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嫌になってしまうほど多い会食や飲み会・減らない人出 ー私たち医療者は何のために新型コロナと向き合っているのか?

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて首都圏では緊急事態宣言が再発令され、飲食店での夜の会食機会は自粛が強く求められています。しかし2回目の緊急事態宣言が出て初めての金曜日の夜となった8日夜、都内の繁華街の人出は先月より減少したものの、去年の1回目の宣言時を大幅に上回ったことがビッグデータの分析から分かりました。

 そもそも首都圏において2度目の緊急事態宣言が発令されたのは、11月から新型コロナの感染者が急増しているにもかかわらず繁華街の人出が全く減らなかったことだけではなく、感染リスクが高いとされている「マスクなしでの会話をする人たち」が「いつでもどこでも存在していた」ことによることが大きいと考えられます。飲食店に対する時短要請は、「仕事が終わってこれから食事にでも行こう・飲みに行こう」というような私たちの意欲を抑えるには一定の効果が期待できるかと思われます。しかし前回の緊急事態宣言の時と異なる可能性があるのはその遵守率であると思われ、今回は前回と同様の効果があるかどうかは何とも言えない状況です。すわなち、前回(4月頃)は新型コロナの病原性や感染力などがまだ不明確であったこともあり、「このまま感染爆発するのではないかという不安」と「何とかしなければならない」という意思を多くの国民が抱いていたことから、「One Team」(当時は私も使用した用語です)として一時的な収束に向かうことができたのかもしれません。しかし現在の人たちの「新型コロナに対する不安」や「何とかしよう」という思いはどうでしょうか?

 私は年末は12月30日まで、年始は1月2日から診療をしていましたが、新型コロナと診断した患者さんや濃厚接触者に該当する無症状の方々に1週間程前からの行動形態を伺うと、「知人と10人くらいでクリスマスパーティーを自宅でしていました」「正月休み中は毎日違う友人と飲みに行っていました」「昼間に新年会をしていました」等々・・・「潜伏期間に一致する時期」「お互いがマスクなしの長時間の会話機会があった」人たちばかり(というよりほぼすべて、しかもほとんどは20歳代の方々)です。これ以外にも「人ごみに行きましたか?」「通勤状況はどうですか?」などとも伺っていますが、皆さん揃って「マスクをして手の消毒をして感染対策はしっかりとしていました」と回答されます。確かに人ごみは感染リスクの高い場面ではありますが、お互いがマスクをして会話をせず多くの人が触る場所に触れた後に手洗いや消毒をすることで感染リスクは最小限になります。実際に私は毎日新型コロナの患者さんと至近距離で会話をしていますが、適切にマスクをして診療後に手指消毒をしていますので、感染はしていませんし何回か行った抗体検査(感染したかどうかを確認する検査)も陰性です。近くに新型コロナの人がいたからといっても、適切な感染対策をしていればリスクはほぼないのです。

 その一方、高熱で受診され「会食機会は全くない」「テレワークで満員電車には乗らない」「人と会うことはほとんどない」「仕事をするときはマスクを外して会話をすることはほとんどない」等、感染するリスクがほとんどない方々も新型コロナとインフルエンザの検査を実施していますが、共に陽性になった方はほとんどいないのです。しかし先日、聞き取りの結果思い当たる感染機会がない方で新型コロナが陽性になった方がおられたので家族構成を伺ったところ、20歳代のお子さんと同居しており、そのお子さんが年末に飲み会に何日か参加していたということでした。お子さんには発熱などの症状はないとのことですが、むしろ感染リスクは高い訳であり、濃厚接触者の方の多く(特に若い方)は無症状ですので、もしかしたら家庭内感染かもしれませんが、このあたりが追及の難しいところです。

 年末から東京都の感染者数は連日4桁が続くようになっています。私のところでは12月は保健所からの濃厚接触者の検査依頼がとても多い割に発熱患者さんはそれほど多くはありませんでしたが、1月に入ってから発熱患者さんもかなり多くなってきました。全く歯止めがかからない感染拡大状況なのにもかかわらず何故、感染リスクが高いことがわかっている「マスクなしでの会話機会(そのほとんどは会食機会)を避けようとしない」のでしょうか?私たち医療者は「何のために新型コロナと向き合ってやりたいこともできずに休みなく仕事をしているのでしょうか?」会食の自粛を求めていながら自らが会食しているような政府の言うことに従えないのは大いに理解できますが、だからと言って「一定の期間だけでも行動変容ができないのものなのでしょうか?」これだけリスクがあると警鐘されていながら会食や飲み会に行って感染している人があまりにも多いので、最近本当に虚しくなってきましたが、私以上に大変な思いをしている多くの医療者の方々の負担が少しでも軽減できるようにこれからも尽力していきます。

#日経COMEMO #NIKKEI

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