「移民」の力を生かすように、「女性」の力を生かしたら?
最近、男性の生きにくさを論じたNew York Timesのポッドキャスト、「The Men — and Boys — Are Not Alright」の中で、インタビューを受ける経済学者が「(米国では)女性(の社会進出)は移民(の社会進出)みたいなものだと言われるが・・・」と発言したことが印象的だった。
その心は、女性は表社会において働き手の主流ではなかったため、いったん機会を与えられると、平均的な男性より勤勉かつ上昇志向が強い傾向があり、その構図は米国社会に新参する移民の熱心な働きぶりに似ているということだ。実際、移民一世や二世は新天地でがむしゃらに働く成功者が多く、米国社会の活力源となっている。
この視点は、人口減少に直面してなお表立った移民政策を取らない日本にとって、示唆が深い。日本人女性を、米国における移民のように活躍させることこそが、日本社会の停滞を破る鍵となることを意味するからだ。
では、移民が成功するための条件とは何だろう?アメリカンドリームの大前提は、「頑張れば必ず報われる」という実力主義だ。既存勢力との摩擦はありながらも、おおむね実力者を受け入れる土壌がある。あくまで実質重視であり、「移民が輝く社会を」といった政府スローガン先行ではない。
この点が、息切れする日本のウーマノミクスにとって見直しを示唆していると思う。社内役員における女性の割合は2年前の7%から5.8%へ下がっている。なぜか?
女性の役員登用を阻む障害として、企業と女性の見方にずれがある点に注意したい-企業側は「家事や育児の負担が女性に偏りがちな社会構造」を指摘するが、女性側は「男性中心の文化や人間関係」を障害の一位に挙げているという。企業の多くが「性別にこだわらず、能力・業績を適正に評価した選別をしている」と胸を張るが、女性は納得していないようだ。
確かに女性に家事、育児負担の多くを押し付ける社会構造は大きな問題だ。しかし、おそらく役員候補ともなる女性であれば、育児真っ盛りの年齢は過ぎ、家事も何とかやり繰りできているというケースが多いだろう。一企業では動かしがたいマクロかつ長期的な課題をやり玉に挙げるよりも、本当に実力主義でフラットな評価ができているのか、アンコンシャスバイアスを含めて自社の現状を点検するべきではないだろうか?
「女性が輝く社会を」の聞こえはいいものの、標語だけが上滑りするリスクをはらむ。米国社会で移民が結果的に「輝く」のは、各現場でその実力が評価されているからだ。同様に、実力ある女性がフラットに評価される社会が実現できることが、日本の目指す姿と考える。
米国大手テクノロジー企業にはインド系トップが多く、移民の力を象徴する。このような目に見えるロールモデルは、次の世代に良い刺激となり、人材輩出の好循環をもたらす。日本でも企業トップに女性が当たり前のように就く時代を早く実現したい。特に、国内労働力が減り、山積する課題に知恵がいくらあっても足りない現状、優秀な日本の女性を米国の移民のように生かさない手はない。
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