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複業チーム・マネジメントの3つの視点 〜#複業人材を生かす組織とは

お疲れさまです。uni'que若宮です。

日経COMEMOからこんなお題が出ています。

#日経COMEMO #複業人材を生かす組織とは


弊社uni'queは「全員複業」というのをルールにしており、メンバーが全員なんらか複業をしています。

代表である僕も複業しないとuni'queにいられないので、ランサーズで「タレント社員」という肩書で働いていたり、企業の外部メンターをしたり色々やっています。自身も複業人材をしており、かつ複業チームのマネジメントをやってきた経験から、「複業人材を生かす組織」のポイントについて書きたいと思います。


①Promiss 〜なにを「約束」するか?

通常、専業の社員には社内の人事評価制度というのがあり、それに基づいて目標設定と評価がされ、キャリアプランに沿って育成も会社の人事部門が行います(これも少しずつ崩壊しつつはありますが)。

しかし、複業人材の場合、メンバーによって関わる時間の割合がバラバラで、スキルも様々なので、一律の目標設定というのが難しいように思います。仕事を一緒にする上で何をすり合わせ、何を約束するのか。自社での経験からいっても、ここが適切にできていないとメンバーのスキルやモチベーションを引き出せず、能力を十分活用できません。

「複業人材」と一口にいいますが、僕は人材のフェーズによって「約束」は変わるべきだと思っていて、ざっくりいうと「守」「破」「離」の人材フェーズがある気がしています。「守破離」というのは芸事の稽古の段階を表す言葉ですが、型通りする段階が「守」、与えられた型にとどまらず型をはみ出し始めるのが「破」、そして型を離れて自在に自分らしいあり方芸ができるようになるのが「離」です。


1)「守」フェーズの人材とは「プロセス」を約束する

「守」フェーズはまずは、自社のやり方通りにしっかり仕事をこなしてもらう段階です。イメージとしては複業を始めたばかりのプレイヤーや駆け出しのフリーランスの方などがこれに当たります。「守」のフェーズでは、仕事をお願いする際にしっかりと要件を定義して、意識の齟齬が出ないようにしてから仕事をはじめてもらうことが重要になります。

「守」フェーズの人材なのに自主性に任せすぎると「丸投げ」感を持たれたり本人も不安で苦しくなったりしますし、他方で雇う側からすると思ったようなアウトプットが上がってこずにイライラすることになります。

「守」フェーズの人材では、仕事の要件や仕様を丁寧にすり合わせて、「どう進めるか」という「プロセス」を約束する必要があります。


2)「破」フェーズの人材とは「成果」を約束する

「破」フェーズの人はスキルが進んでいて、その人なりのオリジナルなやり方を確立しています。様々な企業や業界を渡り歩いて成果を出しているマーケターなどが「破」のフェーズに当たります。
「守」フェーズとは異なり、「破」フェーズの人に対して細かくプロセスを指示してしまうと、せっかくのその人らしいスキルが十分に発揮されません。自社のやり方とちがったとしても、むしろその人のやり方の方が進んでいる可能性が高いのです。こういう人材の場合、やり方は自由にまかせてのびのびやってもらうことで、むしろ社内に新たな知見がもたらされます。

単価も高くなりますがその分プロとして成果を出してもらうことが重要です。「破」フェーズの人材には、「成果」を約束し、プロセスは任せるというマネジメントの仕方が向いています。


3)「離」フェーズの人材とは「ビジョン」を約束する

「離」フェーズの人材は、さらに自由度があがります。「離」フェーズの人材は、一プレイヤーというよりはマネジメントのスキルも高く、自身独立して事業を営んでいるような人材で、Yahoo!のギグパートナーや楽天の仲山進也郎さんのようなイメージです。こういう人に組織に入ってもらう意義は、内部で持てないような視点や視座からインプットを得たり、短期的成果ではなくより中長期的な視点から事業の展望自体を示してもらうことです。それ故、できるだけ自由にその人なりの視点で行動してもらえる環境が必要です。

「離」フェーズの人材に対し「プロセス」マネジメントをするとその利点を殺しますし、そういう人材は窮屈に感じるとそれこそ会社を「離」れていってしまいます。また、短期的な「成果」を約束するより、より俯瞰的な視点から関わってもらうほうがよいので「離」フェーズの人材とは、「ビジョン」を約束し、プロセスも成果も本人に設定させるようなやり方がもっとも効果が高いと考えます。

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自社でもこれまで何度か失敗したのですが、「複業人材」といっても異なるフェーズがあり、それを理解せずに一律のマネジメントをしようとすると失敗してしまいます。ドラッカーがすでに50年前にいっているように、組織の流動性や多様性があがると、それに合わせたマネジメントが必要になるのです。

つまるところ、フルタイムの従業員さえ、これからはボランティアのようにマネジメントしなければならない。有給ではあっても、彼らには組織を移る力がある。実際に辞めることができる。知識という生産手段を持っている。
動機づけ、特に知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。挑戦の機会が与えられなければならない。組織の使命を知り、それを最高のものとし、献身できなければならない。よりよい仕事のための訓練を受けられなければならない。成果を理解できなけれはならない。
これらのことは、人のマネジメントの仕方はいつも同じではないことを意味する。同じ種類の人だちであっても、状況の変化によってマネジメントの仕方は変わってくる。(ドラッカー『マネジメント』)


