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セガの"アングリーバード"1,000億円買収から見える、IPの再利用価値とは?

こんにちは、MintoのCEO 水野です。SNS・Web3領域で漫画・アニメ・キャラクターなどをクリエイターと共に創っています。[会社紹介はこちら]

今回は、セガの"アングリーバード"買収についてのコラムです。


ピンとこない?セガのアングリーバード買収

先週、セガが「アングリーバード(Angry Birds)」の開発元のロビオ・エンターテインメントを買収するというニュースが話題になりました。

気になるのは、上記の記事内にもありますが、市場とアナリストの評価。

17日のセガサミーの株価は一時、前週末比6%(163円)安の2500円まで下げた。先週末にロビオ買収に関する一部報道が出たことで、「アングリーバードは10年以上前に発表されたゲームで、すでにピークを過ぎているというイメージが投資家にある」(東洋証券の安田秀樹シニアアナリスト)という。

アングリーバードは、2009-2010年ごろ、全世界のAppStoreを独占し、子供から大人まで多くの人が遊んだゲームでした。僕も、同時期に(株)テクノードというスマホゲーム会社を経営していたので、リリース当時は日本でもヒットして、皆で競って遊んでいたのをよく覚えています。(*ちなみに、2010年に日本で最もダウンロードされたゲームは、テクノード社の「Touch the Numbers」ですよ笑)

アングリーバードは、ゲーム自体は、数年で飽きられてしまい、売上も下がり、2014年には800人規模の従業員のうち130名のリストラ、CEO交代……となってしまいました。

それゆえ、その当時、スマホゲームを遊んでいた日本人の感覚からするとアングリーバードは、スマホ初期にヒットした懐かしいゲームの一つくらいの印象だと思いますし、その観点で見れば、セガがロビオを買収することもピンとこないと思います。

コンテンツ・ヒットからIPになる過程と、その難易度

実際、ロビオが凄かったのは、ゲームの枠を超えた展開で広げることが出来たからです。ゲームが流行ってから1-2年、つまり2011-2012年ごろ、アングリーバードはゲームの枠を超えた形で、さまざまなグッズ(ぬいぐるみなど)にライセンスされていました。

アングリーバードの鳥のキャラクター達は、世界中の子供達やティーンエイジャーにバカ受けしたのです。2012年ごろはアメリカでもアジアでも、正規品・海賊版を含めて、さまざまな国で、アングリーバードのグッズを見た記憶があります。キャラクターの造形的に日本では全くというほどキャラとしては流行りませんでしたが笑

https://www.angrybirds.com/

そして、アングリーバードは、ゲームの売上が完全に落ちた、2016年に映画化されます。

僕も含めて多くのスマホアプリ業界関係者は「アングリーバードなんて、もうピークが過ぎたゲームだし、絶対ヒットしないよね」と思っていたと思いますが、その予想を翻し、3.5億ドルのヒット作品となり、第2弾も制作されました。

多くの人の愛され、記憶にしっかりと刻まれていれば、映画のようなコンテンツで再び価値が高まるんだ…とその当時びっくりした記憶がありますが、直近の映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」や、昨年の映画「SLAM DUNK」のヒットは、まさにそうでしたよね。

いずれにしても、キャラクター/IPの力を信じてやり続けたロビオは、この映画のヒットをきっかけに、再びアングリーバードのグッズ・ライセンスを復調させ、さらに関連/シリーズのゲームも作り、しっかりIPブランドを作り、保ち続けたことで、売上が安定していったように思います。

この辺りの詳細は、中山さんの記事で把握することができるので是非ともご覧ください(今回のM&Aを予測したのではないかと思うくらい素晴らしい記事です)。

ロビオは2017年に上場しているのですが、株価も、この3年くらいはじわじわと上昇傾向にあったようです。

日本でもスマホ初期には、パズドラ、モンストなどヒットしたゲームがありますが、IPとしてのゲーム以外での事業展開力は、アングリーバードが際立っているかと思います。

新しいIPは生まれにくい? 相対的に高まるIPの価値


今回のセガのロビオ買収には、このようなIPとしての再利用価値・将来価値を織り込んだ部分があるのではないかな?と思います。

スマホゲーム後も、YouTube、TikTokなど多くのメディアから、さまざまなIP・キャラクターが生まれていますが、インターネット発で、アングリーバードほどの規模になっているIPは非常に少なく、相対的な価値は高いと思っています。(YouTube発の幼児向けアニメ CocomelonBabyBusあたりがその後釜かもしれませんが。)

特にこの数年は、メディアもコンテンツも分散しすぎていて、多くのコンテンツが生まれては消える時代になっています。また、NetFlixやAmazon Primeなどの配信プラットフォームでは、新コンテンツと旧コンテンツを並列に楽しめてしまう時代です。こういった時代的な背景を踏まえると、IPとして多くの人に認知されるような大ヒットコンテンツが生まれにくくなっているかもしれないな、と思います。

アングリーバードは、10年経過した事で劣化するのではなく、むしろIPとしての価値を今後増していく可能性があると思います。IPとして拡大し10年持てば、当時10代だったティーンエイジャーは、20代の大人になり、手にする商品が変わり、再度グッズを購入してくれます。再び映画になれば見てくれるかもしれません。さらに子供向けの商品があれば、自分の子供にそれを買い与えて、結果的にそのIPが子供達にも浸透していきます。

ライセンス業界ではIP化への最初のハードルを"10年"という方も多いです。そういう意味ではスマホ市場が立ち上がってから10年たち、スマホ世代向けの代表的なIPのポジションはアングリーバードだった、とも言えるかもしれません。

スヌーピーやハローキティは、3世代で愛されるキャラクター/IPですし、時間が経過すれば経過するほど、他のIPが追いつけない付加価値がついてくると思っています。

今後、セガ社のグループ入りした後のアングリーバードの展開が楽しみです。

今回は、「セガのロビオ社"アングリーバード"買収から見える、IPの価値とは?」について書いてみました。

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