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持続的なインバウンドのために 日本版「グランドツアー」を

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

インバウンド(訪日外国人)の宿泊需要が急回復しているようです。たしかに、都内でも路上カート(あれ、まだ生き残ってたんですね…)を頻繁に見るようになりましたし、繁華街でも多くの観光客を見かけます。

インバウンド(訪日外国人)の宿泊需要が急回復している。新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和された2022年10月から23年9月までの延べ宿泊者数は円安もありコロナ禍前の18〜19年の同期間の約8割、突出する東京都を除いても7割近くまで戻った。中国など東アジアだけに頼らず、収益重視の集客策を探る動きもある。

日経電子版

データをみると、栃木県や高知県など大都市圏ではないエリアの健闘が目立ちます。徳島県も回復度77.2%で9位となっており、山あいの秘境と呼ばれ、樹木のつるを編んだ渓谷のつり橋「かずら橋」で有名な祖谷地区が日本の原風景として訪日客を呼び込んでいます。今では、ネットのSNSなどで各国のインフルエンサーが盛んにオトクな情報や隠れた名所などを発信しており、長らく日本在住の私たちですら知らないような情報も目にすることがあります。

日本は島国で狭いという印象がありますが、意外と大きい国土です。札幌ー福岡をヨーロッパで例えると、ドイツの上からスペインまで到達するほどです。

また、歴史が長いことから、多様な地方文化や伝統文化にあふれているのも特徴の1つです。都市や自治体に閉じるのではなく、文化圏として広域観光パッケージとして体験しやすくするなどの施策が有効かもしれません(瀬戸内はしまなみ海道などを中心としてうまくパッケージ化しているようです)。

阪神電気鉄道子会社の阪神コンテンツリンク(大阪市)は5月、大阪・難波に相撲をテーマにした訪日客向けのショーホールを開設する。観客自ら土俵に上がり、力士役のパフォーマー相手にぶつかり稽古や取組に挑戦できる。ステージに最も近い席の価格は1万6000円で、同社は「日本の伝統文化を求める訪日客需要は強い」とみる。

日経電子版

徐々に増えているリピート観光客は、ありきたりの観光地では満足できなくなってきています。また、訪日旅行1回あたり100万円以上(航空券代を除く)を支出する「高付加価値旅行」と呼ばれる富裕層は、一般的に知的好奇心や探究心が強いと言われています。自国の文化と何が違うのか?なぜこのような文化が生まれたのか?など、その道のプロと直接話したいというニーズもあります。特に年々人気が増している伝統工芸の分野では、作品を購入するだけでなく作家と触れ合う機会も求めています。スティーブ・ジョブズが日本通なのは有名な話ですが、実際に陶芸を求めるだけでなく、訪日時に作家と話し合い注文をしていたこともあったそうです。

ジョブズは、茶わん、花入れ、コーヒーカップなど、いずれもオーソドックスな7、8点を購入した。

そのうえでジョブズは「自分のために作品をつくってほしい」と頼んできた。

四角い皿の前へ行き「もう少し小さいものを作ってほしい」と言った。
これぐらいと手で示したので、釋永さんが物差しで測ると22センチだった。

さらに「半分は釉薬(=うわぐすり)で黒く、もう半分は土のまま焼いてほしい。そして、黒と土との間には変化もほしい」と注文した。

NHK WEB

その昔、イギリスでは上流階級の師弟が大陸周遊旅行をして教養を身につける「グランドツアー」と呼ばれるものが流行したそうです。

その姿は17〜19世紀にイギリスで流行したグランドツアーと似ている。貴族など上流階級の子弟が数カ月から数年をかけて実施した大陸周遊旅行だ。多くの場合、旅の最終目的地はイタリア。家庭教師を引き連れ、古代ローマの遺跡やルネサンス美術を巡った。哲学者トマス・ホッブズや経済学者アダム・スミスも指南役を務めたという。

一流の教師の下、旅行者はこれまで学んできた政治、経済や社会状況を自分の目で確かめ、ヨーロッパの根底に横たわるギリシャ・ローマ精神を体得した。疑問点は家庭教師や彼らが紹介してくれる現地の専門家らに尋ね、議論を通して上流階級に求められるリベラルアーツ(教養)を身に付けた。

NIKKEI The STYLE

当時も今もイタリアの芸術は多くの国々に影響を与えていますが、1000年を超える独自文化を擁する日本も、現代のグランドツアーの目的地として大きなポテンシャルがあるのではないでしょうか。


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タイトル画像提供:まちゃー / PIXTA(ピクスタ)

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