オープンに議論が出来る場所としてのTED~FacebookとBrexit
今年もカナダのバンクーバーで開催されたTED(4/15-4/19)。最近は以前ほど頻繁に見る機会は減ってしまったものの、今朝見た動画は共有する価値ある一本、と思えたので備忘録的に記しておきたいと思います。
TED2019の初日のメインステージを飾ったのはFacebookとケンブリッジアナリティカによるデータ不正疑惑を最初に暴露した英オブザーバー紙(英ガーディアンの姉妹紙)のジャーナリスト、Carole Cadwalladr (キャロル・キャッドウォラダー)氏。TED開催直後にも関わらず既に動画が公開されていて、再生回数は1,123,373 回(2019/4/23時点)と既に多くの人に視聴されていることが分かります。
[2019/5/7追記:翻訳ボランティアのおかげで日本語での視聴が可能になったそうです。]
15分のプレゼンテーションのタイトルは「ブレグジットにおけるフェイスブックの果たした役割、そして民主主義への脅威」です。
本日公開されていたガーディアン紙の記事によるとフェイスブック、そしてグーグルはTEDのスポンサーとのこと。それにも関わらずこうしたテーマをストレートに議論する点にTEDの中立性があり、TEDのキュレーターであるクリス・アンダーセン氏の果たしている役割を評価する声もツイッター上で数多く見られます。
プレゼンテーションの内容に関しては是非動画をご覧頂きたいのですが、いかにブレグジットの離脱派の勢いを増すために感情的で誘導的なターゲティング広告が使用されたか、またその過程でフェイスブックが皮肉にもこうした取組を後押しするような役割を果たしてしまったのか等、痛烈な批判が展開されています。
ブレグジット、そして2016年の米国大統領選挙に関与したケンブリッジアナリティカ。同社の元社員、クリストファー・ワイリーの証言を初めて明かしたスクープ記事が公開された昨年の春には、ケンブリッジアナリティカの資金源である億万長者、そしてフェイスブックからも、「公開したら訴える」との脅しがあったことがプレゼンテーションの中で明かされています。結果記事は公開され、現在に至るフェイスブックを始めとするテックプラットフォームに対する批判、世界的な議論へとつながっています。
TEDの公式の動画には含まれていませんがプレゼンテーションの直後に会場で沸き起こった歓声、そしてクリス・アンダーセンが壇上でマーク・ザッカーバーグ氏、シェリル・サンドバーグ氏への呼びかけ、プレゼンテーションに対する意見や考えを聞かせてほしいと訴え、週の後半のTEDへの公開の場での招待を行う場面もとても印象的です。
TEDのステージに立ち、声を震え上がらせながら問うべき質問を勇気を持って訴えるCarole Cadwalladr 氏の姿はとても勇気が感じられるものでした。
フェイスブックは今日付けで元国務省の法律アドバイザーををゼネラル・カウンセル(法務部門責任者)に、元ビル・ゲイツ氏のアドバイザーをPR幹部に採用したことを発表。今月の30日と5月1日にはフェイスブックの開発者向けカンファレンス、F8が開催予定です。
今後どのような議論が行われていくのか、注目していきたいと思います。
こうしたテーマに強く興味を持つきっかけとして、TEDという言論空間のもたらす価値は今も色あせないのではないか、と改めて思いを強くしました。
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