絶滅していくメディア デジタルデータは1000年先も残るのか
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
最近わたしの周辺では「Chat GPT」の話題が尽きません。これは大規模言語モデル(LLM)と呼ばれる、膨大な量のテキストデータを使ってAIを訓練した深層学習モデルのことで、インターネット上にアクセス可能な大量のデータが存在し、それらを扱える計算能力を持つ計算機が実現可能なコストで入手できるようになったことで大きな発展期を迎えています。社会へのインパクトも大きく、例えば暗記偏重の入学試験にも一石を投じています。
AIの力はテキストだけでなく、画像や動画や音声の領域にも広がっています。劣化の進む古い紙の文章をデジタルアーカイブするプロジェクトも各地で進んでおり、データ化されたことにより検索可能になったり、読める人が少なくなった手書き文字を自動で解読することもできるようになりました。
アナログからデジタルへ。現在ではデジタルトランスフォーメーションと呼ばれる社会全体のデジタル化が進行中です。デジタル前提社会になると、誰もが上記のような恩恵を受けられるようになるため、圧倒的に効率化が図れたり、さらに新しい価値を生み出すこともできるようになります。
裁判の証拠として電子メール等のやり取りが提出されることも珍しいことではなくなりました。すでに手紙のやり取りは激減しているわけですから、当然の流れでしょう。一方で、デジタルデータがいつまで保存されるのかというのは考えておくべき課題です。正確にはデジタルデータが書き込まれている保存メディアの耐久年数の問題です。
磁気を使うハードディスクなどは3-4年。半導体を使うUSBメモリなどは2-10年。耐久性が高いと言われているDVDなどの光ディスクでも、5-20年が一般的な保存年数と言われています。それを上回るものとして、金属系素材に物理的に凸凹を刻むことで100年以上の耐久年数を誇ると言われる「M-DISK」が挙げられます。
読み取る機械がなくなってしまうという別の課題も存在します。つい20年前くらいに使われていたメモリカードを読み取ることができないという現象は、すでに身近なところで起こっています。
デジタル前提社会になった場合、そのデータを誰がどうやって長期間保存して次世代に受け継いでいくのか。紙であればたとえ600年前のものでも読み取り可能な形で保存できます。今でも蔵に眠っていた文章が新発見されるということがしばしば起きています。
これらのものは国が保存していたわけではなく、市井に散らばっているものです。昔から伝わる書を掛け軸にする文化もあり、その中には個人間の手紙なども多く含まれており、個人が所有しているものがほとんどです。多くのコミュニケーションが電子化された現在において、その歴史をどのように次世代に受け継いでいくのか。掛け軸などで昔の消息を見るたびに考えてしまいます。
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タイトル画像提供:photochic / PIXTA(ピクスタ)
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