脱炭素社会にシフトするヨーロッパと、未だ模索する日本。欧州から見た環境系イノベーションのトレンドとは。
ヨーロッパの出張から戻ってきてもう1ヶ月ほど経ってしまいました。帰国後はSmart Cities プログラムのDemo Dayや、Plug and Play Japanの5周年などがあったのですがその話はまた別途。
今回のヨーロッパ出張は、パリで行われたVivaTechを中心に、アムステルダム(オランダ)、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、ベルリン(ドイツ)のスタートアップエコシステムのプレイヤーとの意見交換や、様々な施設の見学などが目的でした。
VivaTechではブースを出しているスタートアップや大手企業の展示からテクノロジーのトレンドなどが垣間見えますが、やはり今年はエネルギー問題が多いように感じました。例えばSNCF。これはフランスの国鉄ですが、デジタル化はもちろん環境に配慮した新車両のモデルもお披露目されました。(個人的には運び込んで組み立てる様子の早回し動画が好きです)
他にも植物を育てるポッド(3年前もありましたが遥かにコンパクトに、そして効率化されていました)やエネルギー関連企業も楽しんで”エネルギー”について学ぶ場所を提供するなどしていました。そのくらい自分達の日々の生活に関係し、皆が考えていかなければいけない問題です。
エネルギーといえば、直近ドイツで開かれたG7サミットでは、昨今の気候変動やロシアによるウクライナ侵攻を受けてエネルギーの脱炭素化が大きな焦点となりました。なかでも独・ショルツ首相が提案した、産業部門に焦点を当て新興国も巻き込みながら気候変動対策を進める「気候クラブ」の設立合意は一つの成果と言えるでしょう。
一方で、上記の通り日本が反対したことで最終案には数値目標は明記されず、日本の気候変動に対する後ろ向きな姿勢が改めて印象づけられたのではないでしょうか。
欧州は「気候クラブ」の設立含めて脱炭素政策に積極的な一方で、日本は慎重な姿勢を崩さないのか。そこにはルールメイキングを主導することで、気候変動という避けては通れないピンチを域内の産業活性化のチャンスにつなげようとする欧州の思惑があると言えます。
それに対して日本には様々な要因があると言われていますが、一つに電源の脱炭素化が進めづらい点が挙げられるそう。欧州ではフランスや英国が主導して再び原発を活用する動きが活発になっている一方で、日本では東日本大震災での事故を受けて国民の反発も根強く、再稼働に関する真正面の議論は避けられています。岸田総理は14日の会見で「この冬は最大9基の原発の稼働を進める」とお話しされたようですが、記事にもある通り再稼働に向けては政府は本気度が問われるでしょう。
このような状況下で2050年のカーボンニュートラルに向けて、日本はどのようなアプローチを取ることが必要なのでしょうか。政府の取り組みはもちろんですが、企業の取り組みも重要になってきます。その中でもスタートアップのテクノロジーが注目を集めています。ヨーロッパでも多くのスタートアップが政府と大手企業の支援を糧に急成長しており、それらすべてを網羅するのはなかなか難しいのですが、カーボンニュートラル達成に向けたスタートアップテクノロジーと大手企業協業事例をまとめたこんなeBookをPlug and Play Japanで作成しました。
カーボンニュートラル達成に向けて、スタートアップが果たす役割はとても大きいと考えられます。例えば化石燃料に替わる水素燃料についても、製造から貯蔵、運搬、利用に至るまで、業界を横断したバリューチェーンの構築が必須となります。大企業、スタートアップ、業界を問わず協業の機会を探していくことが重要となってきますが、変化を起こすために必要なのはスピードと新しい価値を創出していく力です。カーボンニュートラル達成に向けて、取り組みが加速していくことで一歩ずつ近づくことを期待したいですね。
それにしても今回の滞在中、40度になる日も。記録的な熱波に見舞われているヨーロッパ。脱炭素につながるテクノロジーへのニーズが、これを機にさらに高まっていくのではないでしょうか。