複業をするなら「非金銭報酬」を見積もる力を身につけよう。
株式会社HARES代表/複業研究家の西村(@souta6954)です。
複業研究家として日々たくさんの方の複業の相談に乗っているのですが、よく聞かれる質問の一つが「複業を受ける/受けないの基準はありますか?」というもの。
「複業の5つの壁」で言う「有料化の壁」や「時間の壁」において出てくる悩みの一つですね。
複業として引き受けられる案件が限られている中で、全部引き受ける余裕はない。一方で、何をどういう基準で引き受け、断ればよいのかがわからない、という壁にぶつかるわけです。
仕事に見合った報酬が得られるか?
「複業」とはいえ仕事であることには変わりありませんので、引き受けるかどうかを判断する基準は非常にシンプルで、
仕事に見合った報酬が得られるか?
という問いに対してYES!と答えられるのであれば引き受ければ良いですし、Noなのであればお断りするのが賢明です。
「割に合わないな…」と思いながら仕事をするのは、自分の心身をムダに消耗させてしまうばかりか、モヤモヤを抱えながらでは良いアウトプットが出せないため、結果的に相手からの評価も低くなってしまうため、お互いにとって残念な取引になってしまうのです。
なので「仕事に見合った報酬が得られるか」どうかを自分なりに見積もることが大事なのですが、
報酬=金銭報酬
ではなく
報酬=金銭報酬+非金銭報酬
が「報酬」に対する正しい理解なので注意が必要です。本業で一定の金銭報酬を得ているからこそ、複業の場合は特に非金銭報酬についてしっかり考えることが重要です。
非金銭報酬=経験報酬+感情報酬
では、お金には換算できないプライスレスな「非金銭報酬」とは、具体的に何なのでしょうか。
経済学者の安藤至大教授は「金銭的・非金銭的報酬とワークモチベーション」という論文の中で、非金銭報酬は「仕事を通じて得る経験」と「心理的な報酬」の2つに分けられる、と書かれています。
これについて、私は便宜的に「経験報酬」と「感情報酬」と呼んでいます。
【経験報酬】
その複業を通じて、本業では得られないスキルや経験、学びやネットワークが得られ「経験値」が稼げることでビジネスパーソンとしてレベルアップできる、という報酬のことを指します。
ドラクエで例えるならば、モンスターを倒して得られるG(ゴールド)が金銭報酬で、けいけんち(経験値)が経験報酬ですね。
【感情報酬】
その複業を通じて、自分がやりたいことができることで自己実現欲求が満たされたり、社会貢献できることで貢献欲求が満たされたりするほか、自分が好きな人・尊敬している人と一緒に仕事ができること自体が嬉しかったり、そのチームに所属できることで所属欲求が満たされるなど、自分自身の感情がポジティブな状態になる、という報酬を指します。
感情報酬はとても多様ですが、上記にあげた様々な欲求が満たされるなど、単純に面白そう!楽しそう!とワクワクを感じるのも感情報酬の一つと言えます。
「仕事に見合った報酬が得られるか?」
という問いに対して報酬を見積もる際は、金銭報酬だけでなく、経験報酬や感情報酬といった非金銭報酬をしっかりと見積もることも重要です。
非金銭報酬の落とし穴
報酬=金銭報酬+非金銭報酬(経験報酬+感情報酬)という公式に則って考えると、自分なりに非金銭報酬が見積もれるなら、仮にその案件の金銭報酬が低かったり0円だったとしても、引き受けよう!と自分にGOサインを出すことも当然ありえます。実際私も会社員時代もそうやって複業の受ける/受けないを判断してきましたし、独立した今でもそうです。
ただ、格安または無償で引き受けた仕事も、はじめの数カ月はモチベーション高くやっていたのに、途中で「あれ?!この仕事、割りに合ってなくない?」とモチベーションが低下してくる、ということを経験したことがあったりしませんか?私はあります。笑
これはどういうメカニズムなのか?というと非常にシンプルで、経験報酬も感情報酬も、いずれも時間軸とともに満足度が自然と下がっていくからです。
有名な経済学の理論に「限界効用逓減の法則」というものがあります。
引用元:『ど素人でもわかる経済学の本』から限界効用やゲーム理論を解説
「ビールの最初の1杯はめちゃくちゃ美味しく感じるのに、2杯目以降は1杯目の時に比べると1杯あたりの満足度は下がる」というやつですね。
これは経験報酬や感情報酬にも全く同じことが言えて、最初の1ヶ月は何もかも新鮮で得られる学びや経験値も多く、楽しい!面白い!と感じるのですが、数ヶ月も経つと良くも悪くも「慣れ」や「飽き」が出てきてしまい、当初感じていたような「やりがい」を感じにくくなったり、ある程度経験値たまったしそろそろ「次」に行こうかな…?という気持ちになってくるのです。
これはもちろん「何もせずに放っておくと非金銭報酬が下がっていく」という話なので、こうなることを見越して、1ヶ月ごと・3ヶ月ごとなど定期的にマネージャーと1on1しながら「次はこんなことができるとモチベーション高く働けそう!」といったことを対話しながらチューニングしていくことで回避することができます。
また、経験報酬+感情報酬といった非金銭報酬は「長続きしないもの」ということを予め知っておくと、格安or無料で引き受ける場合は「3ヶ月限定」や「5人/5社限定」など予め期限や上限を設けておくと精神的に消耗せずに済むのでオススメです◎
まとめ
以上、複業として仕事を引き受けるかどうかの判断基準となる報酬についていつもお話していることをまとめてみました。
要約すると、
①金銭報酬+非金銭報酬(経験報酬+感情報酬)の2つに分けられるので、それらを合算して判断することが重要。
②ただし、非金銭報酬は時間とともに薄れていく傾向にあるので、その前提で複業に向き合い、定期的に感情報酬+経験報酬をチューニングすべし。
③金銭報酬が低い(格安or無償)場合は、期限や上限を設けるのが吉◎。
というお話でした!ではまた次回!
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