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人工知能の研究から人の判断の本質を知る

人工知能の研究開発は、もちろん社会に役立つものを作る活動です。しかし同時に、人工知能の研究は、よりよい合理的な判断の仕組みを、構築しながら、そのシステマティックな原理を理解する営みでもあります。

現在の最先端のAIの原理の中で、あまり語られていないことがあります。それは、AIの心臓部が、「学習」と「判断」という二つのエンジンからなっていることです。「学習」は、経験や情報から「判断の回路」を作ることです。「判断」は、具体的な環境中で、判断の回路を動かしアクションを決めることです(深層学習は主に前者の学習に用い、判断には別の仕組み、モンテカルロ法や制約付最適化など、が使われることが多いです)。

多くの場合には「学習」は時間を掛けて行われ、「判断」はその場その場の瞬時の反応が求められます。時間軸が全く異なります。

人の学習や判断も、この大枠では人工知能と同じ仕組みであると考えます。そうすると、我々が判断する時には、既に判断の回路は既にできており、判断結果は環境条件に応じて反射的に決まると単純化されます。その場では判断をあまり変える余地はないということです。従って、よりよい判断のためには、実は背後にある「学習」に介入・改善する必要があるわけです。学習は、経験や情報を入れて、判断の回路を更新をすることによって改善されます。

我々はともすれば、行動とその判断には、その背後に動機があると考えがちです。上記の枠組みで考えると、行動や判断を決めているのは、学習とその環境ということになります。原因はそちら側にあることになります。このような考え方は、現在の素朴な責任や動機に基づく世界観とは大きく異なります。

実は人工知能が突きつけている最も大きな革命でありディスラプションは、我々の行動や判断の背後にある本当の仕組みが明かされ、これまでの素朴な世界観の非合理性が明らかになることなのです。

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