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20代のうちに3回社内転職をするというキャリアオプションについて

皆さん、こんにちは。

今回は「社内転職」について書かせていただきます。

昭和の高度成長期に始まった工業化社会の時代は、結果として、終身雇用や年功序列、そしてメンバーシップ型の雇用慣行を日本に深く根付かせました。それが1980年代までの日本の成長を支えたことは事実です。しかし、バブル崩壊以降のいわゆる「失われた20年」、そしてリーマン・ショック以降、世界の中での存在感をより失った10年の合計30年間には、そうした雇用慣行が大きなブレーキとなってきました。メンバーシップ型雇用の下で、総合職として採用され、職種や勤務地も会社都合に左右されることが当たり前だったため、個人の自由意志でジョブ型のキャリア形成をしていくことも不可能でした。その時代に求められたのは、完成された組織における「忠実な運用担当者」でした。今も多くの業界でその名残はありますが、定型的な業務に小さな工夫を加えて運用していく仕事は、徐々に付加価値が下がり、業務の時間当たり単価は低下しています。
これからの時代は、完成されたビジネスモデルを粛々と運用していく「運用する人」の時代ではなく、絶えずPDCA(Plan・計画→Do・実行→Check・評価→Action・改善)を回し、新たなビジネスモデルを試行錯誤しながらつくり上げていくという「仕組みをつくる人」が求められる時代になります。

引用させていただいた記事の中には、これまでは『メンバーシップ型雇用の下で、総合職として採用され、職種や勤務地も会社都合に左右されることが当たり前だったため、個人の自由意志でジョブ型のキャリア形成をしていくことも不可能』で、『その時代に求められたのは、完成された組織における「忠実な運用担当者」』だったとあります。

その通りだと思いますが、メンバーシップ型ならではのメリットは今でもまだ存在していると考えます。ジョブ型雇用というワードがバズワード化している今、メンバーシップ型はもう古いという論調になりがちですが、柔軟に職務の幅を広げて様々な職務経験を積むことで、人材は大きく育っていきます。配置転換や異動に関しては、本人の希望による手挙げ制のものから、会社によるジョブロ―テーションを促すものまで幅広くありますが、特に新卒採用を中心としたポテンシャル採用に注力し、中長期にわたって人材育成を一生懸命行う会社ほど社内で人材流動性を高める仕組みが必要です。

サイバーエージェントは若手抜擢を非常に重要視している会社ですが、先日、社内で「幹部候補をもっと増やすにはどうしたら良いか」という議論において、『20代のうちに3回社内転職するという考え方を持つといいよね』という話になりました。
ここでいう“社内転職”とは、単純な「部署異動によるキャリアチェンジ」だけでなく、「ミッションチェンジ」、抜擢や昇格などに伴う「担当領域の変更(拡大)」などを指します。

当社の場合は辞令のような形で、本人意向を確認しないままいきなり異動になるということはありませんが、辞令を発令している会社においては、異動自体を前向きに捉えない人が多いのかもしれません。「せっかく今の業務に慣れたのに」、「異動先の部署は雰囲気が良くなさそう」、「自分のやりたい業務ではない」など、新しい環境に身を置くことには最初は誰もが抵抗を感じるものです。

私自身はIT業界の中でも業界屈指の変化量の多い会社でこれまで過ごしてきましたが、
① 業務内容の変化
② 役割の変化
③ 働き方の変化
など多くの変化にぶつかる中で、“自分で変化の波を作り、変化の波に乗る”ことを意識してきました。

一つの事例としての紹介になりますが、私の場合は、業務内容の変更も伴う大きな「部署異動」は、2004年に入社して以降合計7回あり、20代だけで3回あります。異動に伴う「職種や役割の変更」もさることながら、これまで「抜擢」の機会もいただき、昇格は5回、グレードは変わらなくても子会社の代表取締役や本体執行役員などの新しい役職や役割をいただいたものも含めるとさらにプラス5回と、とにかくずっと変化の中に身を置いてきました。

ここまでずっと変化し続けていることでのメリットを一つ挙げるならば、「成長角度があまり落ちない」ということです。

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上図のようなサイクルを、だいたい2年周期くらいで回せると、仕事に慣れ始めて停滞期に差し掛かった頃にまたゼロベースで新しい経験を積みに行くことになるので、成長角度がほとんど落ちません。

「今の自分はリスクをとれているか」。これを常に自問自答するようにしています。

成長スピードが遅くなっているのではないかとか、停滞期に差し掛かっているのではないかとモヤモヤしている人ほど、リスクをとって環境を変えたり、新しい役割を持ったり、ちょっと無理してチャレンジングな目標設定をすることから始めてみるといいかもしれません。

特に20代のうちに変化をたくさん経験してきた人ほど、仕事の幅が広がり、新しい経験や能力を身に着けられる可能性が高まります。ただ、大事なのは、必ず成果物やアウトプットを出してから次の環境に挑戦することです。これができていないと、ただただ部署や会社を転々とするだけになってしまうので注意が必要です。


最後に、引用記事には、これからの時代に求められる「仕組みをつくっていく」人材像として、以下の4つを挙げています。

(1) 個人での成果より、組織での成果
(2) 指示待ち型人材より、テーマ設定型人材
(3) 自前型人材より、ネットワーク型人材
(4) 固定ミッション型人材より、遊軍型人材

こちらに書いてある4つは、サイバーエージェントで求める人材要件にも見事に合致しています。

・個人成果よりも組織成果を重視する人材
・指示を待つよりも自走する人材
・周囲の人を巻き込みながら推進する力を持っている人材
・柔軟にポジションやミッションを変えられる人材

これからの時代に求められているのは、一言でいうならば「変化を好み、変化を受け入れ、変化の中で柔軟に形を変えていける人材」だと思っています。

今回は、『社内転職』という、一つの会社の中でキャリアオプションを複数持つという点にフォーカスして書かせていただきました。
現在、新卒採用・中途採用のプロセスにおいて、多くの求職者と話をしていると、応募理由の一つに「転職しなくても一つの会社の中で異動を含めた新しいチャレンジができる環境が魅力的」と答えていただくケースが増えています。転職と比べてミスマッチが少なくて済み、双方のギャップも生まれにくい“社内転職”は、これからの会社選び、キャリア選びの選択肢の一つになっていくはずです。

今は、一つの会社にずっと留まるという選択肢を持っている人が少ない時代になってきていますが、会社を変えずとも、変化を自分で起こすことや、変化の中で成長し続けていくための工夫を生み出すことは可能なのではないでしょうか。


#COMEMO #NIKKEI

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