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成長メタバースのキーワードは「UGC」 〜メタバースで押さえたいポイント①
お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。
日経COMEMOの方ではあまりメタバースの話を書いていないので、今回から何回か、メタバースについて書いていこうと思います。
今日は、成長メタバースのキーワードは「UGC」だよという話です。
メタバースは死んだ?
「メタバース」という言葉はここ数年でだいぶ一般化したので、聞いたことある、という方が多いのではないでしょうか。
一方で、聞いたことはあるけど実際にメタバースで日常的に遊んでいたり、メタバースを体験したことはないという方もけっこうな割合がいるのではないかと思います。ここらへんは新しいコミュニケーションツールは若い世代の方が入りやすいので、世代によってもちがうかもしれません。
「メタバース」という言葉が広く知られるようになった大きなきっかけは、2021年10月にFacebookが社名を変更したことです。GAFAMと呼ばれここ10年くらいビジネス界を牽引してきたFacebook社がメタバースに注力する、ということで多くのビジネス関係者やメディアが色めき立ちました。
ここで過度に期待が高まったために、それが一服すると「メタバースはもうオワコン」というような空気も昨年はあったように思います。新しいテクノロジーが登場するとほぼ確実にみられる現象に、ガートナーのハイプサイクルと呼ばれる理論があります。新しいテクノロジーが登場すると、すぐ大きな期待が寄せられますが、実際の成長速度と期待との乖離から一気に幻滅に転じることも少なくありません。
2022年にガートナーが出したこちら↓の図をみると、
![](https://assets.st-note.com/img/1707704091950-29Lm3XDW3G.png?width=1200)
「メタバース」は2021の年末から盛り上がり、2022年には「過度な期待」のピークにあります。そしてそこから急激に落下し、2023年は「幻滅期」でした。メタバーススタートアップを経営する身の実感値でも、2023の上期はメタバースの「底」だった感じがあります。
そして幻滅期をすぎるとその市場は着実に伸びていきます。
2023年のビッグウェーブは間違いなく「生成AI」だったわけですが、「AI」もこれまで何度か「過度な期待」があり、何度かの幻滅期を経てきたわけです。そういう意味では「幻滅期」とは今後の成長の兆候と捉えることもできます。
歴史に倣えば、これは今がC向けスタートアップを立ち上げるべき / 投資するべき、最も適切なタイミングであるという明確なシグナルです。
— Arata Kokaji@WiL | VC (小梶新) (@aratakokaji) January 27, 2024
ある企業に投資するべきベストなタイミングは、その企業が属するカテゴリーに死亡宣告が下された瞬間🔥 https://t.co/ISXUeVh1uJ pic.twitter.com/yNMJxkce9f
ハイプサイクルのグラフの「過度な期待」部分はバブルなので、その山を取った↓の青の点線のカーブこそが実態的な成長と考えるといいかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1707704860020-laNhDLAh3T.png?width=1200)
「外野」と内側からの景色
ハイプサイクルにおける「過度な期待」は、基本的に「外野」による反応です。
昨年5月、「メタバースは死んだ」というメディアの記事に対し、フォートナイトを運営するEpic Gamesのティム・スウィーニー氏はこんな皮肉交じりなツイートをしていました。
The metaverse is dead! Let's organize an online wake so that we 600,000,000 monthly active users in Fortnite, Minecraft, Roblox, PUBG Mobile, Sandbox, and VRChat can mourn its passing together in real-time 3D.https://t.co/tRpFHsdZLw
— Tim Sweeney (@TimSweeneyEpic) May 9, 2023
「メタバースは死んだ! Fortnite、Minecraft、Roblox、PUBG Mobile、Sandbox、VRChatの月間アクティブユーザー6億人が、リアルタイムに3Dで一緒にその死を悼むことができるよう、オンライン葬儀を企画しましょう」
Facebookが名前を変えたことで色めき立ち、これからはメタバース!と大騒ぎしたのは、実際にメタバースを楽しんだり触ったりほとんどしていないメディアやビジネス界の大人たち、いわば「外野」の人たちでした。それが今度は、その実態もよく知らずに「メタバースは死んだ」と騒いでいるわけです。
しかし、Tim Sweenyがツイートしたように、「外野」騒ぎに関係なく、実際にはメタバースのユーザー数は着実に伸び続けています。例えばRobloxは今や月間アクティブユーザー2.2億人、7,000万人ものデイリーアクセスを誇る巨大メタバースとなっています。スマホベースのZEPETOも、日本の今20代後半くらいの人だと「ZEPETO?あー昔ちょっと流行ったよね」という感じかもしれませんが、その後も一過性の流行を超えて進化し、グローバルで4.6億のプラットフォームに育っている。VRChatも伸び続けています。
ハイプ・サイクルの幻滅期を過ぎ、順調にユーザーを伸ばしているVRChat、というポジションがよくわかる。'メタバース'がBuzzWord化していた1年弱だけ特異点的に伸びてるけど、ついに全盛期すら越えた。SteamVR同接数をプロットしたもので、PC版のみQuest版含まずSteam配布のないclusterを含まずです。 pic.twitter.com/5vMN1JLZAL
— 和蓮和尚 (@warenosyo) December 25, 2023
「メタバースは死んだ」とか過度な期待⇒幻滅期もあったけどgoogle trendsでみてもそんなん関係なくVRChat伸びてて、今年10月くらいからまたぐわっと来てる感
