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思う以上にタカ派に転じたBOE

「BOE(Bank of England)の金融政策委員会MPCのメンバーの過半数は9月23日の会合で金融引き締めの条件は既に満たしている、と考えるに違いない。しかし、引き続き、「引き締めの条件が満たされるだけでなく、政策対応を引き起こすのに十分ではない」という結論になるのではないか。実際、強弱が交錯した経済情勢は、よりタカ派的な動きにシフトするのを妨げると考えるためである。」

とこれまで思っていた見通しがすっかり打ち砕かれ、思う以上にタカ派的となった。タイト化の可能性を高め、2021年中の利上げの可能性も示唆されたと受け止められたため。8月のMPCでは成長見通しを下方修正、労働市場の回復も想定のペースを下回っている、としたばかりのMPCで、今回のような金融引き締め感が出るとは想定外であった。

大きなポイントはインフレの見通しである。依然インフレの上昇は一時的という認識は維持しているものの、持続的にインフレが上昇するリスクも指摘されるに及んだ。そうなると、FRBやECBがとっているインフレ一過性論にも疑義が生じ始めかねず、相応に懸念をしなければならなくなった。

また、従来のフォワードガイダンスに関する文言が削除されたこともサプライズであった。それこそ引き締めの条件が満たされるまでは引き締めない、としていた文言が撤廃されたところを見ると、冒頭に述べたような条件が満たされたと考えたメンバーは過半数どころではない、ということなのであろう。またQEの規模も縮小支持が少しずつ増えていることや、QE終了前でも利上げできると発言していることから、金融引き締めに転じるとすればBOEからではないか、という見方をより強める結果となった。

ただし、引き締めを開始できるとMPCが確信するターニングポイントとしては、労働市場が鍵を握っているのではないか、ということが8月会合の議事要旨でうかがえたとの見方まで変えることはなかろう。「労働市場、特に失業率や余剰を測るより広範な指標、基調的な賃金圧力の動向に関して今後得られる証左を注視する意向である」としていたのを踏まえると、労働市場が回復局面にある確かな証拠が出揃ったあたりが、金融引き締めの機会になるのではないか。労働関連統計にはタイムラグがあるため、一時帰休制度の終了後二か月のデータをMPCが入手するのは来年二月になる。今年中の金融引き締めはさすがにハードルが高いとしても、タイミングを含めて占うために労働市場の統計が重要である。

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