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ソートリーダーシップの時代に、リーダーは何をすべきなのか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

(今回は日経新聞連動テーマ企画「リーダーの心得」に乗っかりまして、記事を書いています。)

リーダーの心得という言葉を聞いたとき、真っ先に思い出したのがパナソニックグループの創業者、松下幸之助氏でした。

「松下電器は何をつくるところか」と尋ねられたならば、「松下電器は人をつくるところでございます。あわせて商品もつくっております、電気器具もつくっております」、こういうことを申せ

「企業は社会の公器」「企業は人なり」などの信念を端的に表した表現で、初めて目にしたときにとても感銘したことを覚えています。企業の規模が大きくなるほど、大きなことに挑戦できるようになっていきます。しかし、一人で成し遂げられることなど限られており、どうやってチームで大きな成果を出すのかが問われるようになります。優れたリーダーの元では、より多くのことが達成できるでしょう。

リーダーについて話す前に、わりと混同されがちな2つの役割を整理したいと思います。それは、リーダーとマネージャーです。もちろん2つを兼務している役割もあるのですが、意味合いとしては全く別のものです。日本だと部長か課長などの管理職の手前、係長的な意味としてリーダーが位置づけられることが多くみられ、管理職のスタートライン?と思っている方も少なくないでしょう。

では、リーダーとマネージャーとはどういう役割なのでしょう。

・リーダー:いろいろな個性が集まっている集団を同じ方向に振り向かせ、組織全体がどちらに進むべきなのかの道筋を示す
・マネージャー:一人ひとりの個性や能力を見極め、各人がパフォーマンスを最大限発揮できるよう、役割分担や成長を支援する

有名な経営者というのは、総じてリーダータイプです。どん底からの復活劇、革新的な新規事業など、変革を生み出すのがリーダーの役割だからです。わかりやすく言えば「このひとについていきたい!」とメンバーから思われたとき、あなたは初めてリーダーになり得たと言えるでしょう。

優れたリーダーの中にはマネージャーとしての適性も兼ね備えた人もいます。特に規模が小さいときには両方やらざるを得ないという場合もあるでしょう。ここでいうマネージャーの役割とは何なのか。ピーター・F・ドラッカー氏の名著『マネジメント』によると、その役割は以下の5つに定義されています。

・目標を設定する
・組織化する
・モチベーションを高め、維持する
・パフォーマンスを評価する
・自分も含めて部下を育成する

管理職の中には「業務を振り分ける」「レビューや承認をする」「期末評価」が仕事だと思っている人も多いように見受けられます。もちろんそれも仕事のうちだと思いますが、それだけではマネージャーの役割を十分に果たしていないのではないでしょうか。特に、組織化や仕組み化、モチベーションを高めたり人材育成をするというのは、日本企業が苦手とするところかもしれません。

いま、日本企業では国内市場の伸びが鈍化していたり、国外を含めた新天地・新規事業を求める声が大きくなってきています。オープンイノベーションを推進したり、副業解禁などにより、自社だけにとどまらない大きな流れをつくりチャンスをモノにしたいという意思を強く感じます。

欧米では近年「ソートリーダーシップ(Thought Leadership)」という言葉をよく聞きます。

ソートリーダーシップ(Thought Leadership)とは、特定のセグメントや分野において将来を先取りしたテーマやソリューションを示し、人々の議論や思想形成を引き起こすことにより、そのテーマやソリューションについて改めてより深く考えるようにする活動をさします。

ソートリーダーシップとは、いわゆる目的とする市場やターゲット顧客に「洞察」や「見通し」と共に解決策やソリューションを示唆する活動です。

マーケティングの手法の1つに見えますが、それだけではなく企業自身のビジョンやミッションなどと一緒になることで、市場全体にインパクトを与えうるものになっていきます。

2014年のFortune’s Brainstorm Green conferenceで、Levi StraussのCEO、Chip Bergh氏が1年以上ジーンズを洗濯しなかったと発表しました。この発言は翌日、拡散されました。

数日後、Bergh氏はLinkedInの投稿で以下のように説明しています。「ジーンズの洗濯を週に1回のペースで2年間続けた場合、1着あたりおよそ3,500リットルの水を消費します。この3,500リットルのおよそ半分の水、または1,600リットルの水が、ジーンズを洗濯機で洗濯した際に消費されるのです。この水の量はコップ6,700本分の飲料水に相当するのです!」

顧客に環境推進を勧めるのではなく、Levi Straussはこうした発言に投資し、小売業界全体が持続可能な取り組みを展開しています。Levi Straussでは最近、ジーンズの製造業界初のWater Recycling and Reuse Standard(水のリサイクル・再利用の規格)を実施し、真水3千万リットルを節約しました。Watermade the Waterという革新的な仕上げ技術が発達して施行されていけば、2020年までにアパレル業界全体で500億リットルの水を節約することができると言われています。

このように社員や顧客だけでなく、業界全体を巻き込むような動きをつくりだす。これこそが、ソートリーダーシップのお手本だと思います。

規模は違えど、これはすべてのリーダーに共通して言えることです。「このひとについていきたい!」、つまり人を惹きつけ、つなげていくことができるのが良いリーダー。そのためには、価値観を共有し、どのようにしてゴールに向かっていくのかを語れることが必要です。ソーシャルやメッセンジャーアプリ全盛の時代、業務の中にもチャットツールが入り込んできています。これは、これまでより圧倒的に「テキスト」量が増えることを意味しています。今後はより一層「ことば」の重要性が増していきますし、経営者やリーダーにとっても同様です。

以下のnoteでも、今後は経営レベルでCSO(チーフ・ストーリーテリング・オフィサー)という役割が必要だろうと提言されています。わたしもそうだろうなと強く共感しました。

いま世界の経営者で最も強烈にソートリーダーシップを発揮しているのは、イーロン・マスクでしょう。火星に人を送るという壮大なビジョン、ぜひ実現してほしいものです!

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タイトル画像提供:robuart / PIXTA(ピクスタ)

#COMEMO #NIKKEI

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