一流の社会人でもある大谷翔平さんに学ぶ「今日からできる睡眠のススメ」
WBCに出場した日本人選手の多くが、出場と例年とは違う早仕上げの影響か不調や2軍調整、休養を余儀なくされる中、そんな素振りを私たちファンには見せることなくフルで活躍し、日本人に元気と勇気と活力を与えてくれるエンゼルスの大谷翔平選手。
プレイでの活躍はもちろんのこと、5月の初めには、共に日本代表として戦ったカージナルスのヌートバー選手から食事に誘われても「寝ている」と断ったことも話題になりました。
トップアスリートはたくさん寝ている
かねてより大谷選手は、日々10時間以上は睡眠に充て「寝れば寝るだけいい。まずは量。質はその次」と、睡眠時間を重視する生活スタイルに言及してきました。
スポーツ界では、テニスのロジャー・フェデラー、NBAのレブロン・ジェームズ、さらには陸上のウサイン・ボルトらのトップアスリートも10時間以上の睡眠を志向していると言われています。
これは二刀流という体に大きな負荷がかかる偉業を成し遂げ続ける大谷選手のみならず、肉体的疲労を取るためには長い睡眠時間が必要であることを示唆しているでしょう。トップアスリートではなくても、例えば厳しい部活動や業務多忙による疲れからの回復を図るためには、それなりの睡眠時間が必要であることは体験的に理解しているのではないでしょうか。
体の疲労回復だけではない睡眠の機能
しかし一方、睡眠は身体のみならず、精神的な安定やストレス対処のためにも必要不可欠な生活習慣の一部であり、例えば大谷選手がハイパフォーマンスを発揮し続けるためのメンタルコンディションにも睡眠が大きく関与していると考えるべきでしょう。仕事は違えど、このことは私たちビジネスパーソンも例外ではありません。
とすると、5月病や6月病(最近は時期がズレたり長引いたりしてこう呼ばれることもある)が増えるこの時期だからこそ改めて、大谷さんを見習って、睡眠の重要性を再確認すべきではないでしょうか。
特にこれから梅雨の時期。日照時間が減って脳内のセロトニンが減ると「意欲」や「やる気」が低くなりやすく、場合によっては「抑うつ」や「不安」も高まりやすいですから、「よく寝る」もしくは「より良く寝る」について考えてみたいものです。
よく寝れるために自分でできることを考えてみよう
よい睡眠には、睡眠環境や寝具の良し悪しは当然大事なことです。枕を気にしたり、カーテンを変えたり、温度を調整したり・・・。
と同時に大事なのは、入眠時の心理状態です。人は夜になると、個人差はあれどネガティブなことを考えやすくなったり、結論の出ないことをグルグルグルグル考えたりしてしまうことがあります。
その意味では、入眠時の認知(思考)をコントロールすることは、臨床心理学的観点からは非常に重要視されています。
臨床心理学的 よい睡眠を取るために入眠時にできる方法
比較的簡単に入眠時にできる方法として、2つ挙げたいと思います。
初めは難しいかもしれませんが、繰り返すうちに、次第にリラックス感が自覚できるようになるとともに、入眠や睡眠の質によい影響を与えるといわれています。どちらも、科学的なエビデンスを裏付けにした方法です。
実際なかなか効果がある、眠れない時の方法 -認知シャッフル睡眠法-
最後に、なかなか寝付けないときに、近年専門領域で「効果が高い」と流行った方法をご紹介します。「認知シャッフル睡眠法」といって、これも科学的なデータを伴って効果が明らかにされています。私も病院の外来における心理カウンセリングの中で不眠の患者さんに使わせていただいていて、やはりなかなか高い効果が感じられています。
この方法は、脳の大脳皮質が理論的な活動をしているうちは、脳が『まだ寝寝ちゃダメ』と判断する、という仕組みに着目し、あえて何の脈絡もないイメージを連想することにより、大脳皮質の活動を止め『眠りのスイッチを入れちゃおう』と脳が判断するように導いてゆくものです。
いずれにしても、何か考え事をしたり、後悔しているとき、あるいは次の日のことを考えて眠れない時は、心が「過去」か「未来」にいっている状態(「早く寝なきゃ」と焦るのも未来に気持ちがいっている)ですから、そのどちらでもない状態を作ることが重要です。すーっと眠れれば、当然睡眠の質にもよい影響が期待できます。
「明日やろうはバカやろう」でもいいじゃないの
「明日やろうはバカやろう」と誰かが言ったのを聞いたことがありますが、特にストレスが高いときや忙しいとき、キツいときは「明日やれることは明日やろう」の精神で、時には長時間睡眠や質のよい睡眠を目指してみてもよいのではないでしょうか。
最近はスマホやスマートウォッチその他のデバイスに、スリープトラッカーアプリが装備され、簡単に自分の睡眠状態・傾向がモニタリングできるようになってきています。専門分野では、生態学的経時的評価(Ecological Momentary Assessment)、略してEMAの分野で日々実用化に向けた研究や実践が積み重ねられています。下記の記事はその一例ですね。
私も研究の中で、EMAを用いた病態や生活習慣のアセスメントを進めています。その話はまた別の機会に・・。
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