米食シフトに伴う食料自給率上昇の可能性
食品値上げ、店頭価格に浸透9割 物流費や原材料高騰で: 日本経済新聞 (nikkei.com)
シカゴ市場の小麦・トウモロコシ・大豆の先物価格は今月に入って前年比でそれぞれ5割、3割、2割以上上昇しています。背景には、穀物の主要供給元であるロシアとウクライナの軍事衝突があります。特に小麦に関しては、ロシアが世界最大でウクライナが第五位の輸出国であり、この二か国だけで世界の小麦輸出の4分の1以上を占めてきました。
こうした中、日本の小麦輸入は政府によって一元的に行われ、政府が決めた売り渡し価格で国内メーカーに売り渡される仕組みになっています。そして規定に基づけば、2022年4月の小麦売り渡し価格は17%程度の上昇となります。しかし、この価格は3月第一週目までの半年間の輸入小麦価格を基に算出されていますので、まだウクライナ戦争の影響はほとんど織り込んでいません。このため、仮に足元の小麦先物価格とドル円レートが横ばいで推移すると、ウクライナ戦争の影響が本格的に織り込まれる今年10月の価格改定時にはさらに4割以上の価格上昇となる可能性があります。これは、直近ボトムの2020年度後半対比2倍程度の売渡価格になることを意味します。
これまで最も小麦売り渡し価格が上昇したのは2007年10月に+10%、2008年4月に+30%、同10月に+10%と立て続けに上昇した時となります。そして、2007年から2008年にかけての平均世帯の食料費年間増加額は、二人以上世帯では0.5+0.6=1.1万円、勤労者世帯に至っては1.1+0.8=1.9万円も増えました。このため、今後の展開次第では、足元の穀物高は来年にかけて2007~2008年時以上に家計の購買力を圧迫することになりそうです。
このように、景気不透明感の高まりや原材料コストの上昇等により、消費者には値上がりしたものは特売を狙って購入する等の防衛策がさらに見られるでしょう。また、保存しても腐りにくい値上げ決定商品については、前倒し購入が進むと考えられます。さらに、コストを節約した安くて質のいいプライベートブランド商品へのさらなるシフトも見られるでしょう。その他、各種ポイントや 100 円ショップの活用、携帯電話の料金プラン改定、車の積荷を減らす等で燃費を節約するなどの行動が予想されます。
更に、値上がりしていない食材への需要シフトも見られるでしょう。特に、健康のためにも節約のためにも、米を中心とした和食にシフトすることが予想され、消費者の米や米商品に対する関心は高まるでしょう。実際、穀物価格が高騰した2007~2008年にかけて、食料自給率は一時的に上昇に転じました。今回も価格が上昇する輸入小麦に代えて国産米粉が見直され、米粉などの加工品の需要が拡大すれば、国内農業ひいては地域産業の活性化にもつながることが考えられます。
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