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花開くシビックテック。市民のためのテクノロジー活用で何が変わるのか?(後編)

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

先日は東京都が公開した新型コロナウィルスの情報サイトがなぜ爆速で公開できたのか、またそのソース自体がオープンソースとして公開されたことの意味合いを「シビックテック」の文脈で紹介しました。そしてその裏には、東日本大震災以降の9年間にわたる、関係者のたゆまぬ努力があったのです。

3.11以降、ITで自分たちにできることはなにか?を考え、行動にでたエンジニアが数多くいました。グーグル日本法人にいた及川卓也さんは「Hack for Japan」を立ち上げ、各地でハッカソン(有志が集まる開発イベント)を開催。現地の課題に向き合い、復興や生活支援に役立つアプリの開発などを行いました。

■シビックテック
福祉や環境といった社会的な課題を行政任せにするのではなく、市民自らがITを活用して解決していくという考え方。政府や自治体の側も地域のデータを市民が利用しやすいよう積極的に提供するオープンデータの姿勢を問われる。データ公開が進めばムダな業務が減り生産性が高まることも期待できる。米国が先進地だが、日本でも東日本大震災を受けて多くのエンジニアがアプリ開発やサイト運営など被災者の支援にあたったことが契機となり、地域が抱える課題の解決にITが有効との認識が広まった。代表的な担い手である一般社団法人コード・フォー・ジャパンは、地域のIT能力を向上させるため企業のエンジニアを派遣する活動などに取り組んでいる。福島第1原子力発電所の事故で住民が避難を迫られた福島県浪江町がタブレットを使って住民を支援するというプロジェクトにも関わった。

関治之さんは元々地図系の開発者イベント(ジオメディアサミット)を主催していたことから、震災時にすでにアクティブなコミュニティをもっていました。前編で紹介した「sinsai.info」は、Ushahidi(ウシャヒディ)というケニア危機やハイチ地震、ニュージーランド地震での被災者や情報提供者間の連絡手段として実績のあったオープンソース地図アプリケーションがベースになっています。拡散を得意とするTwitterと、集約を得意とするUshahidiが組み合わさり、強力なツールとなりました。

当時のsinsai.info は登録ボランティアが一気に200名以上のプロジェクトとなり、交通整理のための仕組み化、意思決定フローなどの整備が必要な状況でした。わたしはすでに本業では管理職で久しくコードを書いておらず、エンジニアとしては前線で貢献できる自信はありませんでした。仕組み化やワークフローやその他交通整理ならバリューが出せるかなと思い、お手伝いすることにしました。

「わたしにできることなんてないのでは?」と謙遜しまくった結果、オープンソースに貢献する機会を持てない方がいるのをよく目にします。今回、東京都の情報サイトに台湾の天才IT大臣オードリー・タンさんが修正提案したことが話題になっていますが、実は「漢字一文字」を直すというものでした。「どんな貢献でも役に立つ」ということを示してくれた彼女は、シビックテックにおいても模範的だったと思います。

関さんがsinsai.infoのときに語っていたことで印象的だったのが「4つのオープンマインド」でした。

1) Open Source
2) Open Data
3) Open Collaboration
4) Open to Global

特に1)については、活動自体がオープンソース文化に影響を受けていました。ゆえにトップダウンの意思決定ではなく、貢献度に応じたボトムアップでオープンな意思決定プロセスが採用されていました。年齢も本業での肩書も全く関係なくフラット。最年少の開発者は当時中学生でしたが、私の動きが悪くて怒られるようなこともよくありました(笑)。これらの経験は、いまでも仕事をする上でいきています。

また、4)も非常に重要です。世界共通のプラットフォームであることから、世界中からエンジニアが集まってきました。時差を利用して我々が寝ている間に機能修正をしてくれたようなことも。逆にこのときに改善したものを本体にフィードバックすることで、次回世界のどこかで災害が起きたときに活かされるという大きなメリットがあります。

つまり、この「4つのオープンマインド」に従えば、たとえ日本の地方の小さなプロジェクトであっても、世界に貢献できるということです。これって、とても素晴らしいことじゃありませんか?

コロナウィルスとの戦いはまだまだ続きそうですが、これを機会に多くの方がシビックテックに参加する「最初の一歩」を踏み出していただけたらいいなと強く思います。Happy Hacking!!

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タイトル画像提供:Rawpixel / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

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