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打ち合わせに「毛糸のボール」を持っていこう。

これからのビジネスには「アート思考」が必要だ。
イノベーションには「アートシンキング」が欠かせない。
経営者は「アート」を学んだ方がいい。

など、アートの視点をビジネスに活かそうというムーブメントがある。

これらをものすごくざっくり表現すると、不確実性が高いこれからの時代は「左脳的な判断」でなく「右脳的な直感」が重要になる。

といったところだろうか。

一方で「哲学」に注目するビジネスパーソンも一定数いる。僕もその1人だ。

今、ビジネスの世界で「哲学的ですね」と言われることにいいイメージはない。「マイワールドに入っちゃってますね。もう少し現実的に考えませんか?」と遠回りに言われているのと同じだ。
そのくらい、哲学とビジネスは相容れないと思われている。

しかし実際、哲学には停滞した昨今のビジネスシーンに風穴をあけるヒントが隠れている。今日はそんな話。

■ビジネスから知識を排除する

『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』の梶谷真司さんが「哲学対話」として提唱しているワークショップには「対話のルール」というものがある。

そのルールはポリアモリーについて語り合うポリーラウンジでも使われており、これを先日開催した公開ポリーラウンジでも紹介した。そのスライドがこちら。

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「愛とは何か?」「嫉妬とは何か?」など、答えのない問いについて話す際のルールだが、ビジネスに通じる部分は多い。

例えば

5.知識ではなく、自分の経験に即して話す
(経験に優劣なし。だれでも対等に話ができる)


というルール。

昨今、チームの生産性を上げるためには「心理的安全性」が重要だと言われているためか、打ち合わせの場で「若手もどんどん意見を言っていいよ」と心理的安全性を高めようとする動きも増えてきた。

しかし実際、若手とベテランには知識の差があり、その差分によって知識弱者が発言がしにくくなっているシーンにもよく出くわす。

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それだけならまだしも、ビジネスの場では「知識マウンティング」も横行している。

「あの有名な○○さんが言ってた…」
「あの名門××大学の研究によると…」
「本の△△に書いてあった通り…」

など、自分の知識をひけらかしつつ、これから自分が発言する内容に権威づけをしようとするビジネスパーソンは多い。(僕も結構やってしまう…)

発言された側もわかったフリをしつつ、結局手元のPCでその意味をググる。こんな滑稽な光景は日常茶飯事だ。(僕も結構やってしまう…)

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知識という対等でない武器の使用を許していては心理的安全性は保たれない。

そこで知識で話すことを禁止してみる。すると知識マウンティングを回避しつつ、心理的安全性を確保して会話を進めることができる。
また、聞きかじりの二次情報が排除されることで、会話や議論にリアリティーも生まれるはずだ。

■会話を支配する毛糸のボール

もう1つ、哲学対話のルールを紹介しよう。それがコミュティ・ボールと呼ばれる毛糸の玉。

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哲学対話の場面では

・コミュニティ・ボールを持っている人だけが話す
・意見を言いたい人は黙って手を挙げる
・コミュニティ・ボールを持っている人は誰にボールを渡してもいい
・一部の人たちだけでボールを回さない

というルールの元で運用される。

このルールにより、場はコミュニティ・ボールに支配される。その時ボールを持っている人が主役なので、自然と注目が集まり「話すモード」「聞くモード」がハッキリする。

これは子供たち同士の対話によく使われるルールらしいのだが、大人の打ち合わせにこそ必要だ。

コミュニティ・ボールを用いれば、打ち合わせの場でPCをパチパチ打ちながら「聞いている風」の参加者や、逐一会話に割り込んでくる「話したがり」な参加者をコントロールすることができる。それだけでも、打ち合わせの空気は一変するはずだ。

◼️哲学は右脳と左脳のハイブリット

人が言っていたことではなく、自分が感じたことを話そう。

人が話している時は真剣に聞こう。

一見当たり前に見える哲学対話のルール。しかしいつしか、ビジネスではこのルールが通じなくなってしまった。そんな世間とビジネスの感覚のズレが今のビジネスシーンにおける閉塞感を生んでいる気もする。

だからと言って左脳のロジカルシンキングから、右脳のアートシンキングまでぶっ飛んでしまう前に、一度哲学に立ち寄ってみてはどうだろうか

「問い」「語り」「聞く」を基本とする哲学は、ある意味右脳と左脳のハイブリットな思考を兼ね備えた学問だ。不確実性の高い未来にはぴったりだろう。

次の打ち合わせにはぜひ、毛糸のボールを持っていってもらいたい。

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小島 雄一郎
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