見出し画像

親が子の結婚に奔走する時代への先祖返り

子の就職に親が関与する時代へ。

まあ、今までも就職に関して「親のコネ」というものはあって、それこそテレビ局とか広告代理店なんかには、政治家や芸能人、財界人、由緒ある家柄の子どもが一定数コネ入社してきている。当然、会社はコネ入社ではないと言うだろうが、周りの人間は誰もが「コネだろ」と思っている。
相当数の実例を知っているが、いちいちここで名前をあげるといろいろ面倒なのでそれはしない。
コネが悪いことだとも思わない。それもまたひとつの運。

そういう一部の上級国民だけではなく、一般的に子の就職に親が関与することになるのだろうか。

そうやって親が子の人生に関与すればするほど、ますます「親ガチャ格差」は広がるのだろう。

話は飛躍するが、子の就職に親が関与することがもし当たり前の風潮になったとするならば、その後には子の結婚にも親が関与するのが当たり前となるようになるかもしれない。就職も結婚も「親が保障したい子の将来」という点では共通する。

子の婚活に親が熱心になるという話ではなく、完全に親主導による結婚という意味だ。

丁度、明治時代に、一部の武士階級や上流階級が行っていた家と家との「媒酌結婚」が庶民にも広まった時のような先祖返りが起きるかもしれない。


すでに東京23区では、生まれてきた子の半数は世帯年収1000万円の子である。

そのうち1500万もしくは2000万以上の世帯年収のパワー親同士が自分たちの子のパワー結婚を取り仕切るようになっていくのもあながちあり得ないとは言えない。

ちなみに「恋愛」という言葉が日本語として翻訳されたのは明治以降だが、江戸時代にも「恋愛」のような関係性は当然あった。言葉としては「くっつきあい」と言った。町人同士の「くっつきあい」などは日常的に行われていて、そういう意味では「江戸の町人は自由恋愛だった」わけである。

だから当然離婚も多かった。

誰かに恋焦がれてしまうことを「浮気」とも言った。今の言葉で使われるような、不倫とかそういう意味ではなく、「浮ついた気持ち」という意味の浮気である。

自由恋愛であると、当然「力ある者の勝者総どり」になるのは今も昔も変わらない。江戸の場合は、人口的に圧倒的な「男余り」だったので、当然一部のモテ男だけが恋愛を謳歌し、モテない男たちは生涯独身だった。江戸の未婚率は現代とたいして違いはない。

明治維新になって、西洋列強に認められるために、日本の西洋化がすすめられたわけだが、結婚のあり方もまんま猿真似導入された。庶民にまで家父長制度が導入されたのが明治民法である。

それまでの日本人の夫婦や家族のあり方とは根本的に違うもので、最大の違いは「妻の財産権の剥奪」である。財産権は戸主だけのものとなった。これにより、離婚が激減した。なぜなら離婚されると妻は生きていけないからだ。
同時に、富国強兵で兵隊としての子どもを多く産んでもらいたい国としては、結婚も出産も推奨しなければならない。そこで、個人の恋愛力に頼る自由結婚ではなく、親や地域が結婚の面倒をみるという媒酌結婚が広められていった。

媒酌結婚とは、簡単に言えば「保証人のいる結婚」ということだが、縁談をもってくる媒酌人は、地域でいえばそれなりの実力者でもあり、本人以上に親が無下に断れない。地域共同体の中で生きていくためには。
もちろん断ることもできたが、断っても次々に話が持ち込まれるし、周囲もそうやって次々祝言をあげるのだから、いつまでも意地を張ってはいられない。当たり前のように結婚はするものだったし。
よって、その頃、見合い写真をうまく加工してくれる写真やが流行った。昔も加工していたのですよ。

自由な雰囲気だった大正時代には、モダンガールなるものが登場して、「恋愛至上主義」の風潮もあったが、それのせいで「駆け落ち」や「心中事件」なども発生した。当時も、今の結婚詐欺などのようなことも起きていた。
そんなことにならないようにと、親心で子どもが若い10代のうちから親は結婚相手探しを媒酌人に依頼していたものだった。ある意味「恋心が生まれる前に結婚させよう」としたのである。

恋愛結婚するカップルもいたが、「恋愛結婚は野蛮なもの」などと喧伝もされた。

多分、戦前は少なくとも結婚の9割は媒酌結婚だったろう。戦後1950年代でさえ8割が見合い結婚だったので。
つまり、結婚とは本人の意思とかではなく、親や周囲の取り決めによってあれよあれよと進められるもので、気が付いたら結婚していたというのが当時の若者だったろう。まあ、だからこその皆婚だったわけだが。

それの良し悪しはともかく、子の未来を思う親の気持ちはあまり変わっていない。就職に関与する親が当たり前になれば、当然結婚にも関与する親が復活することも決してありえなくはない。

歴史は繰り返すというが、どうだろう?

但し、そうなると皆婚が復活するというより、結婚が上級国民だけに許される今以上の贅沢品となり、より一層婚姻数は減るだろうと思う。
 

ちなみに、極論だが、恋愛結婚禁止法みたいなものができて全員見合い結婚になった場合(マンガ「恋と嘘」のような世界線)、それを許容できるかどうかというのを男女未既婚と恋愛強弱で調査したことがある。

全体的にそんなに多数ではないが、特に、恋愛弱者男性はそんな世界でもいいと思っているようだ。




いいなと思ったら応援しよう!

荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。