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経済学の分野で盛り上がる、経済政策と公的債務についての考え方を見直す議論

近年、経済学の最先端の分野で、経済政策と公的債務についての考え方を見直す議論が盛り上がってきています。

それによれば、公的債務は必ずしも悪いものではないということです。逆にいうと、むしろそこを警戒しすぎて“too little,too late”な政策をやっているとなかなか経済は戻らないのではないかという考え方です。

オリビエ・ブランシャールとローレンス・サマーズという世界的に有名な経済学者が2019年に出版した『経済学の進化か革命か』(MIT出版局)という本に次のようなことが書かれています。

最低でも(略)政策は、事前においても事後においてもより積極的になるとともに、金融、財政、金融規制政策のバランスを再調整する必要がある。低い中立金利は金融政策の対象範囲を狭める一方で、財政政策の対象範囲を広げる。このバランスの再調整を進化としよう。しかし、仮に中立金利がさらに低くなったり、金融規制が危機を防ぐには不十分であると明らかになった場合には、より大きな財政赤字、金融政策目標の修正、もしくは金融制度に対するより厳しい規制といったさらに劇的な措置が必要となる可能性がある。これを革命としよう。いずれ明らかになるだろう。

これはコロナ・ショック前の言及ですが、いみじくもこのような環境になることを予測していたかのような一文なのではないでしょうか。

「経済政策は、事前おいても事後においてもより積極的になるとともに、金融、財政、金融規制政策のバランスを再調整する必要がある」ということです。経済を活性化、つまりてこ入れするには、金融政策と財政政策の二つがあります。

その場合、財政政策は政府の借金を増やし、効率的に使われるとは限りません。そのうえ迅速に対応できませんいので、金融政策をメインにやるべきだというのが、経済政策についてのこれまでの一般的な考え方でした。

さらに「低い中立金利は金融政策の対象範囲を狭める」とあります。これについてはアメリカよりも日本やヨーロッパがより深刻です。日本は財務省が財政緊縮的な考えですし、ヨーロッパもドイツが財政緊縮的な考え方で、財政はあまり出さずに金融緩和に依存し続けたわけです。だから結果的に、金融緩和の余地がなくなってしまったという見方もあります。

中立金利というのは、その国の経済に対して緩和でも引き締めでもない中立的な金利水準のことです。日本やヨーロッパでは、経済に対して中立的な金利水準は大幅なマイナスになっています。

そうなると、こうした状況では金融政策には限界があり、財政政策で中立金利をプラスにもっていかないと金融政策が十分に効きにくくなります。そのような状況になってきているため、この局面ではむしろ財政政策の重要性が高まっているという考え方に変えなければならないということなのです。

今回のコロナ・ショックでは、まさに財政政策が非常に重要であり、特にアメリカは迅速に大規模に行っています。最先端の経済学者が1年くらい前からいい始めてきていたことが、現実問題としていみじくも出てきてしまった構図です。

いずれにしても、この局面ではコロナ・ショックの克服を最優先して、金融緩和でも財政出動でもできることはやって、とりあえず経済を立て直すことが重要になってくると思います。

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