— waka00/若宮和男(起業家/メタバース/アート思考キュレーター/福岡女子大客員教授 (@waka_uq) December 26, 2023
スマホ対応やクリエイターエコノミーを上手く接続できればいよいよキャズムを超えてくるぞ…!(ちなみにRobloxもキレイに伸び続けてます) pic.twitter.com/5dfK3SyyGV
メタバースの人口は伸び続け、グローバルではいまや数億〜2桁億の人がメタバースを楽しんでいます。
伸び続けているのに、なぜ「死んだ」と言われるのか?これにはいくつかの要因があります。
①社名変更までしたMeta社のメタバースが壮大にすべった
②コロナ禍で対面コミュニケーションが制約されることになり、メタバースへの過度な期待が加速した
③大企業がこぞってつくったメタバースが過疎っている
④そうこうしているうちに生成AIが来た
①はBIg Techが大きな投資をして失敗したのでやはり目立った感があります。個人的には「Meta社のメタバースが上手く行かない理由」というのがあると思っていて、メタバースの未来をMeta社で占うのはまったくの間違いだとずっと思っているのですが、それはまたいつか書くとしましょう。
②コロナ禍や④生成AIのような外的な要因については致し方ないとしても、③ブームに乗ってつくられた企業のメタバースが過疎っている、というのも「メタバースは死んだ」と言われる原因ではありそうです。
伸び続けているメタバースと過疎るメタバースを分けるものはなんでしょうか。その成長するメタバースの共通の特長が「UGC」です。
伸びているメタバースの共通項は「UGC」
先にみたように、外野の騒ぎとは無関係に、メタバースの人口は増え続けています。その中でも僕たちが注目しているのは、VRChat、Roblox、ZEPETO、Spatialの4つのメタバースプラットフォームであり、これらのメタバースの共通の特長は、コンテンツがUGCであることです。
UGC=User Generated Contentとは、ユーザーが自ら作成して楽しむコンテンツのことです。アバターやファッションアイテム、アクセサリー、ワールドやそこに置く家具やアバターの服装など、ユーザーが自ら自分たちの世界を作り出し、他のユーザーとシェアして遊んでいる。これが、成長しているメタバースの共通点なのです。
裏を返すと、UGC的でないメタバースが盛り上がるのは難しいと僕は考えています。大企業では独自のプラットフォームを作り、そこで自社のキャラクターや商品を並べて販売するような形式のメタバースもよくありますが、こうした企業が提供する1wayのコンテンツでは、ユーザーはいずれ飽きてしまうのです。
ユーザーに飽きられないようにするには、コンテンツを頻繁に更新する必要があります。僕は以前ドコモにいましたがモバイルインターネットが立ち上がって公式コンテンツとして人気になったのは占いやニュース、天気といった毎日更新のコンテンツでした。
ただ、どれだけ更新頻度を高めたとしても、「ユーザーが受け身」になってしまうとメタバースとしては盛り上がらないのですよね。それがどれだけリッチなコンテンツであったとしても用意された遊び方を享受するだけでは遊び方の選択肢は限られます。一方、UGCであれば、ユーザーは自ら遊び方を発明していくことができ、その「世界」の可能性は無限です。
どれだけつくり込んだリッチなメタバースでも提供者側がコンテンツを用意するメタバースは、インターネットでいえばweb1.0時代のサイトのようなものです。どれだけかっこよいデザインのサイトでも、企業のコーポレートサイトを毎日訪問する人はいませんよね。
ウェブ2.0への移行で、ユーザーはより能動的にコンテンツに参加するようになりました。その典型がSNSですが、ユーザーがコンテンツの受容者としてだけでなく、作成者として積極的に関わることで盛り上がったのです。
ボトムアップ/分散型でコトが起こる
メタバースのUGCにも色々あります。たとえば一番わかりやすいのはアバターです。
一部のトップアバタークリエイターのつくったアバターは、キャラクターIPのようになり始めていて、ファンがついています。
自らアバターをつくることができない他のユーザーは、アバタークリエイターに依頼したり(中国では「造顔師」という職業も生まれているそうです)、BOOTHなどでアバターを購入して自分好みにカスタマイズを楽しみます。たとえば、髪の色を変えたり、メガネをかけたり帽子を被せたりして、自分なりのアイデンティティを表現します。(メタバースの体験ではアバターによるアイデンティティの確立が非常に重要です)
同一アバターを使うユーザー同士が集まるアバター集会なんかもあります。同じアバターからカスタマイズ派生した色々なバージョンのアバターたちが集まり、お互いのアバターを褒め合ったりして楽しみ、そこにオリジナルのアバタークリエイターが降臨するとたいへんに盛り上がります。
アバターが着るファッションアイテムやアクセサリー、家具などのアイテムからワールド自体をつくってしまうクリエイターまで、さまざまなUGCがあります。
3Dモデルを制作する以外でも、イベントやライブなどをユーザーが自発的に企画して楽しんでおり、これも一種のUGCといえます。「コト」をユーザーが生み出しているわけですね。メタバースクリエイターズでも毎週日曜日にVRChatのワールドで国際交流イベントを開催し、日本の音楽や食、歴史や観光地を海外ユーザーに紹介し、国を超えた交流を行っています。こうしたテーマイベントやライブなどがボトムアップで沢山開かれています。
リアルイベントを開催するとなると、会場を押さえたり集客や立地的なことも考えないといけませんが、メタバースであれば簡単にイベントを開催でき、海外からでも気軽に参加できます。こうした気軽さから、イベントやコミュニティがたくさん生まれていることもUGCと言ってよいでしょう。(「コミュニティ」についてはまた次回書いてみたいと思います)
大手企業が独自開発したメタバースPFが集客に苦戦する中、グローバルで成長するメタバースがあり、そうしたプラットフォームを企業が活用する事例も増えています。
メタバースプラットフォームとして盛り上がるか?を考える時、ポイントはUGCの仕組みとその自由度であり、ボトムアップでユーザーのコトづくりが活発に行われる仕掛けがされているかに着目すると、盛り上がるプラットフォームかそうではないかが分かりやすいでしょう。
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