デジタル・トランスフォーメーションが進めば、重要になるのは「人間力」つまり「思考力」
デジタルの授業を行ったら、「必要なのは人件費」と気づく
最近、面白い経験を行った。私が指導をしている授業で、デジタル関係の開発コストや、必要な費用を、説明していた時だ。今や、デジタル関係のコストでは、コンピューターの物理的な環境構築費用ではなく、それらを設計・運用する人件費の方が、大きな割合を占めるということである。
例えば、私たちがWebサイトを新規に作ろうとする。Webサイトを公開するには、以前なら、「Webサーバーやネットワーク費」と「コンテンツ(記事)の開発費」だと、「Webサーバーやネットワーク費」が高価だった。しかし、現在ではこの部分は「クラウド化」されており、月額数万円である。相当安価になった。しかし「コンテンツの開発費」は、昔も今も、これからも、人の「創造的な労働」で、その費用は変わらない。結果、デジタル関連の仕事の費用の算出をしたら、デジタルではない「人」の費用の割合が多くなっていることに、学生との議論で気づくのである。
人工知能が増えたら、どう「生き残る」
そんな、出来の悪い「先生」の反省をしている時に、「なやみのとびら」に、さまざまな気付きを与えてくれる回答があった。
この中で、気づきは多いのだが、一つ目は、
事業計画書を書いたことがありますか? 中小企業の経営者が補助金など公的資金を調達するときに必ず提出するものです。それを書くつもりで、自分の会社でできることをおカネの裏付けをつけて、企画書としてまとめてみることをオススメします。
という部分だ。実は、会社の事業企画というのは、デジタル・トランスフォーメーションの時代でも、「人」の仕事だろう。
少し、このことを私なりに、平易な言葉に置き換えたい。事業計画というのは、数年後の会社の状況を設計するものだ。これを、私はしばしば登山だと考える。
事業計画でまず重要なのは、どの山に登るかである。これは、デジタル・トランスフォーメーションの時代になっても、人が決める部分だろう。もちろん、登山にはさまざまな要素がある。多くの人が登らいない山に登ることで、競争優位性を創ることもできる。いや、低山だが、社員一丸となって協力して登り、他社より早く登る方法もあるだろう。いや、有名な、そしてよく開発された山を、コストをかけずに上る方法もあるだろう。
このように、どの登山をするかは、さまざまな選択肢があり、そしてどの選択肢を重要視するかは、まさに会社の文化や社員構成などに依存することが多く、AIなどに判断されるものではない。
そして、この「湯山玲子さんの回答」には、私がよく話す内容も含まれていた。
今後、人工知能(AI)に取って代わられる仕事が多くなると予想される中で、生き残るためには、仕事を自ら作り出す能力が必要になってきます。仕事の基本はおカネを稼ぐこと。単純ながら、非常に奥が深いこの事実にきっちり向き合い、本を読み、情報を得て行動すれば、突破口が見えてくると思います。
そうなのである。人工知能に変わられる仕事があれば、変われない仕事もある。それは、「突破口」の探索である。
デジタル・トランスフォーメーションの時代になり、デジタル関連の機器やサービスは安価になってきた。しかし、私たちの価値は変わっていない。むしろ、私たちにしかできない仕事がある。
デジタル・トランスフォーメーションの時代では、むしろ「人」の能力で、仕事に差がでる時代なのだろう。
単純作業でないことを、積極的に行う
この「突破口」を探す仕事は、単純ではない。むしろ、経費精算、文章のミスの発見、データの整理などの単純作業は、コンピューターの得意領域だ。
これからは、「単純作業」をデジタルに任せて、「人」は「悩む・考える」などの短銃作業ではない「思考」の時間を充実させるべきだろう。デジタル・トランスフォーメーションの時代、AIは普及するだろう。たったら、私たちは「人の力」、Human Intelligence(HI)をもっと活用すべきなのだろう。