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真のリーダーとは?思いやりのマネジメントが企業を変革する。

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

長引く在宅勤務もあり、自身のリーダーとしてのあり方について考え直すことも増えました。リーダー論についての書籍は世の中にあふれていますが、なかなか自分にしっくりくるものが見つからないという方も多いのではないでしょうか。

基本に立ち返るという意味で参考になるのは、名著と呼ばれるD・カーネギーによる『人を動かす』でしょう。初版が1936年の自己啓発書が、改訂を重ねながらも今も読みつがれていることに驚きます。内容は当たり前のことのように見えますが、実例とともに紹介されているので「自分にもできるかもしれない」と思わせる力があります。最近では中田敦彦さんのYouTube大学で取り上げられたことから、新たな読者も増えているそうです。

日経電子版を見ていたら、ベストセラーである『嫌われる勇気』の著者である岸見一郎さんの新刊の紹介記事がありました。

どんな仕事でも部下に任せることにはリスクが伴いますが、リーダーは部下を信頼しなければなりません。その上、部下が失敗したら、その責任は上司が取らなければならないのです。

アンフェアだと思う人がいるかもしれませんが、そもそも部下が失敗するのは上司の指導が適切ではないからです。部下の資質に問題があると思いたい人はいるでしょうが、リーダーはそう思ってはいけないのです。

これを読んだときに即座に思い出したのが、今の会社に転職する際にCEOのジェフ・ウェイナー(現在は会長)と交わした会話でした。

当時はまだ転職するかどうかを決めかねていましたが、いろいろな職種の社員の方と話しているうちに「いい会社だな。楽しそうかもな」とは思っていました。ある程度話が進んできた段階で「CEOのジェフが話したいと言っているから、サンフランシスコまできてくれないか」と言われ、航空券が送られてきました。私もシリコンバレー界隈でのジェフの噂は聞いていたので(いわく、マインドフルネスを経営に導入した、マネジメントには思いやりが必要など、私の知るシリコンバレーカルチャーとはかなり異なるもの)、完全なる興味本位で有休をとりアメリカまでひとっ飛びしてきました。

話自体は非常に盛り上がり、終盤には完全にジェフに惚れはじめていました。当時の私の英語力はまぁひどいものでしたが(いまでもネイティブには程遠いですが……)、彼はわかりやすい簡便な語彙を使いながら、ゆっくりとわかるように話してくれました。ときには私の英語を添削しながら(笑)。そしてわたしは、ぜひ聞いてみたかった質問をジェフにしたのです。

「ジェフは思いやりのマネジメント(compassion management)が大事というけれど、それは具体的にはどういうこと?なぜそれが必要だと思ったの?」

すると彼は、もともとは自分のリーダーとしての失敗体験から学んだんだと話し始めました。

「昔の自分はとても傲慢だったんだ。仕事には自信があったし、評価されていた。だからチームに自分のコピーをつくれば、素晴らしい成果が出ると考えていた。でも、1年後には自分のスタッフはみんな退職してしまったんだ。このときに、自分はもっと一緒に働く人々の立場に立って考えなければいけないのだ悟ったんだよ。つまり、もっと他人の視点や考え方を通して物事を見る必要があり、もちろん指導できるところは指導すべきだが、なによりスタッフの強みを生かすとともに、スタッフがやろうとしていることを真に理解する必要があるんだ。それは不安感や弱さの原因が何なのかも理解する必要があるということだ。共感と思いやりはしばし混同されるが、思いやりは行動が伴う。相手の困難な気持ちを理解した後で、そこから少し距離をとり、相手と一緒にその困難を乗り越える行動を起こすこと。これが、思いやりのマネジメントなんだよ。」

あー、これが本当のリーダーなのかもしれない。これまでに話した社員のリーダークラスの方からも、まさにこの思いやりが感じられました。ジェフはこのマネジメント手法を体系化し、会社の仕組みとしてグローバルなスケールで実現しているんだ。自分もそんなリーダーになりたい!と思った瞬間でした。

帰りの飛行機の中では、ほぼ腹は決まっていました。その後ほどなくして、350人ほどの統括部を管掌する東証一部上場企業の執行役員を退職し、社員18人(当時)しかいない日本法人の代表に転職しました。オフィスの広さは、前職の自分の部屋とほぼ同じでした。でも、ワクワクの大きさは、遥かに大きいものでした。

ジェフのマネジメントに対する考え方をまとめたeラーニングが、LinkedInラーニングにまとめられています。興味を持った方はぜひチェックしてみてください。


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タイトル画像提供:kikuo / PIXTA(ピクスタ)

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