利権に群がる政治家と我利業者が少子化を加速させる
久しぶりに呆れたニュースを見た。
毎年のように「今年がラストチャンス」とか言っているんだが、閉店セールといいながらいつまでも閉店しない店みたいなことしている場合か?
出生数が増えないことは、1990年代後半からゼロ年代頭にかけて第三次ベビーブームが来なかった時点で確定している。一人当たりの母親が産む子ども数が減っていないのに、全体の出生数が減り続けているのは、そもそも産む母体の数の減少「少母化」によるものであり、ラストチャンスというのなら、それは2005年までにやるべきことであった。
可能なのは、出生数の減少をできるだけ抑えることくらいで反転などは絶対にできない。それとも政府は一人当たり最低5人産めとでも言うのだろうか?
政府が今なすべきは、この不可避な少子化及び逆三角形型の人口ピラミッドを前提とし、どう国の運営を適正化してくかという現実に向き合うことではないか?それとも何年たってもずっと「ラストチャンス」と言いたいのか?
上記はほぼそのままヤフーのエキスパートコメントとして書いたが、2600件以上ものいいねボタンが押されている。このコメントは政治家もマスメディアもよく見ているものなので、ぜひいいねボタンをたくさん押してほしい。
これ以前にも、世間が呆れかえったものに例の「子育て支援金」の問題がある。
あれこそ、少子化対策という誰も反対できない錦の御旗を悪用して増税(国民負担増)につなげるやり方であり、こんなことをいつまでも続けていたら、婚姻も出生も激減し続けるだろう。
加えて、ぜひ今子育て中の世帯の人たちにも認識してほしいのは、こうした負担増は、今生まれてきている子どもたちの20年後に彼らを大いに苦しめる地雷の敷設に等しいということである。国民負担率60%超えるんじゃないの?
そうしたことを、私の記事を今まで読んだことがない人にもわかっていただくように丁寧に書いた記事をプレジデントに出しました。ぜひご一読いただきたい。
ちなみに、子育て支援では出生率が増えない証拠はいくらでもあるのに、絶対にマスメディアはそれを伝えない。それどころか子育て支援をすれば少子化解決などと嘘をいう有識者ばかりを重用する。
日本では、家族関係政府支出GDP比は対1995年比で2倍増にまで拡充されているのに出生数は逆に4割減。韓国も2006年以降だけでも合計28兆円の予算を投入したにもかかわらず2023年出生率0.72まで下げ続けている。日本の1.7倍の予算を投じているフィンランドも2023年出生率は1.26。フィンランドの専門家ですらその有効性はないと断じている。
子育て支援の充実は否定しないが、それだけだと結局「裕福な層しか子どもを持てなくなる」のである。
実は、政治家も官僚も無知ではないので、子育て支援が少子化対策にならないことなんて百も承知である。
2008年の会計検査院がもうすでにそれを指摘しており、「児童手当なんかバラマキしたら、新たな出生増には使われず、今いる子の教育費に回されて、逆にこれから出生する層への経済的・心理的ハードル(子育ては金がかかる)をあげる逆効果になる」と予言警告していたのに、案の定その通りになっている→言っておくけど、その逆効果を加速させたのは当時の民主党政権だからね。
では、なぜ効果のない政策をやり続けるのか?
自民党も最初は、野党案潰しの選挙対策としてやっていたんだろう。どうせ野党は少子化対策でバラマキしろと言ってくるわけだから、与党としてバラマキますと言えば、それで封じられるから。
しかし、異次元の少子化対策をぶちあげて以降、政府はあることに気付いたのだ。
それは「少子化対策といえば、静かなる有事だと恐怖訴求すれば、ラストチャンスと煽れば、簡単に増税できる」と。これに政治家も官僚も味をしめてしまった挙句がこのありさまなのである。
同時に、つけた予算に群がる利権我利業者も笑いが止まらない。こども家庭庁が言い出したベビーシッター優待券なんてあからさまな利権誘導だ。
勿論、中にはちゃんとした業者もいることは否定しないが、バラマキ予算をつけた分、それ以上巻き上げられる仕組みの中で、その中に業者の利益(と政治家のキックバックもか?)がどこぞのブラックボックスの中でチャリンチャリンと計上されている。だったら最初から取らなければいいことなのに。
当然、効果検証などやぶへびなことは絶対にしない。
そもそも、こども家庭庁のHPに掲げられている「こども未来戦略方針」のリーフレットがまったくなっていない。内容の問題以前に、書いてあることの整合性がまったくとれていなので、こんなん普通の会社で書いてきたら却下もの。
ポイントのいの一番に書いてある「若者・子育て世代の所得を伸ばす」はいいとして、その下にある具体的プランになると、「児童手当」「高等教育」「出産」などの部分しか書いておらず、肝心の若者(これから結婚・出産を迎えるだろう独身の若者)の所得を増やす施策など何一つ書かれていない。
何度もいうように、出生減とは20代が20代のうちに結婚できない問題であり、20代の中間層が結婚できない問題であり、出生率が低下しているのは20代だけであるがゆえの問題なのである。韓国がやべえのも同じ問題だし、フランスが下がっているとはいえかろうじて1.6の出生率にとどまっているのも20代の出生率が高いから。プレジデントの記事にグラフを掲出しているのでご確認いただきたい。
若者の所得を伸ばすということは、まだ子のいない若者に対して「大丈夫」と思わせられる大きな心理的チカラになる。逆にいえば、ここを頑なに無視し続けているから、裕福な層しか子どもを持てなくなり、かつての中間層ばかりが未婚と無子になっているのだ。
伊藤忠商事の女性社員の出生率があがったとかどうでもいいんだよ、そんなことは。平均給料1600万円もあれば、そら結婚できるでしょう、子ども産めるでしょうよ。
別に、結婚推奨したいわけでもないし、強要するつもりなどさらさらないが、少なくとも結婚したいのにできないという不本意未婚(20-34歳)が4割もいるという状況のうちの半分はお金が解決できる問題。しかし、それはバラマキでは解決しない。自分の力でなんとかなると思える手取りがあるという実感が大事なのだ。
物価高の中、賃上げだけでは実質賃金向上にならない。しかし、それでも税金や社保料を減免すれば若者の手取りは増える。政府ができることはそっちの方向で、それこそが実は少子化対策なのである。