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日本一自殺が多いのは、結婚経験のある男たちだという事実【データ08】

政府が発表した2017年版の「自殺対策白書」によれば、2016年の自殺者数は前年より8.9%減の2万1897人。7年連続の減少です。

1997年に銀行や大手証券会社が破綻した影響などがあり、自殺者は1998年から急激に増加して3万人を超えました。以降、14年連続で3万人を超えていましたが、徐々に一服、2万2000人を下回ったのは22年ぶりのことになります。それでも、いまだに毎日60人が自殺している状況は深刻ですし、日本人男性を死に追いやっている最大の原因が自殺である状況は変わっていません。

そして、今やもっとも自殺をしているのが独身男性であるという事実があります。

自殺者数の長期的な推移を見ると、男性の自殺者のうち、2003年を契機に独身者の自殺者数が有配偶自殺者を抜きました。

© 荒川和久 無断転載禁止

「ほら、やっぱり、結婚もせずに未婚のままの状態はよくないのだ」

そう考えてはいけません。独身というのは、未婚だけではなく、死別や離別も含んだ数字です。2015年の人口動態統計から配偶関係別の自殺死亡率(配偶関係別人口10万人当たり)を見てみると、独身の中でも「離別男性の自殺率が圧倒的に高い」ことがわかります。

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既婚男性が妻と死別や離別をすると生きていけないという状況が如実に表れています。それでなくても、離婚率は上昇しており、今や3組に1組は離婚します。結婚20年以上の熟年離婚も激増しています。

既婚男性の皆さん、想像してみてください。

もし、自分より先に妻に先立たれてしまったら? 

もし、長年連れ添った妻のほうからいきなり離婚を突き付けられてしまったとしたら? 

あなたはその先、一人で生きていける自信がありますか? 

突然一人になったとしたら、果たして生きていけますか?

第一生命経済研究所の有配偶高齢者60~79歳の男女を対象とした調査レポート(2015年)でも、病気や寝たきりになったときに夫の6割が妻を「頼りになる」と回答しているのに対し、妻はたったの2割。逆に「頼りにならない」としている率が42%に達します。

また、「生まれ変わっても現在の配偶者とまた結婚したいか」という問いに対しても、夫の6割は「イエス」と答えているのに対し、妻は3割にも満たない。ここにも、配偶者に一方通行で依存する夫の傾向が見てとれます。なんとも切ない話ではありませんか。

結婚したからといって、いつまでもその状態が続くなんてことはあり得ません。さだまさしの「関白宣言」のように、妻に看取ってもらえるとは限らないのです。たとえ子がいても、同居するとは限りません。結婚して子どもを産み育て、家族という共同体を作れば安心・安定だった時代は、残念ながら過ぎ去りました。言うまでもなく、結婚や家族それ自体を否定するわけではありません。が、ソロに戻るリスクは全員にあるのです。

ただでさえ、男性は定年退職などで長年勤め上げた職場を離れると「人とのつながり」を失いがちです。そんな中、妻だけに依存してきた夫が、その後、万が一妻と死別や離別してしまうと、完全なる社会からの孤立に陥ります。女性の場合は普段から「人とのつながり」をキープしているためそんな羽目にはなりません。

既婚のおじさんたちへ。会社以外に、家族以外に、「人とのつながり」はありますか?

自殺者数が一番多いのは独身者という話を冒頭でしましたが、裏返すと、もっとも自殺が多いのは、離別・死別・有配偶といった「結婚経験のある男たち」なんです。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。