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「アイデアは二束三文、でも価値は無限大」

私は過去10年くらいベンチャーキャピタリストの仕事をしてきているので、沢山のビジネスプランを見てきました。ANOBAKAが面談する起業家は月間60社程度なので、ざっくり年間700社程度を10年間続けたことになります。

それほど沢山の新規ビジネス案をディスカッションし続けて思うのは”アイデアは二束三文だ”ということです。この言葉は私のビジネスの師匠でもあるKLab株式会社の真田会長に何度も言われたことですが改めてその意味が理解できてきました。

それが最も分かっていただけるのが”類似アイデア起業は常に同時多発”ということでしょう。つまり同じようなアイデアで起業する人が同時に多発するという現場を沢山目撃してきました。

具体例としては、直近delyが上場しましたが、

スマホ料理動画でクラシルが一世を風靡するとその後登場したのが”スマホ動画✕〇〇”というビジネスジャンルです。あの時期バーティカルのスマホ動画サービスの起業が相次ぎました。

その他にも印象的だったのは副業プラットフォームの同時多発です。
クラウドワークスやランサーズがクラウドソーシング市場を切り開いた結果、副業のプラットフォームに関連したスタートアップが相次ぎました。
ANOBAKAとしてはその中の1社であるシューマツワーカーに投資実行し、結果的にクラウドワークスにM&Aとなりました。

またオンラインフィットネスの同時多発もありました。これは恐らく米国でペトロンが急成長していたことが起業家予備軍のアンテナを刺激したことよるものだと思います。ANOBAKAとしてはその中の1社であるSOELUに投資実行しました。SOELUはその後も順調に成長し業界のリーディングカンパニーとして成長しています。

その他にもD2C、クリエイターエコノミー、インフルエンサーマーケ、ファンDAOなどなどスタートアップが同時多発した現場を目撃してきました。
最近だとタイミーのバーティカル版など最も増えているジャンルの一つと言っていいでしょう。

起業家予備軍で「何かビジネスアイデアで勝負したい!」と思っている人は常に起業ネタを情報収集しているので、何かしらネタになるニュースがあればその人達のアンテナに引っかるタイミングも同時なのでこの同時多発現象が起こるのだと思います。

ただその結果、過去の同時多発現象の中で結果的に成功している会社は1-2社に絞られていきました。ビジネスにおいて成功要因はファウンダーの情熱、エグゼキューション能力、資金調達力、採用力、運など総合格闘技要素が大きいです。
そのため同じアイデアで起業していても成功するスタートアップとひっそりと撤退するスタートアップの違いが生まれます。同じアイデアなのに。。


アイデアとは

これまでアイデア自体はそれほど価値がないという話をしてしまいましたが、それでもビジネスパーソンの中には自分の企画力を伸ばしたい!と思っている人も多いと思います。
アイデアというものは実は2種類存在していて、それは”0→1型””掛け算型”というものです。
0→1型アイデアとはまだ世の中にまったくない価値観を創出する類のものです。自分の感性・センスを信じ、現時点で市場になくても、誰から批判されてもその感性から生まれるプロダクトアイデアは価値があると信じて生まれるのが0→1型アイデアです。アートな側面もあります。
古くはsonyのウォークマンや自分の家をホテルにするairbnb、ドコモが手掛けた世界初のモバイルインターネットプラットフォームであるiモードなどはこの0→1型アイデアなのかなと思います。
この0→1型アイデアは市場を切り開いていく必要があるので難易度が高いのが特徴です。ただ一方で成功した時にはファーストペンギンとして大きなリターンも期待できます。

一方、世の中のほとんどのアイデアは掛け算型です。起業したいですとプレゼンしてもらってもほとんどが掛け算型です。
情報と情報をかけ合わせて新たなプランを創出する掛け算型のアイデアは特別な才能がなくても誰でもできるものだと思います。
個人的にもこの掛け算型アイデアは割と得意にしていて、僕みたいに才能のない人間でもできているので皆さんもできると思います(笑)

せっかくなのでこの掛け算型アイデアのエッセンスを紹介できればと思います。とある情報と情報をかけ合わせてアイデアにするといってもその組み合わせは無限です。


「ニュース」✕「自社の課題」
「同僚との会話」✕「ニュース」
「日常生活の不便」✕「自社の技術」
「海外のサービス利用」✕「自社顧客の課題」
「読書」✕「ニュース」etc

こんな感じで掛け算しようとした場合の組み合わせは無限です。
掛け算型のアイデア創出が得意な人は常に縦横無尽に点と点をかけ合わせる思考を意識しているので自然にアイデアが生まれやすいのだと思います。

勘違いしがちなのが机の上で1時間くらい「う〜ん」と悩んでいてもアイデアというのはあまりでないものです。そして、「自分は企画力がない…」となってしまうパターンです。
掛け算型のアイデアには思考量は絶対的に大事で、ちょっと業務で1時間考えたくらいでは出ないものです。お風呂入ってるときでも通勤中でもTVを見てても寝ても覚めてもいかにビジネスのアイデアに繋がる思考を頭の片隅に残しているか?この思考時間の絶対量が掛け算型アイデアがどんどん生まれる人と生まれない人の差だと思っています。

最後に個人的なティップスをお伝えしたいと思います。個人的にはランニング中が一番アイデアがでる時間です。過去私がやってきた中で良かった企画やビジネスアイデアはほとんどランニング中に生まれたものです。ランニングしながら頭をクリアにして余計な情報を遮断した状態でアイデア出しするのもおすすめなのでぜひ試してみてください。


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