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英“合意なき離脱リスク”が増大

ジョンソン首相の新たな期限設定や、協議打ち切りも辞さないとの警告、また合意なき離脱が英国にとって「望ましい」との主張や、離脱協定を一部無効化する同国の法案発表を受け、英・EU関係のトーンは悪化している。合意なき離脱リスクが増大化しており、警戒が必要だ。

とはいえ、合意なき離脱リスクを回避するのではないかとする理由もある。第一に、過去にも合意が疑問視されながら、最終的に達成された事例があること、である。ジョンソン首相が2019年10月、北アイルランドと英本土間の海上の通関境界線を実質的に認め、アイルランド問題を巡る膠着の打開に同意したことがある。二度あることは三度ある、だ。

第二に、英国は政治、経済の両面で合意の必要に迫られている。新型コロナ危機への対応や、大学入試に関する問題、さらにはスコットランドの新たな独立の動きを巡り、多くの圧力にさらされており、合意なき離脱は避けたほうが望ましい。英国の経済環境は厳しいままでもある。

第三に、EU側にも事情がある。EUにとって漁業や国家補助といった重要問題では、ある程度、譲歩する用意をEU側が仄めかしている。

第四に、企業のブレグジット関連の備蓄や余裕資金が新型コロナ危機への対応で減少しているとみられることだ。今年の事態の混乱にはさほど用意ができていないところへ合意なき離脱は問題が大き過ぎる。

合意も、合意なき離脱も現時点で五分五分、どちらに転んでもおかしくはない情勢にあることで、少なくともイギリス関連資産への投資にはこれまで以上に注意が必要である。リスクは大きいのに、様々な政策で不感症になっているマーケットに、久方ぶりに本格的なリスクとなるやもしれない。

そうしたリスクを見極める上で、これから重要になるのは今月半ばの国内市場法案の通過、24-25日のEUサミット、またジョンソン首相が合意か「決別」かを決める最終期限と自ら宣告している10月15日のサミット、である。注目しておきたい。


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