政府の諮問会議の提出資料にツッコミどころが満載過ぎて…

このツイートが話題になっていた。

4/26に行われた政府の経済財政会議に提出された会議資料だそうだ。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0426/shiryo_01_2.pdf



確かにこれは酷い。因果どころか相関もないデータをわざわざ提示して「ほら、だからここに予算必要でしょ?」って結論ありきで事実捏造しているようなもん。
こんなデータの取り扱い方してたら、普通学生なら落第だし、社会人なら一発で信用失う。政府とかの会議で呼ばれる有識者ってこんないい加減でいいわけ?びっくりする。

そして、これをお粗末だと思ってツッコミを入れるツイッターの一般の民の方がよっぽど真っ当です。

この表の一番下にある。このグラフ。

これも、家事時間男女比が大きい(男の方が家事時間が少ない)方が出生率が低くなるような印象操作の図にしているが、大嘘です。実際はOECDの統計の中から負の相関図になる国だけ抽出して作っている。実際のデータを全部並べれば下の図のようになる。どう見ても無相関である。軸は上図と同じ。

OECD統計より荒川和久作成。無断転載禁止。

ここまでくると、詐欺に近い。作ったのが誰かは知らんが、それを得意げにただ提出するだけの政治家も終わってる。
あと勘違いあるといけないので、このOECDのデータは別に子育て世帯の夫婦の時間ではないし、15-64歳男女の全データで、当然それには結婚していない一人暮らしも含まれるだろう。家事育時間と書いてあるが、厳密には無償労働時間で、それの男女比というものを単純に国際比較することが妥当なのか。日本の無償労働時間の男女比が女性に高くなるのは、裏返せば男の有償労働時間が圧倒的に多すぎるということでもある。

また、経済財政諮問会議の資料にある以下の部分は、こども家庭庁の少子化対策の会議でもそのまんま使われていて、西村経産相大臣が得意げに語っているもの。いやはや、なんなんだ、この国の政治家…。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_mirai/dai2/siryou7.pdf

何より、このいい加減なデータ読み取りだけをもって、男の家事育児時間を増やせば出生率が0.1上昇するなどという鉛筆なめなめも大概にしてほしい。そんな因果は断じてない。

それ以外にも、家族関係政府支出GDP比1%に相当する5兆円の予算をつければ、0.05-1.0出生率があがるなんて書いてるが、ホント馬鹿なのかなと思います。そんな予算をいくらあげても出生率は改善しないことは繰り返し述べていること。

百歩譲って、その予算をかければ出生率があがるというなら、日本は過去10年間でめちゃくちゃこの予算が増えているのに逆に出生数は激減していることの理屈に合わない。韓国でさえ、予算をすごい増やしているのに、むしろどんどん出生率は下がっている。無論、この予算を下げれば出生率があがるなどとは言わないが、少なくともこの予算を増やせば出生率があがるとはとても言えない。少子化の要因はその予算の多寡の年多成ではないからだ。

では、なんでそんな効果のない予算を増やそうとしているのか?政治家の都合とその予算が増えることによって利益を貪ることのできる団体の思惑でしかない。

自民党は元々予算の増額に反対していたが、野党がそればっかり言うもんだから、野党の提案潰しのために急に増額に宗旨替えしたにすぎない。少子化対策じゃなく、選挙対策であり、支持率対策なんですよ。

そのあげく、どうなるかというと、社会保障費の増額など国民負担率が増えるわけで、その割を一番食うのは誰かといえば、子育て支援で「くれくれ」言っている親の子どもたちです。

いい加減、こんな茶番はやめてほしいし、嘘のデータを正しいものとして切り取り報道するのもやめてほしい。御用学者なんて元々たいして信用ならないのでどうでもいいが、そんなのに教えてもらってる学生が可哀想。

その意味では、メディアも油断ならない。この記事とかも酷い。何の相関もないデータをさも相関があるかのようなグラフにして、育児時間の男女比が男性が少なすぎるから日本と韓国は出生率が低いのだと言っている。

最近の日経の人口や出生に関する記事が偏りが激しいのだが、それでも以下の記事は珍しくキチンと事実を把握した上での、とてもマトモな見解だと思う。

主張はあってもいいが、そのためにファクトを捻じ曲げてはいけないし、都合のいい切り取りはやめてほしいものです。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。