難しい調整が数多く求められるESGの流れ

欧州はESGやSDGsに関する動きが鮮烈で、先進的である、と皆思っている。しかし、同時に悩みも多い。

ドイツ・ルール地方に代表される石炭発電の地域もそうであるように、ポーランドは石炭火力発電の依存度が高く、なかなか構造転換が出来ずにいる。原子力発電に対する見通しがフランスとドイツではかなり違うこともある。陸続きの欧州から見れば、欧州域外から安い製品を輸入するインセンティブも高まる。

こうした各国の事情があっても、EU復興基金は成り立った。そのうちの多くがグリーン政策に使われる。どう整合性を取るのかが、実は課題である。
一つの考え方は財源の調整と言える。拡大した予算の原資を確保するための新たな歳入源の創出が必要だが、サステナブルな環境を実現するために主要財源として三つ想定される。プラスチック税、既存の排出量取引制度の拡大と国境炭素税である。

国境炭素税は、EU域外から輸入される商品に対して、生産工程で発生する排出ガスの量を基準に課税するものである。その目的は「カーボン・リーケージ」を回避すること、即ち、企業がEUよりも排出権価格の安い国に生産拠点を移すことや、そうした国からの製品輸入に切り替える事態を回避することにあり、域外よりも厳しくなる可能性のある環境基準を満たさなくてはならない欧州の生産者の競争条件を公正なものとすること、を狙ったもの。 欧州委はこの措置を遅くとも2023年1月までに導入しようとしており、2021年中に草案を提出するための取り組みを進めているところである。

大企業も生き残りをかけて構造転換を図る。難しい問題が多いが、できるだけ、フェアな競争条件を整えることも必要になっているということである。さらに、こうした調整は他国だけの問題ではないことにも注意が必要であろう。

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