見出し画像

メタバースとChatGPTの交差点が見えてきている

生成AIをめぐるビッグテックの競争が確実に進んできているようです。マイクロソフトがWindows 11に対話型AI機能を導入する大型アップデートを開始しました。続いてフェイスブック改めメタ社も、自社サービスへの対話型AIの実用化を発表しています。メッセンジャーやVRヘッドマウントディスプレイへの組み込みを行うようです。

生成AIの可能性は無限にあり、今後どのように進化していくのか、それは果たして汎用型AIへの進化の可能性もはらんでいるのかなど議論は尽きないのですが、ここではコンピュータのUIの可能性について言及してみたいと思います。

この記事では、ビル・ゲイツのブログ記事を紹介し、こう書いています。「コンピューターを操作するのに、マウスやカーソル、クリックなどが不必要になり、全てタイピングなどで済ませられる」

ChatGPTはMS-DOSへの回帰!?

これだけを読むと「えっ……?それは1980年代のMS-DOS?」と感じる古参のPCユーザーもいるでしょう。1980年代まで、PCは黒い画面にカーソルが点滅し、キーボードからコマンドを打ち込み指示を与えるCUI(Character User Interface)が主流でした。これが1984年に発売されたアップルのMacintosh、それを真似て1990年代に普及したマイクロソフトのWindowsによって、マウスポインタでアイコンをクリックするグラフィカルなGUI(Graphic User Intafece)に進化したのです。

これが対話型AIによって、再びコマンド入力形式に変わる。それだけだと単なる退化に思えますが、そうではないポイントが二つあります。第一に、MS-DOS時代のCUIと違って対話型AIは自然文でのコミュニケーションによって指示を与えられること。第二に、ゴールはキーボードのタイピングではなく、音声によるコミュニケーションであること。

実際、ChatGPTを開発しているOpenAI社は音声に積極的で、スマホのChatGPTアプリには音声でのやりとりができる機能がすでに導入されています。OpenAIのCEOサム・アルトマンは、現行のLLMをさらに大規模化しても限界があると語っており、今後はUIに磨きを賭けていく方針とも言われています。

音声コミュニケーションでプロンプト・エンジニアリングも変わっていく

滑らかな音声でやりとりできるようになれば、テキスト中心の現在のプロンプト・エンジニアリングもまた別の可能性が見えてくるでしょう。つまり仕様書を書くように対話型AIに質問するのではなく、より人間的で自然な文章で質問できるようになる。とはいえ質問のしかたには、より良い回答を得られるような深みと立体が求められるという方向に進むのでは。

さて、いっぽうでアップルは対話型AIにはあまり積極的に見えませんが、今年春にはVRヘッドマウントディスプレイのVision Proを発表しました。この製品が発表された際に公開されて話題をさらった公式動画には、メタバースなどの話がいっさい出てきません。アップルはVision Proをひたすら新しいコンピューティングのUIとして紹介しているのです。

メタ・クエストに代表されるような従来のVRヘッドマウントディスプレイが、UIとしてコントローラーを使用しているのに対し、Vision Proにはコントローラーがありません。視線とジェスチャーだけで操作できるのです。ここで言えることは、アップルは次世代のUIの主軸として、ボディランゲージを狙っているのではないかということです。

アップルが狙う次世代UIはボディランゲージか

コンピューティングの中心は、2010年代にPCからスマホへと移行しました。タッチスクリーンをiPhoneに採用したスティーブ・ジョブズは偉大でしたが、アイコンをタップして起動するというUIそのものはMac/WindowsのGUIから大きく変化したわけではありません。しかしスマホの時代もいずれ終わると言われているなかで、アップルは「その先」をボディランゲージに定めているのではないかとも思われます。

そうするとここに来て、対話型AIとVRヘッドマウントディスプレイというまったく異なるジャンルに見えるふたつのテクノロジーが、UIという一点において合流する未来が見えてきます。つまり対話型AIのなめらかな音声コミュニケーションと、VRヘッドマウントディスプレイでの視線やジェスチャーというボディランゲージ。

この二つがもし合流していくのであれば、それはまさにわれわれ人間が日々、隣人と交わしているコミュニケーションに他なりません。言葉を交わし、手をひらひらしてバイバイの合図をし、アイキャッチで相手への好意を送る。こういう人類のコミュニケーションが、そのまま人類と機械のコミュニケーションにも使える未来がまもなくやってくるのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?