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ホルムズ海峡でタンカー攻撃される(2019.06.14)

おはようございます。日経新聞の朝刊1面トップを解説する「NIKKEI Morning Briefing」、5人目の担当者の太田です。

「湾岸のフィヨルド」。そう呼ばれる美しい光景が中東・ペルシャ湾のホルムズ海峡にあります。フィヨルドとは氷河の浸食作用でできた複雑な地形の入り江のこと。ノルウェーのものが有名ですが、ホルムズ海峡の突き出た南岸、オマーンのムサンダム半島の先端にも似た景色が広がります。

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイから、陸路でムサンダム半島に行ったことがあります。クルーズ船に乗って岩山が突き出たフィヨルドをめぐると、海面から顔を出しつつ船と並走するイルカに出会えました。ふだんはとても穏やかで美しいこの場所ですが、世界経済の命綱といえる役割も担っています。

けさの日経朝刊1面トップは、ホルムズ海峡で昨日、タンカーが攻撃されたというニュースです。原油価格が上昇するなど、世界経済にも懸念が広がっているのはなぜでしょうか。ポイントをチェックします。

Morning Briefingとは
その日の朝、読んでほしいニュースの要点を簡単に要約したもの

世界の石油供給に緊張

◆キーワード
原油輸送のリスク懸念

◆ニュースはなに?
中東のホルムズ海峡で、日本の船舶を含む2隻の石油タンカーが何者かの攻撃を受けて炎上した。原油価格が上昇するなど、世界の石油供給が不安定になるのではないかとの懸念が広がっている。

◆気になるポイント
ホルムズ海峡は、中東産の原油や液化天然ガス(LNG)を世界に運ぶ通り道です。もしここでタンカーへの攻撃などが相次げば、世界へのエネルギー供給が大きなダメージを受けます。とくに日本は原油の8、9割を中東に頼っており、企業活動や人々の日常生活に大きな影響が出る可能性が高いです。

ホルムズ海峡の幅は最も狭い場所で約40キロメートルしかありません。テロ組織などからすれば、ここを通る船舶を攻撃すれば、比較的少ない労力で世界経済に大きな混乱をもたらすことができてしまいます。実際、米国と敵対するイランは、これまで何度も「ホルムズ海峡の封鎖」の可能性をほのめかしてきました。ただそのようなことをすれば、原油輸出に頼るイラン自身の首も絞めるため、実際に行われたことはありません。

今回の攻撃は、安倍晋三首相が米イラン関係の緊張を緩和しようとイランを訪問しているさなかに起きました。米国は攻撃について、「イランに責任がある」と主張しています。イランは関与を否定していますが、米国とイランの関係融和が遠ざかったのは間違いありません。世界はまたひとつ、不安の火種を抱えることになりました。

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