持続的なインバウンドのために 日本版「グランドツアー」を
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
インバウンド(訪日外国人)の宿泊需要が急回復しているようです。たしかに、都内でも路上カート(あれ、まだ生き残ってたんですね…)を頻繁に見るようになりましたし、繁華街でも多くの観光客を見かけます。
データをみると、栃木県や高知県など大都市圏ではないエリアの健闘が目立ちます。徳島県も回復度77.2%で9位となっており、山あいの秘境と呼ばれ、樹木のつるを編んだ渓谷のつり橋「かずら橋」で有名な祖谷地区が日本の原風景として訪日客を呼び込んでいます。今では、ネットのSNSなどで各国のインフルエンサーが盛んにオトクな情報や隠れた名所などを発信しており、長らく日本在住の私たちですら知らないような情報も目にすることがあります。
日本は島国で狭いという印象がありますが、意外と大きい国土です。札幌ー福岡をヨーロッパで例えると、ドイツの上からスペインまで到達するほどです。
また、歴史が長いことから、多様な地方文化や伝統文化にあふれているのも特徴の1つです。都市や自治体に閉じるのではなく、文化圏として広域観光パッケージとして体験しやすくするなどの施策が有効かもしれません(瀬戸内はしまなみ海道などを中心としてうまくパッケージ化しているようです)。
徐々に増えているリピート観光客は、ありきたりの観光地では満足できなくなってきています。また、訪日旅行1回あたり100万円以上(航空券代を除く)を支出する「高付加価値旅行」と呼ばれる富裕層は、一般的に知的好奇心や探究心が強いと言われています。自国の文化と何が違うのか?なぜこのような文化が生まれたのか?など、その道のプロと直接話したいというニーズもあります。特に年々人気が増している伝統工芸の分野では、作品を購入するだけでなく作家と触れ合う機会も求めています。スティーブ・ジョブズが日本通なのは有名な話ですが、実際に陶芸を求めるだけでなく、訪日時に作家と話し合い注文をしていたこともあったそうです。
その昔、イギリスでは上流階級の師弟が大陸周遊旅行をして教養を身につける「グランドツアー」と呼ばれるものが流行したそうです。
当時も今もイタリアの芸術は多くの国々に影響を与えていますが、1000年を超える独自文化を擁する日本も、現代のグランドツアーの目的地として大きなポテンシャルがあるのではないでしょうか。
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タイトル画像提供:まちゃー / PIXTA(ピクスタ)