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人は『人は変わるもの』と思えれば、変化できる

仕事の場で、何度もこんな発言を耳にしてきました。

部下に、同じことを何度注意しても全く成長が見られない。人は変わらないものなんだろう。だから、できない人を採用したら、そこで終わりなんだ。

任天堂の元代表の岩田さんは、反対に、こんな言葉を遺されています。

「ボスがちゃんと自分のことをわかってくれるくれる会社」や「ボスが自分のしあわせをちゃんと考えてくれる会社」であってほしいと思ったんですね。そして、わたしは「人は全員違う。そしてどんどん変わる」と思っています。もちろん、変わらない人もたくさんいます。でも、人が変わっていくんだということを理解しないリーダーの下では、わたしは働きたくないと思ったんです。

誰かを評価する際に、相手は変わるものであるか、そうでないかの前提によって、方針は大きく異なってくるはずです。

評価される項目は多岐にわたりますが、組織で働くとなるとチームワークは欠かせない要素です。そして、協働し、助け合うために必要な、相手への配慮や優しさは、たいていは共感に端を発しています。

この共感する力は、はたして変化するものなのでしょうか。

スタンフォード大学のジャミール・ザキ准教授の書籍『スタンフォード大学の共感の授業』に興味深い実験結果が書かれていました。

人に共感できるかどうかの強弱の個人差は、これまでの研究から、

遺伝的に3割程度は決定している
・愛情を受けて育ったか、どのような経験をしたかなど環境依存が大きい
・ただし、本人の意識や努力で伸ばすことが可能である

ということがわかってきたそうです。

これまでの実験結果の中で、私が最も興味深いと思ったのは、人の意識による共感力の変化です。

数百人の学生に対して、以下のどちらが正しいかを質問しました。

・思いやり深いかどうかは、自分自身の力で変えられない (もともと固定派)
・思いやり深いかどうかは、自分自身の力で変えられる (もともと移動派)

回答結果から「固定派」と「移動派」に分けて、悲しいが、自分とは異なる人種や立場が異なり共感しづらい事象について考えてもらったところ、「移動派」は最初は共感できなくても、一生懸命に耳を傾け、できるだけ理解しようと努力することがわかりました。

そして、次の実験として、両派の人たちにランダムに以下の内容のどちらかを読んでもらい、意識の転換を試みました。

・思いやり深いかどうかは、自分自身の力で変えられないと確信できる話 (固定派になってもらうための内容)
・思いやり深いかどうかは、自分自身の力で変えられると確信できる話 (移動派になってもらうための内容)

「移動派」に意識が転換した人たちは、その後、より人の話を聞き、自分の時間やお金を削ってまでボランティア活動や寄付を行う行動を増加させる傾向が見られました。

つまり、共感力は、伸ばせると信じるならば、伸びるということです。

これは、現代社会の主流の考えではありません。近代まで、権威を固定化させたい体制側は、知能や性格など、ほとんどのことは、生まれつき決まっていて、その後に変化させられないということを常識化させてきました。

そして皮肉なことに、この人は冷たい人だからと決めつけ、周囲が評価を固定化させると、本人も自分は冷たいと自分自身にレッテルをはり、より冷たくなっていくことになります。

しかし、研究が進んだことで、人は性格でも知能でも変化させていけることがわかってきています。誰でも変われると信じて努力すれば、実際により良く変わることができる、現代は希望の時代だと言えます。

45歳定年説が話題になっていますが、我々は何歳になっても学び、変化し続けられるはずです。


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