあまり拡散されず、あくまでも昔ながらのウェブサイトでのブックマーク等経由の数多くのリピーターからのアクセスが中心という点もその背景にあります。

10月22日に開催される最後の大統領選討論会において、トランプ氏はバイデン氏の息子ハンター・バイデン氏が父への口利きのために中国とウクライナから金銭を受け取っていた、とする米紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)の疑惑つき報道について強く非難をし、バイデン候補を貶めるのではないかとAFP通信の記事で報じられてます(一方で「ポスト」紙の報道はロシアから仕掛けられた陰謀ともPoliticoにて報じられてます)。

民主主義国家のアメリカの大統領選を控え、こうした何が本当か信じられないようなニュース、報道、SNS上の陰謀論が飛び交う中、大手主要メディアには今まで以上に信頼に足る情報が求められ、期待されてます。一方で、20年以上に渡って米国政治に影響力を誇ってきた老舗ニュースポータルであるドラッジレポートがどのような切り口でニュースをキュレーションするか、注意深く見つめてみたいと思います。

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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