専業主婦世帯は都市部に集中するも内情は苦しい
専業主婦世帯は田舎に多い。
そんな勘違いをしている人が案外多いのですが、専業主婦は圧倒的に都市部集中です。ここでいう専業主婦世帯とは、夫が就業者で妻が非就業者である世帯を指します。
そんな内容のグラフをツイートしたところ2000件以上のRTを頂きました。関心の高さがうかがえますので、今回はそれを詳しく記事化します。
グラフを見てお分かりの通り、地方は共働きの方が多い。
バブルの大きさは専業主婦世帯数を表します。なお、母数は夫婦のいる一般世帯なので単身世帯や片親世帯は含みません。
足して100%にならないのは、夫非就業+妻就業夫婦と夫婦ともに非就業及び就業形態不詳があるからです。夫婦ともに非就業世帯とは、主に高齢年金夫婦ですが、これを除いてしまっては、夫婦における共働きと専業主婦率を示すデータにはなりません。
高知だけが他と違うところにいますが…。
地方に共働きが多いというのは、よくよく考えれば当たり前で、明治民法以降「男は外で、女は家事」という夫婦規範は、主にその当時発達した雇用者属性にあてはまるもので、江戸時代から続く農家は、明治以降も共働きが当然でした。
現在、農業世帯は大幅に減少していますが、地方には農業の他、自営業夫婦も多く、東北地方に関しては三世代同居世帯によって、子育てを祖父母に任せられるという事情もあるでしょう。また、最大の要因は、地方はそもそも世帯所得の低く、旦那の稼ぎだけではやっていけないために共働きが多いという収入との相関も見られます。
では、夫婦の就業形態と出生率との関係はどうなっているでしょうか?
専業主婦の方が出生率が高いと漠然に思っていませんか?
それが逆なのです。
バブルの大きさは、2017年の合計特殊出生率の全国平均比です。青いバブルは全国平均より上、つまり、平均より子どもを多く産んでいるということ。反対に、赤いバブルは平均より下です。
これで見ると、兵庫と福岡を除けば、専業主婦率の高いエリアのほとんどが、出生率は全国平均を下回り、子どもをたくさん産んでいないということになります。
ただし、これだけを見て、都市部の専業主婦が子どもも産まず、楽をしているということではありません。
そもそも専業主婦世帯=夫が高収入であるとは限らないからです。
特に、第一子を生み育てる年代の多い30代においては、子育てのために妻が退職や休業を余儀なくされる場合もあるでしょう。子どもがほしくても、高い都市部の教育費のことを考えると、二の足を踏んでしまう心情もあるでしょう。
余裕があるから専業主婦なのではなく、ぎりぎりである場合も多いと思います。
30代の夫で専業主婦世帯の年収分布を表したのが以下です。子の有無は関係ありません。
専業主婦世帯の年収メインボリューム層は、夫年収400~600万円台です。地方であれば、この収入でもなんとかやっていけるかもしれませんが、都市部だときついはずです。
それでも、地方のように祖父母に頼ることもできず、結果論として仕方なく専業主婦を選択せざるを得ないケースもあるでしょう。
一方、地方は地方で、経済的事情や就業特性の事情により、子育てを優先したくても共働きをせざるを得ない状況に追い込まれることも多いでしょう。特に、これだけ地方で共働き夫婦が多いということは、専業主婦をしているというだけでいろいろと白い目で見られることもあるかもしれません。
都市部には都市部の、地方には地方ならではの悩みがあるということです。