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コンプライアンスだけではない、接待セクハラ問題を人材育成課題として捉える
フジテレビと元タレントの中居正広氏に関するトラブル対応をきっかけに、企業が社員をハラスメントから守る責任に対する関心が高まっている。取引先との関係性の中で発生するセクハラ問題は、企業のコンプライアンス違反のリスクだけでなく、職場の文化や人材育成にも大きく影響を与える。
筆者が社会人になりたての20年前、ビジネスの場での女性社員に対する扱いに驚いた。有名企業の役職者が「女性社員は男性社員のやる気を引き出すため」とか「うちの女性社員は顔採用だから」と平然と言う人事も珍しくなかった。しかし、この20年間で社会は大きく変わった。変化に適応できない組織や個人は、今やコンプライアンス違反のリスクを背負っている。
セクハラをコンプライアンス問題だけにしてはいけない
「セクハラ」は単なるコンプライアンス違反として扱うだけでは不十分だ。これは職場のコミュニケーションスキルとチームビルディングの人材育成課題でもある。コンプライアンスの枠組みだけで議論すると、時代の変化に適応し、優れたアウトプットを生み出すための現代的なチームの在り方を学ぶ機会を失う。
例えば、セクハラを回避するために職場の懇親会を忌避したり、世代や性別を超えたコミュニケーションの頻度が下がることは、チームの成果に逆効果だ。特にグローバルビジネスでは、非公式な場での振る舞いとコミュニケーションがローカススタッフや取引先との信頼関係の構築で重視される。
グローバルビジネスとインフォーマルなコミュニケーションの重要性
各国のビジネス文化を見ても、懇親会の場での適切な振る舞いは信頼構築に不可欠だ。
タイやベトナムでは、懇親会で腹を割って話す経験が「仲間」として受け入れられる鍵となる。
欧米では、パーティー文化が根付いており、上司や取引先の経営者が主催するホームパーティーに招かれた際の振る舞いが評価される。
イスラム圏ではお酒はないが、食事会が頻繁に開かれ、特に断食明けの宴会での交流が信頼関係を築く重要な場となる。
このように、環境に応じた適切な振る舞いを柔軟に学ぶことが求められる。
変化に適応できる人が成功する
インフォーマルな場でのコミュニケーションで重要なのは、慣れ親しんだ古いやり方に固執するのではなく、時代や環境の変化に応じて柔軟に適応する能力だ。
「これまでこれでやってきた」「うちではこれが常識だ」「年齢だから新しいやり方を今更覚えられない」などの言い訳をしてアップデートを怠ることこそが問題だ。実際、優れたビジネスパーソンほど年齢に関係なく環境変化への適応能力に優れている。
リーダーが自身の常識をアップデートできるか
組織の重要なポジションに就く人ほど、自分のコミュニケーションスタイルや立ち振る舞いをアップデートしないと、組織全体にネガティブな影響を与える。影響力のある立場にある人ほど、常に学び、自分の常識を更新し、行動を変容できるかどうかが重要だ。
セクハラ問題をただのリスク管理として扱うのではなく、変化するビジネス環境に適応し、より強いチームを作るための重要な人材育成課題と位置づけるべきだ。