社長になるより社長を辞めることのほうが難しい問題
今時分、会社は資本金1円でも作れるので「社長」になること自体は、たやすい。もちろん、そこから事業を成長させ多くの従業員を雇用し規模拡大し、自分の引退後も永続するような社会の公器たる企業に育てるのは非常に難しい。
そしてもし仮に、一代でそのような企業を育て上げることができたら「名経営者」であることは間違いないのだが、そこから「降りる」ことは、さらにさらに相当、難しいようだ…。
※読んだらスキじゃなくてもスキいただけると泣いて喜びます!w
日本電産の永守さんCEO返り咲きニュースを見て
日本電産は4月21日、関潤社長が兼務する最高経営責任者(CEO)を、永守重信会長が引き継ぐ人事を発表した。昨年6月に創業者の永守氏から関氏がCEO職を引き継いでから1年足らずのことである。永守氏は過去にも2度ほど経営トップを引き継ぐトライをしており関氏への交代は当時、本人いわく「三度目の正直」だったそうだ。
このニュースを見て、私も「カリスマの後継者」をテーマに、コラムを書いた。後継者への引き継ぎに苦心するのは日本電産だけではなく、ソフトバンクグループの孫正義氏は高額年俸でニケシュ・アローラ氏を候補として連れてきたがバトンタッチへの考え方が合わず白紙に戻っているし、ファーストリテイリングの柳井正氏は50代で玉塚元一氏に社長の座を譲るも、業績悪化を受けて復帰している。個人的には三木谷社長のいない楽天というのも、どういう風になるのだろう、と思う。
いずれも一代で巨大企業を築いたカリスマ創業経営者だ。
私は、上記のような名経営者の皆さんとくらべるのすらも、とんでもなく恐れ多い、駆け出しスタートアップ経営者だが、それでも他人事とも思えない…。もーしも、万一、あるいは千一ぐらい、私がそうなったら代表を辞められないのは困るのだ。(笑)
そこで、米国の「1代で巨大企業を築き上げた企業」の「カリスマ創業経営者の後継問題」を調べてみたら興味深い結果となった。上記のコラムにも書いたのだが以下のような感じだ。
米テック企業の「カリスマ創業経営者の後継は?」
マイクロソフトの場合
マイクロソフトの創業経営者は誰もが知っているビル・ゲイツ氏だ。そして、現在のマイクロソフトは、3代目のCEO、サティア・ナデラ氏によって経営されている。ナデラ氏は1992年にマイクロソフトに入社し2014年にCEO就任。つまり22年間、マイクロソフトに勤務している。
アップルの場合
こちらも誰もが知っているのではないかという創業経営者、スマートフォンiPhoneの生みの親、スティーブ・ジョブズ氏。泣く子も黙るカリスマっぷりである。
現在は、スティーブジョブズ氏の亡きあと、次のCEOとして1998年に入社したティム・クック氏が2011年に就任している。ティム・クック氏のCEO就任までの勤務期間は13年だ。
グーグルの場合
グーグルの創業者もとっても有名。ラリー・ペイジ氏と、セルゲイ・ブリン氏だ。しかし、現在のグーグルのCEOは、サンダー・ピチャイ氏。氏は、2004年に入社して11年後の2015年にCEOに任命されている。
アマゾンの場合
2021年、アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏の引退を受けて2代目CEOになったアンディ・ジャシー氏は24年間アマゾンに在籍していた。24年間!!アマゾン社内での経歴はざっと以下です。
アマゾンが「オンライン書店サービス」を開始したのは1995年7月だから、アンディ・ジャシー氏の入社1997年というのは、相当に初期入社メンバーということになります。
後継者に引き継いだ後、結果として時価総額は4社とも上がっている
現在は米テック株暴落、世界的株安などで株価は下がっているものの、上記の4社はカリスマ創業経営者から引き継いだ後、いずれも時価総額はあがり企業価値は向上し続け、世界から「GAFAM」と呼ばれて警戒されるほどに大きくなっている。このことから、「引継ぎは成功した」と言えるのではないか。
日本は「1つの企業に定年まで長く勤める終身雇用文化」、米国は「キャリアアップ目指してどんどんジョブホッピングしていく文化」と言われるのに…?
一般的に日本は終身雇用制度からの風習が根強く新卒で採用されて、その企業文化に染まりながら定年まで勤めあげる人が多いと言われている。また、米国はその逆で、企業側が従業員を解雇するのも珍しくないし(日本ほど解雇要件は厳しくないし)従業員側もキャリアアップ目指してどんどん転職していく文化だと言われている。しかし、この「カリスマ創業経営者の後継者問題」については全く逆なのだ。
日本の場合、外部から後継者をスカウトしてきて後継者としてCEOに据え、やはり創業経営者が返り咲くというパターンだ。
アメリカの場合、長くその企業に勤めて起業文化の中で育ち成果を出してきた生え抜きから後継者が選ばれている。
おそらく「企業文化」。それが問題を解くカギである
企業というのは人間ではない。(当たり前)だから、倒産しても血を流すわけでもない。しかし、どうやら人格というかキャラクターというかがあって、だからこそ「法人」と書く。
私が新卒から18年3か月勤めたリクルート社は「DNA」という言い方をしたりする。生物じゃないのに、DNA!!
創業経営者だった江副さん自ら、「リクルートのDNA」って本を出版しておりますし…。
そして、冒頭に書いた日本電産の永守CEO自ら、以下の記事にて、「企業文化」を連呼している。
上記記事から該当部分を引用すると以下。
関氏は「自分のリーダーシップが足りない」と言っているし、永守氏は「強いリーダーシップがあれば改善できる」と言っているのだが、これはどうもリーダーシップの問題ではない気がしている。関氏と永守氏は別の人間であり(当たり前)それが企業文化に及ぼす影響が違うのも当たり前なのだろう。確かに関CEOの元、永守氏がCEO時代の文化は崩れつつあったのかもしれないが、かわりに関CEOによる企業文化が新たに育ってきていたのかもしれない。つまり、「トップの代替わり」を「移植手術」に例えると、あくまで私の仮説であるが、米国のように、企業文化を共有する生え抜きから後継者指名するのであれば「拒絶反応」は起こらないが、外部からのスカウト人材がトップにおさまると移植の不適合や拒絶反応が起こってしまうのではないか…。
では、企業文化とは何か
大きな、そして重要なテーマだ。先日、米国を代表するベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツの創始者で「HARD THINGS」などの著作で知られるベン・ホロウィッツ氏の話を直接聞く機会があった。ホロウィッツ氏の最新著作は「WHO YOU ARE」。
上記に掲載されている本の紹介はこうだ。
講演の中でホロウィッツ氏はこういった。
人間には寿命があるから創業者が永遠にCEOをやることはできない。しかし、その後も成長し成功する企業の根底に流れているのは、何か、創業者のキャラクターや思想をほんの一部、あるいは結構な部分引き継いでいるかもしれない法人としての人格、企業文化、DNA。
それさえあれば、永遠の命をつないでいけるのかもしれない。
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