今年のテーマはドル安の行方
ドル・円相場だけを見ていると分かりづらいのですが、今年に入ってユーロ高・ドル安に弾みがつき、ドルインデックスも大幅安になっています。ユーロ高の背景には、欧州景気が思いのほか好調なうえに、ECBが金融緩和の幕引きに前のめりになっていることがあります。
米国の側からみると、これまでは米国ひとりで低調な世界経済を引っ張ってきたので、世界のマネーが米国に集まっていた。そうしたマネーの流入がドル相場を押し上げてきたのですが、今や欧州や日本や新興国の景気もそこそこ良くなってきた。そこで投資家はドルに資金を集中させるのではなく、ドル以外の通貨にも矛先を向け始めたというわけです。今はユーロですが、円が続くでしょう。
緩やかなドル安ならば、米企業の輸出採算を向上させるので、米国株にはプラス材料。一方、消費者物価が強含む中でのドル安となると、米国債市場にはマイナス材料となります。年明け以降の米国では、株高・債券安という形で、この2つの事象が併存しています。
問題はインフレ圧力が強まったり、ドル安が加速したりする場合。FRBは通貨価値を防衛するために、利上げのピッチを速めざるを得ないでしょう。そうした動きは債券ばかりでなく、株式にもマイナスです。
別の観点からみれば、米国は経常赤字の国であり、海外から資本を取り入れる必要があります。しかもトランプ減税の結果、財政赤字も膨らみます。経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」。懐かしい言葉ですが、米国のアキレス腱を投資家が心配しだすと、ドル相場の足元が揺らぐ局面にも。今年のマーケットのカギは、ドルの信認如何と思われます。ドル問題を論じた下記のWSJの記事もご参照ください。
https://www.wsj.com/articles/dollar-gets-the-cold-shoulder-in-global-economic-boom-1515931200?mod=e2tw