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仕事のために休むのか? 休むために働くのか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ 本記事は日経朝刊投稿募集企画「#休んで仕事が捗った経験」への寄稿ですが、大幅に締め切りを過ぎているため採用されることはないでしょう(苦笑)

待ちに待った大型連休、GWのはじまりです。3年ぶりに「宣言」のない連休初日ということで、空港や鉄道はかつてのように混雑しているとのことです。先ほどそろそろ完熟をすぎそうなアボカドを発見したのでワカモレでもつくるかと思いスーパーに足りないものを買いに行ったところ、レジが長蛇の列でした。連休のために買いだめということでしょうか、びっくりしました。(連休なんて関係ないよ!というエッセンシャルワーカーの方、いつも生活を支えていただきありがとうございます!)

資産家、いわゆる超富裕層(金融資産5億円以上)の世帯は約8.7万世帯(出処:野村総合研究所「NRI富裕層アンケート調査」)と言われており、全体の1.6%ほどです。残りの98.4%にとっては働かなくては生活できないわけで、超富裕層であっても実際にはオーナー企業経営者が多いことからやっぱり働いているわけです。

昔は日曜だけが休み、近年になり週休2日が定着してきました。最近では世界的に「週休3日」という試みをする企業が出てきており、日本でも導入を検討している企業が出てきました。

日立製作所は給与を減らさずに週休3日にできる新しい勤務制度を導入する。働き方を柔軟に選択できるようにして多様な人材を取り込み、従業員の意欲などを高めて生産性を引き上げる。パナソニックホールディングス(HD)やNECも週休3日を検討する。成果さえ上がれば働く日数や時間にこだわらない経営が日本で広がる可能性がある。

日立は本体の1万5000人を対象に、月間の所定労働時間を勤務日ごとに柔軟に割り振ることができる新制度を2022年度中に導入する。1日3.75時間としていた勤務時間の下限をなくし、働く日を従業員が選びやすくする。

例えば、月~木曜日の労働時間を9~10時間と所定の7時間45分より長くし金曜日を休めば週休3日にできる。月前半の労働時間を長くして月末に大型連休をとることもできる。子供の学校行事などの合間に1時間だけ働くことも可能だ。

日立の例では週の労働時間そのものが減っているわけではなく、柔軟にシフトすることが可能になったということです。その濃淡の結果として週休3日にもできるのですね。画一的な勤務体系からより柔軟なものに変革して、従業員の意欲を高めようという試みです。

いうなれば「休みのために(他の日に多く)働く」ということです。これまでとれなかったような休暇を実現するために働く。これは働く意欲を保つという意味では非常に納得感がある制度ではないでしょうか。

一方で海外の例を見てみると、ちょっと視点が違うかもしれないかと感じます。

雇用者にとって燃え尽き症候群は従業員が疲弊し、モチベーションが下がることで生産性が低下し、辞める可能性が上がることを意味する。実際、過去20年以上の間で、最も多くの米国人が仕事を辞めている。マイクロソフトの最近の調査によると、41%の社員が1年以内に現在の会社を辞めようと考えているそうだ。

こうした状況を受けて、雇用主は同症候群への対策を最優先課題とし、従業員に休息とリフレッシュのための有給休暇を与えることで対応している。

こちらはいうなれば「仕事のために(ちょっと多く)休む」ということです。より生産的で良い仕事をするために、休暇をうまく利用する。企業にとっては退職リスクが減少しますし、従業員にとってはリフレッシュして良い仕事ができれば昇進やボーナスなどで報われる可能性が高まるのでWin-Winになるという仕組みです。

このように比較してみると、結局のところベースとなる働き方が違いが休暇制度にも現れているのだろうと思います。つまり、流動性の高いジョブ型か、流動性の低い日本型かということです。日本型の場合は生産性を上げて会社の業績があがっても、即座に個人の報酬に反映されることは少ない傾向にあります。であれば、多く休むために頑張って働くことは事実上の昇給として体感することでしょう。

私自身も休むことで仕事が捗ったという経験はたくさんあります。最近は完全に米国ジョブ型の働き方をしているため、良い仕事のためにうまく休むという感覚が強い気がします。

「週休3日」という言葉だけでは表現できないコンテキストが裏には隠れています。特に働き方については歴史的背景や文化が強く影響を及ぼすため、海外の事例をそのまま持ってきてもうまく適用することはできないでしょう。「そもそもなんの目的で、どういう未来にしたいのか」という経営者のビジョンが、より一層問われていると思います。


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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI #休んで仕事が捗った経験

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