②Openness 〜社外のことも共有する

第2のポイントは社外のこともオープンに共有する、ということです。複業チームの場合、別の企業での仕事の状況や家庭の事情など、「社外」の状況を相互にチームメンバーで共有していくことが重要です。これは、リスクの最小化とともにシナジーを最大化するために必要なのです。

僕自身、複業をする側として実感していることですが、「複業」で難しいのはタイムマネジメントです。といっても、実は定常状態にはそれほど大変ではありません。たしかにマルチタスクにはなりますが、正常時には単に曜日や時間を小分けにしてしまえば、それを切り替えるだけだからです。

大変なのは何かトラブルが発生したときです。例えば別の仕事で重大なシステムダウンが起きたとか子供が熱を出したとか、社外でなにかが起こるとそのしわ寄せで自社の仕事に影響が出ます。複業の場合、そういう小さな爆弾が沢山あるようなイメージです。

適時社外の状況も共有してあれば、他のメンバーで分担をしたりスケジュールを見直したり色々手が打てるのですが、なんとなく「複業」という別の話をするのが気が引けるのか、黙っているケースが多く、マネジメントとして把握できなかったりします。そもそも複業のことを隠していたり、複業の件で迷惑をかけてはいけない、という考え方をメンバーがしてトラブルがあったことを言い出せずに一人で抱え込んでしまい、かなり危機的な状況になってからわかることもよくあります。しかし、社外のことであれ、実際には影響がある要素だとしたら、予め知っている方がリスクマネジメント上有利なのは明らかです。


また、「複業人材」のメリットは社外とのシナジーにあります。複業人材はそれぞれ異なる業界にネットワークや知見を持っていたりするので、そういう繋がりから提携や取材につながることが多いのです。ですが、せっかく複業人材がもっている外部のアセットもそれを「隠して」いる状態ではそういうシナジーすら生まれようもありません。それではせっかくの複業人材のアセットを生かす組織とは言えないでしょう。

むしろ、複業人材が「社外」でどんなことをしているか、どういうネットワークを持っているのか、などオープンに共有すると組織としてのリスクも下がりますし、シナジーが出るのです。


③Communication 〜頻度と情報の比率

最後に重要な点は、複業人材とのコミュニケーションです。

実際に複業チームで仕事をしてみると、やはり難しいのが「一体感」や「マインドシェアの維持」です。みんなが他にも仕事をしているのでコミュニケーションが不足すると意識が自社から離れがちになります。

これを防ぐには、適切な頻度で全員の状況を共有するようなコミュニケーションの仕掛けをつくる必要があります。たとえば自社の場合でいうと、週イチで全メンバー参加のオンライン定例をやってみたり、月イチの飲み会をやってみたり、色々やってみました。しかし、複業メンバーは専属社員に比べると忙しく時間が合わなかったり、それぞれ他の仕事で色々トラブルも起きたりして、「定例」的な集まりは延期延期となったりしてなかなかスケジューリングが難しく、定着しませんでした。

今も継続してやっているのは、朝イチでその日の予定のslackへ投稿し合うことです。

日報のように細かく報告をするのではなく、ただ朝イチ今日の予定をメンバー個人のchannelに投稿し合うだけです。1分でできます。この時②で述べたようにプライベートや他社の予定など「社外」のスケジュールも可能な限りで書いてもらうようにしているので、情報として共有する目的もあるのですが、どちらかというと「生体反応」的な意味の方が大きいと思っています。


要はチーム内でメンバーが「いるよー、元気だよー」というのを毎日見える化するわけです。そうすることでバーチャルチームでも「人がいる」感じが出てきますしメンバー自身も、毎日uni'queのことやプロジェクトのことをを思い出します。

こういう仕掛けがないと、共有すべき「情報」があるときにしかslackに人が来なくなり、「人がいる」感じが減ってチームとしての一体感が薄れていきます。なので投稿は「今日は二日酔いなのでちょっとのんびりしよう」みたいなただの「つぶやき」みたいなものでもOKです。そこにツッコミが入ったり、メンバー同士のコミュニケーションのきっかけにもなります。


ドラッカーは『マネジメント』において、「コミュニケーション」と「情報」を区別し、

コミュニケーションと情報は別物ものであり、相互依存的ではあるが実のところしばしば対立する。

と言っています。「コミュニケーション」と「情報」は混同されがちですが、目的も機能もちがいます。そして情報が増えるとコミュニケーションは減るのです。(会話の中の「情報」の比率を考えた時、家族や恋人、友人など親しい人ほどその比率が低いことを考えればそれがわかります)


まとめ

以上、複業人材を生かす組織には、

①Promiss
②Openness
③Communication

という3つの視点が大事だと考えています。これらは「複業」という自組織からすこしはみ出している人材の能力と機会を最大限に活用し、複業ならではのシナジーを発揮しながら、かつ、チームに一体感を持つために重要なポイントです。


そしてまた、これらの視点は「複業チーム」にかぎらず、人材の流動性や多様性が高くなる社内人材のマネジメントにおいても、より重要になってくるのではと思っています。リモートワークやギグワークも増えるこれからの時代、個の力とチームの力を最大化していく上で、複業人材とのチームワークから学べることは多いのではないでしょうか。

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