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「名画を読む絵本」に学んだ「編集」の重要性

最近、一目惚れして買ってしまった絵本がある。今回は、その絵本についてのことや、この絵本のつくり方から学べることについてシェアしたい。


東山魁夷さんの名作が紡がれた没入感ある絵本

今回紹介する『白い馬』(2012年、講談社)という絵本は、日本画家・版画家の東山魁夷(ひがしやま・かいい、1908-1999年)さんのこれまでの作品の中から、物語を紡ぐように作品を選び、一冊の絵本としている作品だ。代表作の一つである『緑響く』(1982年、長野県立美術館・東山魁夷館蔵)が表紙を飾り、その幻想的な美しさに魅了されて吸い込まれるように絵本を手に取ってしまっていた。

『白い馬』絵:東山魁夷  文・構成:松本猛  監:東山すみ(講談社、2012年)

絵本のコンセプトは「名画を読む絵本」。それぞれのページで東山魁夷さんの素晴らしい作品の数々が使われているから、大人が読んでも神秘的な世界の中に入り込んでしまうような没入感や作品集とはまた違った味わい深さがある。

思わず嘆息してしまうほど素晴らしい読後感だった。

同時に、こうした絵本の作り方をするにはセレクトする人のセンスが問われると思った。文と構成を担当した松本猛さんや編集者さんは、きっと多大な労力を費やしたことだろうと思いを馳せてしまった。なにせ東山魁夷さんの作品の水準はきわめて高いだけでなく、一作一作に研ぎ澄まされた芸術性と深い精神性を持っているから。

東山魁夷さんは、言わずと知れた戦後の日本画壇をリードした画家の一人。その偉大な功績から、日本経済新聞社では2002年から「東山魁夷記念 日経日本画大賞」を創設し、2024年4月には第9回目の入選作品が発表されている。

東山魁夷さんは、生前に「描くことは『祈り』だ」と語っていたという。彼が画家として大成するまでの道のりには、度重なる親族の死や太平洋戦争末期の徴兵など、数々の困難があった。そうした悲しみや苦しみを経てなお筆をとり、心を鎮めるような自然美を表現し続けた。かつてアーティストとしての活動に自ら終止符を打ってしまったぼくは、彼の絵画へと向き合い続けた真摯な姿勢を心から尊敬している。

本作の文と構成を担当した絵本・美術評論家であり作家の松本猛さんは、そのような東山魁夷さんの作品が持つ静謐で神秘的な世界観を文で編み、構成することで素晴しいストーリーを創造している。そして、その世界観を一冊の絵本へと仕立て上げた編集者さんの尽力も非常に大きいだろう。

改めて、構成の大切さ、そして編集という仕事に求められる技術の奥深さやクリエイティビティの重要性を感じ入る一冊だった。

自社を「編集」していくことの重要性

最近、オシロ社に企画・編集顧問として参画してくれた編集者のカッキー(柿内芳文)さんに、定期的な打ち合わせの機会をいただいている。カッキーさんはオシロ社が創業前、オシロ社の共同創業者でもあるサディ(佐渡島庸平)が代表を務めるコルクのオフィスに間借りさせてもらった頃にちょうどコルクに所属されていたので、当時は同じフロアで働く仲間だった。

こうしたご縁をいただき、カッキーさんのお力を借りながら、現代におけるコミュニティのあり方やオシロ社が提供するサービスの伝え方について、どのようなことばが適切なのか?わかりやすいのかを目下考えているところだ。

編集は「編んで集める」。つまり、所々に散らばっている要素を集め、構成することで一つのコンテンツを生み出していく営みを指す。時には「コミュニティ」ということばのように大きな概念を分解し、再構成することでこれまでになかったものの見方や、まったく新しい価値観を生み出す力をも持っている。

そういった点では、自社を編集する能力や素養を身につけることは非常に重要だ。ぼくたちのミッション「日本を芸術文化大国にする」を実現するためには、これまでの事業運営で得られた知見や自社が持つ強みを分解し、潜在化していた価値を見出し伝えていくことが不可欠だと思っているからだ。

だからこそ、ぼくは「事業を編集する」という考え方は非常に重要だと感じているし、編集はクリエイティブの一要素だと思っている。今、オシロ社には書籍や映像、広告などで編集経験を持つメンバーも増えてきているし、コミュニティを創り、醸成につとめる過程は編集の仕事に通じるものも多い。

編集経験者に限らず、自分の「編集」能力を存分に発揮したいと思っている人、新しいフィールドでチャレンジしてみたい人にとって、「コミュニティ」という領域は大きな可能性しかない。ぼくはぜひそういう人たちとともに働きたい。

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