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2021年の株主総会で、機関投資家はどんな企業に対して反対票を投じるのか?〜実は機関投資家も周りとの歩調を気にしてる!?〜

 4月の株式市場は、コロナワクチンへの期待や決算発表で波のある展開となっていました。5月の株式市場も、同様の動きが想定されます。そして、6月になると、日本の上場企業の過半数は株主総会を迎え、6月の株式市場の動向を考えるうえで注目されるイベントとなります。少し気が早いですが、6月の株主総会について考えるべきポイントを記載します。今回の話は、株主対策を考えなくてはいけない経営企画部や経営者、または株主総会を投資戦略のヒントにしたい投資家にとって、何かのヒントになると思います。


アクティビストではないプロ投資家も、物をしっかり言う時代へ

 最近、株主総会で静かな動きが出ています。それは、企業買収などを行うアクティビストファンドではない、ETFなどを運用するプロ投資家(このコラムでは、投資信託の運用を行う機関投資家と定義します)も、経営者に対して議決権で反対票を入れることが増えてきたのです。これは、日本を含めた世界各国で起きている現象です。実際、このコロナ禍でも、下記の記事のように観測される現象です。

 記事の中では、異常すぎるCEO報酬増額を検討する株主総会議案について、プロ投資家の一部が反対票を投じたとのことです。当然、株主総会で機関投資家による反対票が50%を超えなければ、異常すぎるCEO報酬増額を検討は阻止できません。しかし、Cai et.,al(2009)では、それでも、反対票を多く投じられた企業は、対外的なレピュテーション気にして社内ガバナンスを律すると報告しています。


どんな時に、プロ投資家は反対票を投じるのか?

 そして、多くの経営者や投資家が気になるのは、プロ投資家が、どんな時に反対票を投じる傾向を見せるかだと思います。これについては、コーポレートファイナンス研究において、多数の実証研究は報告されています。なかでも、少し変わっているのが下記の研究です。

Gregor Matvos and Michael Ostrovsky, 2010 “Heterogeneity and peer effects in mutual fund proxy voting” Journal of Financial Economics, Volume 98, Issue 1, October 2010, Pages 90-112


この論文では、株主総会議案の、特に取締役選任議案における、プロ投資家の議決権投票傾向ついて研究を行っています。ポイントは下記です。


➢ 米国の2003-2004年の2058788個の投資信託を運用しているプロ投資家(以下、ファンド)の投票データを対象に検証
➢ ファンドの投票行動には、系統的な異質性が見られた。一貫して経営者に賛成票を入れる傾向のファンドもあれば、その逆のファンドも存在している。このような
傾向を見せるのは、ファンドは、資金運用だけでビジネスが成立しているわけでなく、(投資先企業も含め)企業年金運用の手数料収入にも依存する。そのため、顧客にもなりうる上場企業の株主総会議案については、そもそも反対票は入れにくい。そして、ファンドの収益構造の違いが、反対票を入れる傾向の違いに影響。                       ➢ 更に、ピア効果の存在も明らかにしている。つまり、他のファンド勢が取締役に反対する可能性が高くなると、当該ファンドも取締役に反対する可能性が高まる。このような現象が起きるのは、一社のファンドだけが、上場企業に反対票を入れるのは、その上場企業とのビジネス関係がなくなるリスクを考えると行いにくい。しかし、全てのファンドが反対票を入れる、または大多数ののファンドが反対票を入れるならば、自分達のファンドだけが上場企業から報復を受けるリスクは小さくなり、反対票が投じやすくなる。

 

 ここでは、プロ投資家だって、自社利益追求の観点から反対票を投じにくいことを紹介しつつ、他のプロ投資家が反対票を入れ始めると、ピア効果(同僚効果)によって、追随するように反対票をいれることを報告しています。ここから得られるビジネスへの示唆としては、経営者としては、一社のプロ投資家が反対票入れだけだから、放置でいいやと楽観視しすぎるのは危険ということ。投資家視点では反対票が入れられ始めた企業は、数年後に企業vs株主で何か大きなことが起こるかも!?と想定するのが大事なのかもしれません。

2021年の株主総会期間も、何か起こるかも!?

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崔真淑(さいますみ)

*画像は、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)より抜粋。無駄転載はお控えくださいね♪



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